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品質にコダワルiiyama液晶の開発現場の実情に迫る

2019年02月05日 11時00分更新

――ちなみにコンシューマーだと売れ筋はどういった製品になりますか?

下田 今はIPS技術を取り入れた24インチで解像度がフルHDモデルですね。TNは応答速度が速いので、応答速度が重視されるゲーミング用ディスプレーで採用するケースが増えています。しかし、ボリュームゾーンといわれると、視野角や高精細を重視されるIPSかVAになります。

 当社では毎年夏に飯山工場でアウトレット製品を集めた「訳ありセール」を行なっています。昔は、24~27インチが市場価格が高くセールでもあまり売れなかったのですが、最近は4Kや144Hzのゲーミング液晶など特徴的な製品が人気です。セールでは店頭にたって実際のお客様の声を聞くことも多いのですが、時代によってニーズがどんどん変わっていくのが一目で分かりますね。

ヨーロッパの有害物質排除対応にはかなりの努力が必要

――日本と海外の安全規格や環境に対応させるのはかなり大変なのでしょうか?

下田 安全規格と環境というのは、世界各国でいろいろ基準があって、製品だけでなくパートナー企業を含めて経塚が監視しています。iiyamaのディスプレイは日本とヨーロッパ、両方の地域で取り扱う製品がほとんどです。そのため、国内だけでなく海外の規格を取ることで品質を確保するのが当たり前になっています。なので製品によって日本とヨーロッパとの差は基本的にありません。

iiyama事業部 開発室 エキスパート 経塚博康氏

経塚 常に動向は追っていかないといけないっていうところがありますし。特に環境規制に関しては、動きが多いですね。

――かなりの頻度で変わったりするんですか?

経塚 そうですね。2006年にRoHS指令※がヨーロッパで施行され、6つの有害物質の規制が行われまして、それが世界的に大きな影響を与えました。それに続き日本もJ-Mossという日本版RoHSができたり、各国独自の規制ができています。有害物質の規制に関しては、ヨーロッパがけん引しているのが大きいですね。

RoHS指令: カドミウム、鉛、水銀、六価クロム、PBB、PBDEの6物質を規制するヨーロッパの法令

 法律なので必ずやらないといけませんので。そして2019年7月22日には、RoHS指令の有害物質の規制対象6物質に加えて、さらに4物質が追加されます。おそらく他の国もこれに追従して、同様の動きをしてくるかもしれません。そのあたりの動向の見極めも重要ですね。

――追加される4物質というのは、現状使われているものなんですか?

経塚 有害性が懸念されていた物質なので、使用は減っていると思います。具体的に使用されているかというのは、調達先に聞かなければわからないです。

下田 有害物質は専用の計測機器を使って、規制される物質を分析しています。ヨーロッパの基準はクリアできないと厳しい措置を受けますので、綿密に測定・確認しています。

経塚 そうですね。商品回収など、とにかく厳しい追及が待ってると思います。

下田 一般のお客様は、そこまではあまり気にされませんが、法人系はRoHS指令に対応していないといけないとか、環境関係は購入の条件にもなっているので、経塚が毎回資料をつくって提出しています。

経塚 RoHS指令が10物質になるので、ここのところ多いですね。

――実際、どのように調査されているのでしょう。

経塚 調達先に規制される物質が含まれているかを聞きます。その調達先でまた違う部品が組み合わさっていたら、さらにその先の調達先に聞いてというのを繰り返し、どんどん原材料まで追っていっています。その調査の積み重ねによって、われわれの製品がRoHS指令に対応していますよ、と言えるわけです。

――なるほど、かなり大変な作業ですね。最後に、今後はどういったディスプレーを開発していきたいと考えていますか?

下田 やはり、いま注目のHDRでしょうか。ヨーロッパで販売している大型ディスプレーの一部で対応モデルを出している状況で、日本ではまだこれからです。27インチ以上でゲーミング用途を中心として検討しています。

 すでにヨーロッパではDVI端子を外す方向で動いてます。日本でもDisplayPortを標準でつけるように製品の切り替えを行なっていて、パソコンと一緒に販売することを考え、それに合わせて搭載する端子もどんどん変えていこうとしています。今後は、iiyamaの強みが出るような商品を開発していければと思います。そして、これは各製品に共通することですが、性能、品質、価格がトータルでバランスのよい製品をこれからも安定して供給し続けて行きたいと思います。

品質に関するコダワリを強く感じた

 こうして開発の人と話していると、製品づくりの難しさ、こだわりをものすごく感じた。こだわれば、IPSで高視野角、広色域、Adobe100%オーバーという製品も可能とのことだが、製品の性能・品質だけでなく、お客様に選ばれる価格にすること、さらに安定した供給をすることのむずかしさがある。

 今回、パソコンとディスプレーそれぞれの開発者にお話を伺ったが、想像以上に品質に対する細かなチェックや環境対策に追われていることが伝わったのではと思う。国内BTOメーカーとしての意地とプライドを感じた。

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