ソニーはIFA 2019の会場で個性的なオーディオを出展している。「Signature」シリーズのニアフィールドスピーカー「SA-Z1」、そしてCES以来の出展となる「360 Reality Audio」についても紹介していこう。
破格の7000ユーロで登場予定の
「Signature」シリーズのニアフィールドスピーカー
久しぶりにオーディオのソニーが復活! と呼べるのが「Signature」シリーズのニアフィールドスピーカー「SA-Z1」だ。ハイエンドで展開するSignatureシリーズということで最初に価格を紹介しておくと、欧州価格は7000ユーロ(約83万円)と超弩級。欧州では2020年4月に発売を予定している。
「SA-Z1」は一般的な分類ではアンプを内蔵したアクティブスピーカーで、特にデスクトップのニアフィールドリスニングを想定したものだ。だが、ソニーのSignatureシリーズで作るのだから、当然普通のスピーカーではない。
デジタルアンプとアナログアンプを組み合わせた「D.A.Hybrid AMP」と「Tsuzumi」と呼ばれる対向配置のウーファー2基、メインツィーターとアシストツィーターの3トゥイーターからなる「I-ARRAY」によるシステムを構築。アルミ筐体で作りあげたパワードスピーカーで、ハイエンドやDAPユーザーがターゲットだ。
そして、「点音源 完全制御」の技術だ。スピーカーユニットは同軸ユニットのため最初から波面合成された状態で出力。アンプは全16ch分を搭載し、それらの2つのFPGAで独立制御。左右をつなぐケーブルから音のズレもフィードバック制御し、左右のユニット、前後の位置までを時間軸で完璧に揃えて出力。さらにスピーカーユニットはアルミ(種類としてはすべてアルミだが、位置によって異なるアルミ素材)で、共振制御をする事で空間のブレも排除。これにより点音源 完全制御を達成した。
スピーカーのボックスは、制約がある中で上手く良く聴こえる音にしていたのが、Hi-Fiオーディオの音響設計と呼ぶべきものだった。「SA-Z1」に対して、理論上に解明されている音の出方を、現在の設計製造精度とFPGA制御によって、すべての要素を廃して理論通りに鳴らす、そんなシステムだ。
なお、左ユニットにはダイヤルスイッチでアンプの駆動などのセッティングを変える事で、音の変化を楽しむ機能も搭載。入力端子はUSB-B、ウォークマン入力端子、光デジタル端子を搭載。アナログはXLR、RCA、3.5mmステレオミニ端子と一通り搭載。
実際にIFA 2019の会場で「SA-Z1」サウンドを体験したが、もはや異次元の高音質だった。音場や音像感が良い、という言葉で形容できるものでは既にない。音の一つ一つが完全にセパレーションしていて、しかもテージの真っ只中に自分が立ち、空間の中でどの位置から音が出ているかがわかって、目の前に歌っている人の顔がある、手を伸ばせば届くというレベルだ。音源の音空間を、そのまま自分の周囲に再現と呼ぶのがもっともイメージしやすいだろう。これはもう、体験した事がない音楽リスングの世界だ。
ソニーでオーディオの企画ブランディング部門長を手掛ける黒住吉郎氏は、「オーディオの愉しみ方の新しい形を提案したい。これまではふくよかな音を広い部屋で聴くものだったものを、机の上に置いて1mの距離で聴く。これはヘッドホンと同じような体験なので、それを提案しています。音に対してもここまでの解像度を持ったピュアオーディオスピーカーというのは、これまでにない。新しいものを提案して価値を見出して作っていく」と語った。
同時に「Signatureシリーズはエンジニアがこれをやりたい、というのに対して、場を作るというものでもある」とのことで、今までのオーディオ技術の蓄積あってこそ生まれたプロダクトとも言える。
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