2019年6月5日に開催されたkintone hive matsuyama vol.1で2番目に登壇したのが、ときわの山口芳晴氏。「kintoneでチームを結ぶ~働く社員、部署をITでつなぐ環境づくり~」というテーマでNoteからの移行事例を紹介してくれた。
保守切れOSで稼働していたNotesシステムをkintoneへ移行
ときわは徳島県徳島市に本社があり、1956年に商店として創業。現在は結婚式場や宿泊施設などを徳島県に9店舗、高松に2店舗、沖縄に1店舗展開している。従業員は126名で、そのうち女性が85名と7割を占めており、ママ社員も30名が活躍中。そのため、2017年には土日祝日に保育施設が不足するため、事業所内に保育施設を開業したそう。
そんな活動が評価され、同社はさまざまな賞を受賞している。2017年には経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定され、「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」や「男女共同参画立県とくしまづくり」を受賞。2018年には「将来世代応援企業」として表彰されている。
ときわの山口氏は、「時代の変化に先駆けて働き方改革に取り組んでおり、サービス業としては珍しく、10年以上前からコアタイムのない完全フレックス制度も導入しています。昨年から副業制度も導入しまして、働く社員一人一人がさまざまなライフスタイルや価値観を認め合っています」と語る。
山口氏は、徳島県のIT企業に11年間勤め、縁があってときわに入社した。最初に2ヶ月間の研修を受けたのだが、IT管理に関するさまざまな問題に気がつくこととなった。
まずは複数のシステムが利用されているのだが、それぞれが古く、動作しているサーバーも老朽化している点。また、多くの部署が協力しながら作り上げる結婚式が、柔軟なツールの提供ができておらず、うまく連携できないという点。さらに、手書きで書いた紙を近くの部署にFAXしたり、同じようなExcelを多くの部署が管理している状況だったそう。
業務に就いた山口氏の最初のミッションが全部署が管理している顧客管理システムのリプレースだった。それまではNotesを使っていたのだが、なんとバージョンは2002年と古いうえ、動作しているサーバーも保守が切れたWindows Server 2003を使っていた。15年間連続稼働中という、いつ止まってもおかしくないような状態だったそうだ。
「今後、社員同士をつなぐにはクラウド化して、いろいろなシステムと連携しながら、業務の効率化を図っていく必要があります。そんな中、サイボウズさんが主催されていたNotesマイグレーションセミナーに参加して、いろんなシステムを比較検討し、kintoneを採用することになりました」(山口氏)
データのマイグレーションとNotesの操作性の再現という課題
kintoneにリプレースする際の課題はふたつ。ひとつめが5万件の顧客データの移行だが、マイグレーションセミナーに参加したり、サイボウズのパートナー企業にヒアリングすることで問題ないことがわかった。2つめが、サービス業でPCに不慣れな社員が多いので、Notesのシステムの画面や操作性をいかに再現できるのか、という点だった。
システムの切り替えは、新旧両使いの並行期間を設けることもあるのだが、今回はITに慣れていない社員が多く、かえって混乱すると考え、並行期間なしとした。実際のデータ移行は1日でシステムテストも1日。3日目からNotesがなくなり、kintoneのログイン画面に切り替えたそうだ。その際、簡単なマニュアルだけ渡し、運用をスタートした。
「案の定、電話が鳴り止むことはありませんでした(笑)。でも、3日目を過ぎたあたりから、大きなトラブルもなく無事に乗り切ることができました。いかにNotesライクに画面を作って操作できるか、というところに課題を置いて作りましたので、そこがうまくいった理由だと思います」(山口氏)
実際のビフォーアフター画面を表示してくれたが、レイアウトを再現しようとした苦労が垣間見えた。Notesでタブを切り替えて各種情報を入力するアプリは、kintoneアプリでもタブ切り替えで画面を遷移しながら入力できるようになっていた。顧客の来店管理をするアプリでは、左側で施設を選択すると、右側に顧客情報が出るというUIを再現していた。従来のアプリと同じように入力できるという操作性を再現したことで、不慣れな社員でも、すぐに慣れて使えるようになったという。さらに、ログインしたときに表示される、管理スペースにNotesのアイコンを使うという細部にもこだわっていた。
