分離のよい音質で聴くハイレゾCDのすごさ
視聴に使うのは、MQA再生に対応したハイレゾ対応スピーカー、クリプトン「KS-9Multi+」です。実売価格は30万円前後。
2017年発売の「KS-9Multi」の後継モデルで、192kHz/24bit PCMや、DSDの再生に対応したUSB入力を搭載。光デジタルやHDMI経由で入力されたMQA-CDの再生にも対応しており、ブルーレイプレーヤーなどと接続して再生できます。
まずはオフコースの代表作の一つ、「We Are」(1980年)を聴いてみましょう。アメリカでミックスダウンをしたアルバムで、ミキサーはスティーリー・ダンやTOTO、ボズ・スキャッグスなどを手がけたビル・シュネー。以降、彼はオフコースのアルバムに関わっていくことになります。
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WE ARE(UHQ-CD/MQA) |
一般的には「Yes-No」が入っていることでおなじみかと思うのですが、アルバム1枚を通して、音の分離がしっかり分かれてとでもいいましょうか……歌謡曲のように華美でベタッとしているわけではないアレンジにこそ、オフコースの音作りの妙味があります。ハイレゾCDによって、その特徴はより顕著に理解できるのではないでしょうか。
具体的なところでいえば、冒頭の「時に愛は」とギターのキラキラした音色、ドラムでいえばハイハットの残響、スネアの音の立ち上がりが、はっきり聴き分けられる箇所だと感じます。当時の洋楽(この言葉もすっかり使われなくなりました)とのシンクロ具合でいえば、最後の「きかせて」のイントロなどは、まさにAORの世界。この曲も、イントロのドラムとベースの歯切れのよさなど、ハイレゾCDでいっそう鮮明になった印象を受けました。
もちろん、小田和正の高く澄んだボーカルも聴きどころ。KS-9Multi+で聴くと、中央にしっかり定位して、他の楽器とも混ざらずダイレクトに聴こえてきます。楽器の音色も、にじみがないというか、澄んだサウンドなので、音像の間の関係も聴き取りやすい。キレのよいリズムの中でハイトーンボイスが聴き取りやすいのは、華美なアレンジをあえて取らない、オフコースのようなバンドを楽しむにはうれしいところ。
おなじCDプレーヤーにアナログ入力で接続して聴いてみると、やはり光デジタル経由で入力されたMQA-CDのほうが音がつまらず、のびやかに聴こえます。とくに中域の分離感に差が感じられます。小田和正のボーカルが、バックで鳴っている楽器に埋もれない印象を受けました。音の一つ一つがクッキリと聴こえやすい。
ハイレゾCDの高音質をオフコースで堪能するには、「FAIRWAY」(1978年)などもオススメです。「いつもふたり」のシャッフルの小気味よいリズムでバンジョーの音やコーラスが重なるところは、何度も聴いたことがある人ほど、ハイレゾCDで体験してほしい。「美しい思い出に」は鈴木康博の手によるものですが、若々しさと大人びた感覚が同居している名曲です。サビでのギターのカッティングなども、ハイレゾCDで聴きたいポイント。
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FAIRWAY(UHQ-CD/MQA) |
一通り聴いてみると、アレンジがシンプルだからこそ、高音質になったことで曲の構造がよくわかるな、と感じました。音質とはちょっと異なる話ですが、オフコースは歌詞の内容もシンプルなので、いま聴いても古びていない。「音はいいけど、歌詞がね……」というような気分になりにくいので、若い層にも刺さる音楽だなあと、あらためて実感した次第です。
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