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スポーツのビジネス発展には教育的価値向上が必要

 開催が2020年に迫った東京オリンピック・パラリンピック、国の「日本再興戦略2016」によるスポーツ市場規模15.2兆円へ拡大する目標の掲示などによりスポーツ産業は大きな注目を集めている。その盛り上がりは業界を超えて広がりつつあり中でも昨今、IT企業がスポーツチームへ資本参加、スポンサードするケースを目にするのも増えてきている。

 スポーツアナリティクスの観点からスポーツの新しい価値の向上を追求する「SPLYZA」。前回に引き続きSPLYZA Teamsを開発、運営するSPLYZAの土井寛之代表取締役に、日本のスポーツビジネスを拡大するための観点について話を伺った。

スマートフォン撮影の動画で分析できるツール「SPLYZA Teams」

スポーツに関心のある人だけでない、多くの人を呼び込む価値を発掘すべき

――スポーツマーケットを拡大させるための課題はなんだと思いますか?

土井寛之代表取締役(以下、敬称略) まずは、現在のスポーツビジネスにおいてスポーツの価値を大きくする働きかけができているか考えるべきです。そこに価値があるビジネスが生まれ、マーケットは大きくなります。さらにビジネスをするなら、価値ごと大きくしていくべき。

 例えば"英語"。英語は生きていく上でとても価値があると世の中から認識されています。だからこそ、教わりたい人が増え、教える人も増える。そして、学ぶ手法もTOIECから英会話、日常会話からビジネスシーンなど多種多様になってくる。価値が認められ拡大し、結果マーケットも大きくなっているわけです。

 スポーツにも、プレイする価値、観戦する価値、スポーツを支援する価値と様々な価値があります。しかし、英語のように多くの人の関心を集めるような価値は発見されていないと感じますね。

SPLYZA 土井寛之代表取締役

――注目しているスポーツの価値とは何でしょうか?

土井 SPLYZA Teamsの事例として先述したように、教育的価値です。スポーツのトライアンドエラーを重ねることで、選手は瞬時に判断する能力やコーチングのための言語力など、社会に出てからも役に立つ思考力を高めることができます。

 しかし、このようなスポーツの教育的価値はまだ認知が広がっていないと感じます。

――なぜこれまで教育的価値が認められてこなかったのでしょうか?

土井 大学受験に入ってないために、プライオリティが必然的に下がってしまうことがあるでしょう。

 大学受験とは基礎学力を問います。しかし、基礎学力は社会に出てから求められるような能力とは剥離してます。社会で生き抜くために必要な思考力を養うことが大学の役割だと思います。しかし、今の受験システムを経た大学は、理想的な生きた思考力を学ぶ機会としては機能しないだろうと感じます。

 では、大学受験で思考力を問うならどうすべきか。そこに最適な題材がスポーツなのです。

――スポーツが思考力を向上させ、その能力を測る手段として最適である理由は何ですか?

土井 それは、スポーツが社会やビジネスと同様に正解のない問題だからです。しかしながら、既存の教育では、すでに課題は用意され、必ず正解があり、その正解を導き出すことを正としています。

 まず、これでは課題解決はできても、課題発見はできない。しかし、スポーツは課題を発見するところから取り組まなくはいけません。自分たちのチームが強くなるために、何が課題であるかを見つけ、それらに優先順位を立て、対策していくことが必要になります。

 これは社会でも同様です。課題は自ら見つけていくもの。課題解決しか学んでいないと「私の仕事(課題)は何ですか?」と指示待ちの状態になってしまいます。スポーツでは、基礎学力では身につかない「課題発見能力」を養うことができると考えています。

 次に、スポーツに取り組む過程が重要です。スポーツは、不正解や失敗を受け入れてトライアンドエラーのサイクルを回す必要があります。上手く行かなかったことを分析、さらに仮説を検証して、前進させる。これはビジネスと同じプロセスです。むしろ数値化が難しい分実際のビジネスより難しいかもしれません。

 スポーツこそ社会をサバイブするためのスキルを習得できる手段であり、これがスポーツの大きな価値だと感じていますね。

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