営業履歴を残すアプリもkintoneに移行したが、新たな機能強化も行なった。従来は、顧客情報を調べて確認をする手間があったのだが、kintoneアプリでは次回どんなアクションを起こすのかを期限を設けて通知を飛ばすようにしたのだ。前日の10時に通知が来るようになり、とても役立っているという。
さらに、コメント機能を利用して他部署との情報伝達・共有に活用するようになった。従来は、電話やメールだったので、スタッフの予定によってはすぐに情報を伝達することができなかったが、コメント機能を使うようになってスピーディに伝達できるようになったそうだ。
「コメント機能はチーム力アップにつながる強力なツールです。フレックスタイムのうえ、働く場所が違う社員同士はなかなか顔を会わせる機会がないのですが、伝えたいことをすぐにつなげられるという意味でコメント機能がすごく役に立ってくれています」(山口氏)
ログイン画面にも工夫を凝らしている。顧客管理システムには全員が毎日ログインするので、少しでもモチベーションを上げてもらいたいと考えたのだ。そこで、その年のブランディングイメージが決まると、広告画像をもらってログイン画面に表示しているという。
残したかった「結婚報告書」も、新規事業への対応も、kintoneだからこそ
すんなり稼働しなかったアプリもある。「結婚報告書」というアプリには、結婚式が終わったら担当のプランナーがその感想を書くことになっている。長文になることが多いのだが、なかなかレコードが登録されないという状況だった。そこで山口氏は「アプリをなくしてもいいのではないか」と責任者に言ったところ、「結婚報告書は多くの部署が1つの結婚式を作ってきて、最後の報告をプランナーがしてくれるんだからできたらやめたくない」と言われたそう。そこで、山口氏はその思いを叶えるために3つの工夫をした。
まず社員がログインしたら、ポータルスペースに結婚報告書が目に付くようにした。これだけで露出が格段にアップすることになる。次に、結婚式の臨場感が伝わるように、写真を添付できるようにした。これも目立つ施策と言える。最後に「読んだよ」ということをプランナーに伝えるために、いいね!を伝えるプラグインを採用した。これらの工夫のおかげで、プランナーが結婚報告書を書いてくれるようになったそう。「プランナーに会うと、いつもいいね!ありがとう、と言ってくれます」と山口氏。モチベーションをアップさせて、アプリへの入力率を向上させる素晴らしい取り組みだ。
プラグインは他にも活用している。高機能なWebフォームプラグインの「フォームブリッジ」を利用して、イベントに来た顧客にアンケートを取り、その情報をkintoneで管理できるようにしたのだ。それまではイベントを開催しっぱなしだったが、データとしてkintoneに残すことでうまくグループのリソースを使い、顧客を循環させて成長させられるようになったという。
kintoneの通知機能で、目標を達成するための数字の意識が浸透するようになった。たとえば、山口氏も知らないところで、披露宴を受注した通知を社員のLINEで見たマーケティング部のチーフがおめでとうとねぎらう、といったやりとりがされているそうだ。
「ひとつの数字に対して、みんなが意識してくれるようになりました。具体的には、チーム内でひとつの目標に向かっている一体感がで生まれ、部署間では自分のことを気にしてくれているという信頼感や好感度などが生まれてきています」(山口氏)
kintoneを導入した後も、新たな部署や事業が始まっているのだが、そこに対してもさまざまなアプリを作って、社内ビジネスの変化にうまく対応できている。「これはkintoneでないとできなかったと思っています」と山口氏。
「現在は、クラウドのよさを生かし切れていない状態です。顧客データを扱っているので、社内施設からしかつながらないようにしているのですが、今後はOPROさんの「AppsMe」やサイボウズさんの「セキュアアクセス」を使って、働く場所や時間を選ぶことなく、理想の働き方をサポートしながら、会社が掲げているさまざまなライフスタイルや価値観を認め合えるというチーム作りをしていけたらいいなと思っています」(山口氏)と今後の展望を語ってくれた。
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