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米国のファーウェイバッシングが激化 世界の5Gに与える影響は?

2018年12月12日 10時00分更新

日本政府の対応は社名を挙げないものの事実上排除!?

 Meng氏逮捕が明らかになったのと同じ日、大西洋の向こうの英国では、BTが自社通信インフラにおけるファーウェイの使用を減らすことを明らかにした。新しい技術である5Gはもちろん、インフラ維持が必要な4Gにおけるファーウェイ製品も段階的に減らすという。

 2015年に同じ英国のキャリアであるEEを買収した際、コアの3G/4Gネットワークからファーウェイの技術を排除する方針を固めていたと言うが、この時期に発表するあたり、米政府が西側諸国に圧力をかける中で表明せざるを得なかった感は否めない。同時期、イギリス情報局秘密情報局(MI6)トップのAlex Younger氏は、英国内の通信インフラにおける中国製品の役割について明確にしなければならないとする発言をしている。

 米国、オーストラリア、ニュージーランド、そして英国のBTなどが通信インフラからファーウェイ製品を排除する理由は、ファーウェイ創業者が人民解放軍にいたことがあるなど中国政府との関係があるため、同社製品を通信インフラに使うと中国政府による盗聴が可能になってしまうというものだ。これに対しファーウェイは、従業員による持株制度を敷いており、中国政府との繋がりはないと主張している。

 問題はファーウェイが本当に中国政府のスパイ行為に協力しているのかどうかだろう。ただ現時点では、ハッキリとした証拠らしい証拠を報じたものはない。たとえばファーウェイは英国で、自社製品の安全性を検査できるセキュリティーセンター「Huawei Cyber Security Evaluation Centre(HCSEC、”The Cell”)」を英政府と立ち上げており、HCSECでの作業はGCHQの一部であるNational Cyber Security Centreが国家インフラの安全性の観点から監視を受けている。

 そのHCSECが今年7月に政府に提出した報告書によると、コンピューターにより変換されたファーウェイのコードは一貫性を欠く部分があるが、不正アクセスなどの証拠は見つからなかったとしている。結論としては、「ファーウェイが英国の重要なネットワークに含まれていることによる国家安全のすべてのリスクが完全に緩和されているという保証は、制限的でしか確証できない」としている(https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/727415/20180717_HCSEC_Oversight_Board_Report_2018_-_FINAL.pdf)。

 さて日本では、12月7日付けで主要紙が、政府や自衛隊が使用する情報通信機器からファーウェイとZTEの製品を「事実上、排除する方針を固めた」と報じた。同日、菅義偉官房長官は記者会見中にこの件について、「サイバーセキュリティーの確保はますます重要」とし「さまざまな観点から取り組んでいきたい」と話すにとどめたとされている。

 中国政府は”Made in China 2025(中国製造2025)”として、ロボティクスなどの先進技術を通じてハイテクでリードを図る国家戦略を敷いている。技術での優位性で中国に追い越されるわけにはいかないというのがトランプ大統領の腹づもりだろう。

 一方で、ファーウェイ製品のクオリティーと価格のバランスを評価するキャリアは多い。この状態が続くことが世界の5Gにどう影響を与えるのかは気になるところだ。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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