その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第37回は、メディア事業を手がけるmediba。社員自身が手がけたオフィス移転プロジェクトでの気づきを聞いた。
どうやったら以前より働きやすくなるのかを徹底的にヒアリング
オフィス移転は働き方を変える大きなきっかけになる。働き慣れた場所を離れ、蓄積した紙資料や不要なリソースを捨て、未知の場所や社屋で新しい働き方にチャレンジする。そんなオフィスの移転プロジェクトを社員主導で進めたのが、auのポータルサイトやコンテンツ、auユーザー向けのauスマートパスを運営しているmedibaだ。
2012年から6年にわたってオフィスとして使ってきた渋谷のヒカリエを離れ、medibaが六本木一丁目に移ってきたのは2019年の1月。その約9ヶ月前の2018年4月、オフィスの移転が発表され、5月には社内で移転プロジェクトのメンバーが公募された。移転プロジェクトのメンバーだった二宮裕夢氏は、「前年、全社プロジェクトをやらせてもらって、全社の視点を得られたと感じました。移転はめったに経験ない大きなプロジェクトですし、興味がありました」と応募理由を語る。
移転プロジェクトで練ったのは、「どういう移転にしたいのか?」といったコンセプト作りから、オフィスのデザイン、社員のヒアリングなど。デザイン事務所の選定から任されたので、コストと事務作業以外は移転プロジェクトで考えたという。二宮氏と同じ移転プロジェクトメンバーの松尾真帆氏は、「そもそもヒカリエオフィスにあまり不満がなかったし、単純に六本木に移転すると通勤時間が延びてしまう社員も多かった。だから、全員が移転にポジティブという状態ではなかったんです。だから、どうしたら会社に来たくなるか、どうやったら以前より働きやすくなるかを考える必要がありました」と振り返る。
そのため、移転プロジェクトは社員に対してヒアリングをかけることからスタートした。「もともと弊社では『人間中心設計』でサービスを考えていこうという方針があったので、そのプロセスの元、20~30人くらいにどんな働き方をしたいかを1ヶ月かけてインタビューしました」と二宮氏は語る。こうしてインタビューやアンケートで集めた意見を「私事」「志事」「仕事」をかなえる「SHI-GOTOBA(シゴトバ)」というビジョンに集約し、それぞれのモチベーションに向け、多様な働き方を実現できるオフィスを目指したという。
円滑なコミュニケーションと多様な働き方を実現する「ハコ」
一方、社員へのヒアリングの結果として浮き上がってきた課題が、円滑なコミュニケーションを実現するオフィス設計だ。「ヒカリエの頃はサービス単位ではなく、部署で社員の居場所が決まっていたので、会議や打ち合わせが多かったんです。チームとしてコミュニケーションをとって仕事をしたいという意見が強かった印象です」(二宮氏)。その他、「会議室を増やしてほしい」「飲食店が少なそうで不安」といった声もあり、こうした不安や課題にきちんと対応していく必要があった。
そのため、新オフィスでは「グループアドレス」という仕組みを設け、チームやサービスごとに集まるテーブルをおおまかに決め、毎度会議を行なわなくてもコミュニケーションできる距離感を実現した。「昔は20人が1つのシマに座っていて、間仕切りもありました。でも、今は8人座れるテーブルを複数用意して、打ち合わせなしでもメンバーがすぐ話せるようにしています」(二宮氏)。
もちろん、黙々と作業したい人向けの集中ブースや、チームとひも付かないフリースペースも用意。要望が多かった会議室も増やし、社内用と社外用をフロアで分けた。「ガラス張りの会議室や窓の外が見えるデスクなど、とにかくいろいろなスペースを用意し、多様な働き方を実現できるようにしました」と松尾氏は語る。
移転から約半年しか経ってないが、「会議室は単純に増えたので、稼働率がかなり下がりました。社員からはグループアドレスになったことで、コミュニケーションコストが減ったという声が出ました」(二宮氏)、「カフェはイベントでも利用されているので、SNSでシェアされることが増えました。セミナーの開催も増え、外部の方との接触も多くなったので効果あったと感じています」(松尾氏)などの効果が得られたという。
最後、二宮氏に移転プロジェクトを通じて感じたことを聞くと、「制度だけじゃなく、ハコが働き方を変えることもあるんだなと感じました」という答えが返ってきた。「立ち前提で壁にホワイトボードを打ち付けたミーティングスペースを設けましたが、ちゃんと使われてます。今までと違った働き方を社員が自ら考えて、実践してくれました。これが一番の驚きでしたね」(二宮氏)
会社概要
KDDIグループの一員として2000年に創業。au関連サービス運営の他、国内外にてカルチャー・ゲーム・子育て等、幅広い分野でサービスを展開しています。「ヒトに“HAPPY”を」をミッションとし、幸せをお届けする事業を作り続けていきます。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります