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網膜投影の現在は? 麻倉怜士が直撃

夢の網膜投影、進化を続けていた「RETISSA Display」

2019年07月05日 11時00分更新

一般ユーザーに向けたスマートグラスも注力分野

麻倉 「網膜投影型ディスプレーは、病気の方が正常を取り戻すという側面もありますが、ARなど正常な人が情報を得るための新しいデバイスにもなりうると思いますが」

菅原 「医療福祉分野に限らず、健常者に向けた民生機の開発も進めています。昨年、RETISSA Displayの法人・一般向け販売を開始しましたが、企業関係だけでも50台以上の実績が得られました。これを足掛かりに、コンテンツ分野、IT(通信キャリア)、自動車、建設機械、福祉関係、学校関係など、様々な分野のプロジェクトを進めていきたいと考えています」

麻倉 「いま動いているプロジェクトの数は、どのぐらいでしょうか?」

菅原 「詳しくは話せませんが、一番多いのは研究開発の分野です。特に作業支援など、マン・マシン・インターフェスに関するものが多いと思います」

麻倉 「エンターテインメントの分野での応用はいかがでしょうか?」

菅原 「実際に動き始めようとしているプロジェクトでは、能観劇があります」

麻倉 「能? つまり舞台を見ながら解説が見られるといったイメージですか?」

菅原 「最初のデモンストレーションは舞台を見られない、ロービジョンの方々を対象としています」

麻倉 「つまり、バリアフリー観劇ですね」

菅原 「しかし、一般の方に装着していただく使い方も想定しています。能の舞台にオーバーレイする形で、その背景や説明を出すといった使い方ができますし、難しい古語を現代語に翻訳したり、海外の方に向けて英語に翻訳したりといった使い方も可能でしょう。

 RETISSA Displayのいいところは、AR(Augmented Reality)が完全に実現できる点です。一般的なスマートグラスとは異なり、目の前に広がる風景と、補足情報を同時に違和感なく見られます。例えば、海外から来日したミュージカルの公演では、電光掲示板に翻訳が出ますが、ここを見ていると舞台に集中できませんよね」

麻倉 「おっしゃる通りです」

菅原 「また、バリアフリーという意味では、昨年シネマチュプキで実施した、劇場アニメのイベント上映も印象に残っています」

── 一般参加者の方も含め、100名以上の方にRETISSA Displayを使って映画やその予告映像などを視聴いただきました。

麻倉 「上映を通じて、菅原社長はどういった発見をされましたか?」

菅原 「50分近い作品を見ても、想像以上に疲れなかったという点ですね。僕は液晶ディスプレーを利用したヘッドマウントディスプレーが苦手で、短時間で目が疲れてしまうのですが、短編とはいえ映画1本を問題なく見ることができました」

麻倉 「液晶ディスプレーの場合は、凝視するというか目の前にある小さな画面に集中しないといけないですからね」

菅原 「RETISSA Displayはコードの取り回しが必要ですし、装着性にはまだまだ改善が必要ですが、座って見るのであれば、そこもあまり気にならなかった」

── 実際に来場した方の意見としても、近眼だけれども映像をハッキリと確認できたという声が多かったですね。

麻倉 「レーザー光源を使うので、RGBがくっきり出て、輝度も高く、結構いい絵にできる可能性がありますね。疲れにくいというのもいい」

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