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オートバックスセブン×対話型AIロボオープンイノベーションで進むIoT新事業の裏側

AIロボにひとめぼれ オートバックスセブン発IoTプラットフォーム構想の本気度

2019年10月15日 07時00分更新

大企業の受託開発にならないための関係の築き方

 オープンイノベーションの取り組みは、実証実験で終わってしまうことも多く、海外を含めて成功率は高くはない。オートバックスセブンとハタプロの場合も、連携の模索から実際にサービスをローンチするまでには、3年がかかっている。企業文化の違い、商品化への壁といった課題をどのようにクリアしていったのか。伊澤氏と八塚氏に伺った。

伊澤氏(以下、敬称略):もともとは、日本IBM主催のアクセラレーションプログラムに参加して、協業先企業として紹介されたのがオートバックスセブンさんでした。

八塚氏(以下、敬称略):弊社ではIoTプラットフォームの計画を進めようとしており、それを実現するための技術やプロダクトをもつパートナーを探していました。そこで出会ったのが、ハタプロさんのZUKKUです。当時はこのモデルではありませんでしたが、ひとめぼれですね。

北島:ひとめぼれの理由はどこにあったのでしょうか? オートバックスセブンとして展開しようとしているIoTプラットフォームの計画を拝見する限り、ハタプロとの連携もあくまで一部と感じられます。

八塚:あまり世の中で見たことのなかった鳥をモチーフとしたロボットで、親しみやすいデザインだったことですね。その当時から会話での見守りサービスを構想していたのですが、昔からインコやオウムなど、人と会話する対象として鳥がぴったりとそのイメージに当てはまったこともあります。

 そもそもハタプロさまとの連携は単発で終わるとは考えておりませんでした。元々高いIoT関連技術をお持ちの会社ですし、なにしろそのスピード感、対応力には万全の信頼を持っています。今回のZUKKUの開発はひとつの事例となりましたが、今後も強いパートナーシップで新たな価値やサービスをお客様にお届けしていきたい、と考えております。

ZUKKU

北島:当初から、事業化まで3年もかかるという予測はしていましたか?

伊澤:当時はZUKKUもまだ企画構想段階だったこともあり、あまり時間は気にしておらず、時間がかかってもやりたいことはやるべきだと思っていました。

八塚:出会ってからは3年ですが、2年間は関係の構築に費やし、実際にプロジェクトを立ち上げたのは1年前なのです。

北島:プロジェクトとしては2社だけ完結するわけでなく、ほかの企業とも共同開発していらっしゃいますね。

八塚:プロダクトはハタプロさん、AIの部分はNTTドコモさん、アプリはNI+Cさんと、各分野を得意とする企業4社との協業です。

伊澤:ハタプロとオートバックスセブンさんとでは3年前から構想イメージが出来上がっていたので、プロジェクトに2社が参加してもらうことになってからは、NTTドコモさんや日本情報通信株式会社(NI+C)さんと個別に打ち合わせする機会も多かったです。通常、4社でオープンイノベーションをすると、大企業からの受託開発のようになりがちですが、そうならないように、プロジェクトチームとしてやっていくことを意識しました。

八塚:ハタプロさんは、すでに法人向けにAIを開発されているノウハウをお持ちです。そのあたりをNTTドコモさんへ伝えてもらい、開発の工程の監修に入ってもらいました。

新規事業創出に必要な人・モノ・金をどう集めるのか

 では、実際にプロジェクト開始までの2年間には何があったのか。オートバックスセブンがIoTプラットフォームの事業化に至るには、社内に大きなハードルがあった。

八塚:弊社はカー用品での大きな成功体験があるため、新しい事業に足を踏み出すには勇気がいります。成功している事業をしっかり守りながら維持していくべきだ、という考えがあるなか、少しずつ仲間を増やしていきました。2年前に単独の組織をつくり、独立した予算を確立してプロジェクトが動き始めた。組織、予算の次は人です。社外から人を呼び社内も変えてプロセスを回したことで、ようやくこの1年で事業化へつながったと考えています。

 人・モノ・金は、新しい事業を生み出すには必須条件、と八塚氏。オープンイノベーションを進めている企業にとっては、必ずといっていいほど通らなくてはならない話だ。とはいえ、大手企業にとって出資自体のハードルは高くない。むしろ、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)によるスタートアップへの投資活動も近年活発化を見せている。

北島:社内を前向きに説得するため、どのように動かれたのでしょうか。

八塚:役員の方々にアプローチして、賛同を得ることから始めました。投資するのは簡単だが、そこからどのように利益を上げていくかが経営層にとって最大の興味です。ところが新規事業はなかなかすぐに利益があがるものではないので、それを理解したうえで投資をして、中長期的な計画で回収するモデルを提案していく必要があります。長いスパンで検討してもらえるかどうかがポイントですね。

北島:新規事業において、すぐに利益を求めてしまう風潮もイノベーションの阻害として聞きます。ここは地味なお話に聞こえますが、重要ですね。伊澤さんはスタートアップ側の立場として、大企業と組む際に気を使っていることはありますか?

伊澤:弊社と同じような技術をもつ競合はほかにもありますが、他社に比べて多くの大手企業と協業できているのは、大企業の強みや担当者の意向をくみ取って提案しているからだと思います。開発力だけでなく、企画力や行動力も大事です。

 今回のオートバックスセブンとの事業では、たとえばハタプロは先回りして自治体へのアプローチを実施して、紹介先をあらかじめ開拓しているという。プロダクトの開発に留まらないこうした動き方がオープンイノベーションで、存在感を保ち続ける秘訣だろう。

 最後に、今回の取り組みから得られた学び、そしてオープンイノベーションにおける課題を語ってもらった。

八塚:当社は、プロジェクトを開始するまでには時間がかかりましたが、決定してから投資、開発、販売までの動きは非常に速かった。これからのオープンイノベーションには、スピード感がますます重要になってくる。大企業側は、決定までの時間をいかに短縮し、決定してから立ち上げまでの時間をさらに短くすることが課題です。

伊澤:新規事業をするときに数年先を見据えて計画を立てても、その通りになることなんてまずない。3年前にオートバックスセブンさんへ提案していたZUKKUは、車載ロボットでしたから、そのまま続けていたらどうなっていたかわからない。3年たつと事業環境も社会の風潮も変わってくる。変わるものもあるなかで、変わらない本質的な思いを共有して続けていく関係をつくっていくことが大事ですね。

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