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東京ヴェルディの救世主にアカツキはなれるのか?

――ゲームで行なったことがスポーツの現場で使えそうなことの具体例はありますか?

梅本氏 モバイルゲームは、マーケティング効果を最大化するために、ユーザーの行動をデータ化し、数値に落とし込んで分析し施策を実施するということを特に厳密に行う産業です。この方法論はスポーツビジネスにおいても適用できるものであると考えています。

 まずはバケツの穴を塞ぐ。いきなりスタジアムにたくさん人が来なくてもいいが、来ていただいた人にはまた来たいなと思わせるようにする。そのために、また来たいと思うポイントはどこか、顧客の視点になって、駅を降りてからスタジアムに着いて試合を観て帰る。あるいは、その前段階のチケットを買う段階から見直す――どうやって情報を得るのか、どうやって買うか。すべての導線を想像して、そこに適切な施策を打つことをやっていきます。この考え方を土台に、KPIを設定してPDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)サイクルを回していきます。

 リターンレート(再訪率)や満足度などのKPIが目安を超えたところで、初めて、バケツに水を沢山注ぐこと、すなわち新しいお客さんに来てもらうための施策を実行します。穴の開いたバケツに水を注いでも水はたまりませんし、一度こぼれた水はもう戻って来ません。こういった考え方や方法を元に具体的な施策を進めていきたいと考えています。

 実際には、大きくスタジアムの中と外、それぞれオンライン/デジタルとオフライン/リアルの4つに分類でき、それぞれで適切な手を打っていくことになります。例えば、今あるファンクラブをもっと楽しめるものにする。この辺りもアカツキが手伝うことができると思います。

塩田氏 ゲームのマーケティングは基本的にはオンライン中心でスタートし、その後オフラインの施策が重要になってきた。そのような歴史があります。以前はWebで広告をどう打つかを最適化していましたが、エンゲージメントを高める目的でオフラインを活用しています。例えば、コアなゲームユーザーを招待したオフラインの感謝イベントを開いたりしています。このように、オフラインも含めた全体で、どうやってカスタマージャーニーを作るかが重要になってきています。

 オンラインとオフラインの両方でちゃんとマーケできる会社は多くありません。我々は現在、横浜駅東口に「アソビル」というエンターテインメント施設を作っています。オフラインのリアルな場所作りです。

アソビルは2019年3月15日に横浜駅東口にオープンする複合型エンターテインメント施設

 ヴェルディに対しても、オンラインとオフラインの融合を手伝えると考えています。中心にあるのはヴェルディが作っていくビジョンやコンセプトです。この両方を企画、実行することができるケイパビリティがアカツキの資産です。あとは、どれだけ速く運用を回して行くことができるか。最初から完成形を作るよりも、小さく始めて柔軟に運用しながら改善をし続ける。こういったノウハウをアカツキからご提供することでヴェルディの事業をサポートさせて頂きたい、と考えています。

――オフラインの効果を数値化するというところは企業が苦手とするところです

塩田氏 数値化は重要です。思考が薄くなると数値が見えるところだけに投資する――バケツの穴を塞ぐことより、投資することの方がKPIが見えやすいのでそちらに流れがちです。いかにデータを取りながら数値化していくか、数値化できない部分は経営陣を含めた意思決定です。まだ見えていないことをいかに不合理にやれるか、ここは経営チームの文化の問題と言えます。

 アカツキは、多様性を受け入れる受容力がある会社です。スポーツ業界では知見がないが、自分たちが持っているものは役立つと考えているので、基本的には一緒に作り上げていこう、お互いリスペクトしようという姿勢です。

梅本氏 ヴェルディの経営陣、現場のスタッフはどなたも優秀な方ばかりです。アカツキが入って現場を変えるというアプローチではなく、一緒にやる、サポートさせていただくというのが我々の姿勢です。また、アカツキの経営にも学ぶところは非常に多く、色々と勉強させていただいています。

 ヴェルディが今必要としていることは、1つは単純に予算と人、もう1つは仕組み、と理解しています。仕組みとは、何をやるか、やったことの効果を評価して次に回すということです。そこではアカツキが人を入れて手を動かすことを含めて支援していきたいと思っていて、アカツキの人材を派遣するだけでなく、ヴェルディをサポートする優秀な人材をアカツキとしても積極的に採用していきます。

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