デザインと使い勝手の良さの両立
――VAIOならではのこだわりというのはいろいろとありますよね。
巣山:デタッチャブル2in1のVAIO Pro PAですと、キーボード部とタブレット部に分離します。ドッキングするためのコネクタが表に出ていますが、この接点にホコリや汚れが付着すると、うまく通信ができなくなってしまいます。コネクタ端子が単に接触するのではなく、スライドしながら接続することで、付着している汚れをかきとる(クリーニングする)ことで、接点を綺麗にキープするという工夫をしています。
――接点の不良は出やすいですよね。
黒崎:高速信号を通すほど、コネクターの作りも繊細さが必要です。法人で使うにはどうしても耐久性が心配なので、耐久性をどうするのかを含め、インターフェースの構成を決定しました。
巣山:これに対してクラムシェルの場合は、メイン基板がキーボード側にあるので、ヒンジの中に液晶やカメラ、無線アンテナのケーブル類を通しています。液晶部の開閉にあわせてケーブルは引っ張られたり、捩れたりといったストレスが加わるので、設計段階からノウハウを盛り込み、最終的には何万回も繰り返す開閉試験で確認を行いますが、途中で切れるということはないですね。
――アンテナも常に液晶の上に設置してますよね。
巣山:アンテナの性能は非常に敏感で、例えばアンテナの部分を手で包むだけで特性がズレることもあります。ガラケーのアンテナを握るとアンテナ感度が落ちるアレです。
同じように金属が近づくことでも特性がズレることがあるのですが、事務用の机には天板に金属が入っていることが多く、ボディー側にアンテナを配置すると机によっては送受信機能が弱くなってしまう事が想定されます。常に最大の感度で送受信してもらいたいので、液晶の上に配置しています。
――狭額縁でもそこの部分は譲れないというわけですね。
巣山:狭額縁になったからといって、使い勝手は犠牲にしません。VAIO Pro PKでは、13インチサイズに14インチの液晶を搭載することで、結果として狭額縁になったわけですが、この過程でどうやってアンテナを通すかは大きな課題でした。単純に液晶の裏側を通せばいいのでは? と思われるかもしれませんが、加圧を繰り返すと、液晶表面に線材のあとが出てきてしまうことがあります。それを避けるために、線材を変更し液晶フレームの端を通しています。
――今後、より「快」を突き詰めて行かれるかと思いますが、どういった製品を提供していきたいと考えていますか?
黒崎:VAIO Pro PKは発売されたばかりなので、お客様からのフィードバックはこれからですが、大画面になったことがストレートに喜ばれています。特に今からモバイルワークを導入するお客様は、もっと大きい画面サイズのPCからの乗り換えを考えているので、13インチでは心配という声があり、14インチのVAIO Pro PKを提案しています。
一方で、VAIO Pro PAは実際に検証したいという声が多いです。VAIO Pro PAは働き方自体を変えていくと同時に導入するモデルなので、検証機の貸出を行い、腰を据えて検証・導入を進めていく製品だと思います。
われわれは次世代の働き方を作っていくんだという思いで、PCを設計しています。その目標のために製品を作っていくことはブレずにやっていく所存です。王道のクラムシェルPCは、モバイルワークのさらなる進化を目指しています。一方でVAIO Pro PAのような、新しい使い方を提案するモデルも発表しました。今後も、それぞれのPCの可能性を探っていきながら、進化させていきたいと思っています。
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