インターネットの「光と影」から見出した正解
『シュガー・ラッシュ:オンライン』では、ラルフとヴァネロペは『シュガー・ラッシュ』の危機を救うため、インターネットの世界へ行くことに。しかし、アーケード・ゲームの世界しか知らない彼らにとってそこは未知の世界。「インターネットって?」「Wi-Fiってなに?」と戸惑う2人。何の知識もなくその世界に踏み入れてみると、高層ビルが立ち並ぶ都会だった。
インターネットの世界を創造する際、マンハッタンや上海、ドバイ、東京などの実在の都市から着想を得たという(公式冊子より)。「Google」「Twitter」「Facebook」「eBay」など実際の企業もロゴもあれば、架空の動画サイト「バズチューブ」なども多数登場。外観はいかにもSFチックだが、街並みや人混み、建物に掲示される広告などは、どことなく現実の都会を連想させる。インターネットの世界(虚構)と現実世界(リアル)が密接にリンクしているような気がした。
この作品はインターネットの「光と闇」を寓話的に描いている。今作の共同監督のひとりであるリッチ・ムーア監督は「インターネットの良し悪しはユーザーに左右される」と語る(インタビューより)。例えば、前半ではインターネットを良心的に使用していたラルフも、後半からヴァネロペを想うがあまり、自らの良心を闇に捧げてしまう。ラルフの変貌ぶりは現代におけるネットユーザーの善悪を暗示しており、他人事とは言えないリアルを味わった。
後半、ラルフとヴァネロペはインターネットの光と闇に影響されつつ、お互いが納得する正解を探し求めようとする。インターネットの世界で暮らしたいと願うヴァネロペと、親友と離れ離れになりたくないと願うラルフ。そんな2人が最終的に見出した正解は、インターネットの光と闇に依存しがちな現代人の心に深い味わいをもたらすだろう。
●文:市川
●評価:★★★★★
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