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IoT H/W BIZ DAY 2019セッションレポート

規制緩和で実現なるか 日本発都市型スマートシティの現在

2019年10月04日 07時00分更新

豊洲スマートシティではいろいろな成功体験を作って他展開したい

 豊洲スマートシティ構想の説明に続き、アスキースタートアップ北島とのトークセッションへ。スマートシティに関する世界での現状や、推進していく上での課題について話し合われた。

アスキースタートアップ北島と溝口氏によるトークセッション

北島:ご講演ありがとうございました。最初にお聞きしたいのですが、豊洲のスマートシティ構想は何年くらいで実現されるものなのでしょうか?

溝口氏(以下、敬称略):豊洲でのまちづくり、エリアマネジメントの取り組みは、街区ごとに民間企業が中心に行なっていて、豊洲の街全体で取り組むことはこれまでありませんでした。たとえばサイネージ1つとっても施設ごとにバラバラですし、災害などの有事の際に情報を表示するといったこともできませんでした。しかしこうしたことをすべ行政や町会と連携してやろうと考えたら3年では済みません。まずは、できることから小さく始めて、実証してみようと考えています。それが1年になるのか3年になるのか、いつまでというのはまだわかりません。

 たとえば防災でいえば、行政がやらないといけない防災と、民間の防災の違いもあり、行政側の整理も時間がかかるだろうと思っています。

北島:こうしたプロジェクトは持続可能性も重要ですよね。

溝口:はい。既存の街づくりでも、みなさんで寄付をしたり、街の清掃をしたりということはいろいろ行なわれています。ですが、それらは企業のボランティアで成り立っていて、持続可能性が試せません。そもそも歩道などの公共空間にデジタルサイネージを1つ設置するだけでも許可が必要ですし、広告にも規制があって収益事業はままならない。しかし、スマートシティの先行モデル事業に指定していただいたことで、まちづくりに資する事業の規制緩和、まちづくりの運営に必要な収益を確保する仕組み作りを行政と共に創り上げたいですね。

北島:海外でもスマートシティの話を聞きますが、実際に進んでいる事例などはあるんでしょうか。

溝口:実は世界でも民間と行政がうまく連携して進めているまちづくりはそんなに数多くないのではないかと思っています。トロントも立派な構想あるけれど、社会実装はまだまだこれからという印象です。スマートシティの実現はまだまだこれから。世界中で模索が続いているところだと思います。

世界でも模索が続いていて、成功事例と言えるものはないという溝口氏

北島:スマートシティ実現に向けて、都市開発面ににおけるハードルはありますか?

溝口:ハードルはたくさんあります。スマートシティの実現にむけては行政のリーダーシップ、官民連携が重要であると思います。たとえばBRTを導入して軌道系交通に近い輸送量を確保するには道路や信号機などのインフラ整備が欠かせません。

 南米などでBRTが主要な輸送手段になっているところは、BRTがその機能は最大に発揮出来るように道路やバス専用信号、バス専用レーンなどのインフラが整備されています。

北島:制度の壁というのも出てくるわけですね。

溝口:新しいまちづくりに重要な要素である移動、交通を考えるには車両を作る民間企業だけでは上手くいきません。行政を含めての規制緩和、産官学がきちんと連動しないと実現していきません。

 また、自動運転社会に備えて、さまざまな実証実験も行っていきたいと考えています。豊洲の先行プロジェクトとして実験を重ねて、いち早く社会実装できたらいいなと考えています。

北島:現在進められている豊洲スマートシティ構想に、テクノロジーを持つスタートアップなどが途中から参加するのはOKなのでしょうか?

溝口:それはもちろんOKです。スマートシティ構想自体は始まっていますので、うちの技術を入れたらこんなことができるということであればぜひ提案していただきたいです。

北島:具体的にこのようなことができたらいいというようなイメージはありますか?

溝口:たとえばヘルスケアでは、豊洲の公園でランナー向けの新しいプログラムを組んだり、走り方の解析をして、それを情報銀行に預けられるようにできたらいいですね。街のイベントとして盛り上げながらランニングデータや健康に関わるデータを活用して余病とか未病に関するサービスが生まれるなど。

 あくまでも、個人では管理できない医療情報や健康情報を一元で管理できるインフラとしての情報銀行を想定しています。使いたい人、便利だと考える人が利用出来るインフラの整備がされるといいなと思います。街に住む、働く、訪れる人(企業)のQOL向上がスマートシティの目標です。もちろんデータの利活用は個人の意志によることが重要であると思います。

北島:スマートシティならではのビジネス価値が生まれるといいですね。

溝口:そういうものが生まれてほしいですね。何を持ってスマートシティというかということもありますが、普段はなかなか組めない企業がマッチングされたり、業界を超えて新しいサービスに一緒に取り組めたり、そういうイノベーションが生まれる街になるといいです。これだけの業種の企業が街作りという1つの目標に向かって、同じ目線で動くというのはそもそも経験がないため、豊洲でいろいろな成功体験を作ってほかの街に展開していきたいと思います。

豊洲スマートシティから江東区、そして国内全域、世界へ

北島:本日はありがとうございました。

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