自動運転レベル3の前にレベル2が進化した!
自動運転の進化は、現在のところレベル3の手前で足踏みをしている状態だ。レベル3とは「運転自動化システムが、すべての運転タスクを実行する。実行中であれば、ドライバーは何もしなくてよい。ただし、作動継続が難しくなったときは、ドライバーが交代する」というもので、システムが運転を担当しているときは、ドライバーは何もしなくてよい。監視もしなくてよいのだ。
ところが、このシステムが運転しているときの交通事故に対する責任の所在がはっきりしていない。またジュネーブ条約などで「クルマには運転者が必要」とあるため、ドライバーが監視しないシステム単独での運転は、まだ認められていない。さらに、問題が発生したときのドライバーへの運転タスクのスムーズな移管も難しい。
そうした法制度と技術の二つのハードルが、レベル3の実現化を阻んでいるのが現状である。
そんな状況下で、アメリカの半導体メーカーであるNVIDIAが驚きの提案を発表した。なんと自動運転レベル2+(プラス)という概念を発表したのだ。レベル2以上で、3未満という、コロンブスの卵とでもいうべきものだ。
発表は、2019年1月初旬にラスベガスで開催された「CES 2019」で行なわれた。ここでNVIDIAは世界で初めて商用利用可能な、レベル2+(プラス)の自動運転システムである「NVIDIA DRIVE AutoPilot」を披露。しかも、大手サプライヤーであるコンチネンタルとZFがこれを採用。2020年に量産化するという。
このNVIDIAの技術は、車内外を検知監視するためにAI技術がふんだんに使われているのが特徴だ。これにより、他のクルマの位置の把握や車線区分線の読み取り、歩行者と自転車の検知、異なったタイプの信号とその色の識別、交通標識の認識および複雑なシーンの把握が可能となる。
さらに基本的なACC機能(アダプティブクルーズコントロール)や自動ブレーキだけでなく、分離や合流する車線での走行や車線変更なども、よりスムーズに対応することができるという。さらに室内向けには、ドライバーのモニタリングと警告、よりスマートな案内がAIを使って行なわれるとのこと。
つまり、基本的な部分はクルマの前後方向(アクセル/ブレーキ)と横方向(ステアリング)の2つをシステムが操作するレベル2なのだが、その精度を飛躍的に高めたものとなる。
ちなみに、そうした技術を搭載した車両は4月の上海モーターショーにおいて、ZFから「ZFコパイロット」システムとして発表されている。こちらの発表では量産車への採用は2021年からだという。
そうしたNVIDIAの新世代の技術を使ってはいないものの、BMWもレベル2としては、大きな進化を4月に発表した。「国内モデル初となるハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援システムの導入」だ。これは、「ドライバーが前方を注視している状況下において」のみ、「ハンズ・オフ」で利用できるレベル2の渋滞運転支援システムだ。「ハンズ・オフ」とは、手放しを意味する。
これまでの日本での運転支援システムは、レベル2であろうとも、ステアリングから長時間、ドライバーが手放しすることは認められていなかった。日本での法制度的には、最大で65秒。それ以上、ステアリングから手を放すとシステムがダウンするように規制されていた。それをBMWでは、ドライバーを監視する機能を付加することでクリアしたのだ。
このBMWの新技術は、レベル3未満ではあるが、従来のレベル2を大きく進化させたもの。レベル3の実現まで、まだ少し時間が必要となった現在、レベル2のままで、いかに進化をはたすのか。それが自動車業界の競争になっているといいだろう。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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