その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第40回はレノボジャパン。PCメーカーとして働き方にこだわる同社のテレワークへの思いとこだわりを、レノボジャパン 執行役員 人事本部長 上南順生氏に聞いた。
東京五輪期間中は仕事もスポーツも楽しめるように
PCメーカーのレノボジャパンはテレワークを企業成長のための手段として位置づけている。2005年の会社設立時から上限週1回ながらテレワークを導入し、東日本大震災や秋葉原UDX移転などを契機にテレワークを組織に浸透させていった。2015年には「回数制限のないテレワーク」をパイロットから始め、全社員によるテレワークデイズも毎年のように実施している。「テレワークデイズももう4回なので、もう心配の声が出ないです。最初はルールをどう周知するのとか、ルールが守れないときはどうするのといった質問もありましたが、もうマネジメント側に自信がついたみたいです」と上南氏は語る。
現在、同社のテレワークは社員・契約社員のほか、指揮命令系統の異なる派遣社員も派遣元の協力のもと、基本は同条件で利用できる。取得回数に制限はなく、時間単位での申請も可能。運用ルールは「前日までにマネージャーの承認を得ること」「業務中はPC常時接続しておき、Teams/Skypeをアクティブしておくこと」くらいだ。これにより、在宅、外出先、オフィスなど場所と時間を問わずに柔軟に働ける。
「私も通勤に1時間以上かかるのですが、往復3時間が別のことに使えるというのは非常に快適。週に1回やるだけで、疲れが全然違います。30年近く、満員電車に揺られて通勤してきましたけど、テレワークがあればいよいよ解決できるのではないかという手応えを感じてます」(上南氏)
現在、月1回以上のテレワークの利用率は現在66%。3割の人が使っていないということで、意外と利用率が低いような気もするが、近くに住んでいる人は会社に来るし、会社の方が仕事環境として優れているという人も多いという。その点、在宅や外出先はあくまで選択肢の1つだという。もちろん、マネージャーの理解が進まず利用できない人、自宅でテレワークできない人もいるし、社内からしかアクセスできないインフラもある。そのため、定期的な社内調査やテレワークデイの活用による習慣化、コワーキングスペースの活用、アセスメントの仕様変更などで対応していくという。
2020年の東京五輪期間中は、レノボ関連4社2000人規模で二週間連続の全社テレワークを進め、スポーツ応援特別休暇2日を付与するという。「サッカーのワールドカップのときに休日にしたら、すごく好評だったので自信がありました。今回は事前アナウンスしなかったのですが、発表を聞いた社員は非常にポジティブに受け止めてくれています」と上南氏は語る。2021年以降も、仕事もスポーツも家族で楽しむことができる全社テレワークとして、夏休みファミリーワークデイとして定着させることも検討している。
ジョイントベンチャーだからこそできたチャレンジと文化作り
もちろん、ここまでは時間もかかった。NECとレノボのジョイントベンチャーとしてスタートしたレノボジャパンだが、テレワークに先になじんだのは若いレノボ側のメンバーだった。パイロット開始時、上南氏含め、平均年齢高めなNECのメンバーは必ずしも前向きではなかったという。上南氏は、「大きな会社だと、仕事しなくなる人が出るのではとか、インフラが壊れたらどうするのか、悪い想定や不満の声をつぶさないと先に進めません。だから、柔軟性を失いがち」と語る。
たとえば、「部下が見えなくて不安」という声がある。しかし、果たして今の日本の会社は、同じシマにいるからといって、社員同士がきちんとコミュニケーションしているだろうか? あうんの呼吸を妄信してやりとりをさぼったり、会議に出席しても話さなかったりするのは、顔が見えるから安心しているだけかもしれない。「日本の会社って、社内でのコミュニケーション、むしろされてないのではと思います。でも、テレワークの場合、見えないからこそ意識してコミュニケーションしないと、本当に仕事が進みません」と上南氏は語る。
その点、レノボジャパンはテレワークの利用普及と同時に、社内コミュニケーション向上も進めている。最近では「フォーサーティフライデイ」という16時30分退社の金曜日を設けている。早めに帰宅して家族と過ごすのもよし、カフェテリアゾーンの交流会や勉強会に参加してもよし。「社長直下のイベント企画チームがいます。今日は横浜の開発チームが本社に来ていて、製品の設計思想を披露したり、社内交流会をやりました」(上南氏)。
ジョイントベンチャーとして生まれたこと自体が、こうした新しい文化を生み出さなければという機運になったという。「ネガティブな意見ばかりを想定していたら、新しいことはできないので、とにかくやってみようという気持ちに私自身もなりました」(上南氏)という。キーワードはジョイントベンチャーならではの「柔軟性」。「試してみよう」「失敗したら変えればいい」といった機運がレノボジャパンの文化として根付いた。
なにより重要なのは、こうした働き方改革、コミュニケーション促進、ダイバシティ施策によって、きちんと業績が向上しているということ。2018年のレノボ・ジャパンの出荷台数(IDC調べ)は前年比35%増と絶好調で、従業員満足度調査も昨年から28%増となっている。「単に規模が大きく、株価が高ければ会社の価値が高いという時代ではなくなっています。そこで働く従業員の満足度やダイバシティは会社の業績にも直結するはずです」(上南氏)とのことで、トップの強い意思として「どこよりも働きやすい会社を目指す」が経営目標として掲げられている。「レノボはグローバル企業なので、オフィスに依存した働き方をしていないんです。社長のデビット(デビット・ベネット)も、テレワークなんてできて当たり前と考えています」と上南氏は笑う。
会社概要
レノボは、Fortune Global 500にランクインする売上高510億米ドルのグローバル企業であり、スマートデバイス、インフラシステムなどにより最高のユーザーエクスペリエンスを提供し、Intelligent Transformationを実現させるビジョンを持ちます。レノボは非常に広範なコネクテッドデバイス製品を製造する企業で、スマートフォン(モトローラ)、タブレット、PC(ThinkPad、Yoga、Lenovo Legionなど)ワークステーションおよびAR/VRデバイス、スマートホーム/オフィス製品などを提供しています。
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