ビジネスチャット「Chatwork」を提供しているChatwork株式会社が、11月28日に社名とサービス名、ロゴ、コーポレートミッションの変更を発表した。2018年6月1日付で山本正喜氏が代表取締役CEO兼CTOに就任したのをきっかけに、第二創業として新しくスタートを切った形だ。同時に、中長期的な戦略も発表。Slackなど強力なプレーヤーがひしめく中で、新代表はどのようなかじ取りをするのだろうか。
先代CEOの弟である山本正喜氏が代表取締役CEO兼CTOに就任
代表取締役CEO兼CTOである山本正喜氏は、前CEO 山本敏行氏の弟。2000年7月に前身となる有限会社EC studioを創業し、2012年4月に社名をChatWork株式会社に変更。そして、当日11月28日にChatwork株式会社となった。ビジネスチャットの「Chatwork」は2011年3月にリリースし、2015年と16年の2回にわたって総額15億円の資金調達を実施している。
以前の会社名は「ChatWork」で、サービス名がカタカナ表記の「チャットワーク」。そして、ロゴの下の文字は「chatwork」と全く統一されていなかった。今回、ここを「Chatwork」で統一。会社名もサービス名もロゴの文字も、Cだけが大文字の英語表記となった。それに合わせて、ロゴも刷新。チャットワークのロゴは、チャットを表す4つのチャットバブルで構成されているが、これがフレームから塗りつぶしになった。
CEO兼CTOとなかなか耳にしない役職については、「私としても技術屋のプライドもあるので、ただのCEOにはなりたくないというところで、CEO兼CTOとCTOを残させていただいています」と山本氏は答えた。
ChatWorkはメールや電話に変わるビジネスチャットサービスとして、グループチャットとタスク管理、ファイル共有、ビデオ/音声通話という大きく4つの機能を搭載している。PCはもちろん、タブレットやスマートフォンなど、マルチプラットフォームで展開している。
ChatWorkは2011年のリリースから加速的に右肩上がりで成長している。2011年には8000社だったところが、2017年には16万ユーザー、2018年は11月の時点で20万社を突破している。業種業界を問わず幅広く活用されており、契約企業にはKDDIやサイバーエージェント、SMBCベンチャーキャピタル、SMS、MoneyFoward、LIFULL、大和証券など、そうそうたるメンツが揃っている。
ミッションは「働くをもっと楽しく創造的に」
コーポレートミッションを新しくする背景は、創業時にチャットワークもない頃だったので、広く何でもできるミッションにしていたため。現在は、「Chatwork」にフォーカスして事業ドメインが絞りこまれているので、そこを明確にしたかったそう。
従来のコーポレートミッションは「Make Happiness」、コーポレートビジョンは「世界の働き方を変える」だったところ、新しいコーポレートミッションは「働くをもっと楽しく創造的に」となった。ビジョンは「すべての人に一歩先の働き方を」となる。
「人生の大半を過ごす働くということを単に報酬を得るためだけの労働にするのではなく、楽しく、創造的に社会を豊かにしていくライフワークにできる人を増やしていきたいと考えています。コミュニケーションを見直すことで、意思疎通や集中できないといった問題を解決することによって、より自分らしく未来を作りたいと考えています」(山本氏)
「ビジョンは、業種業界を問わず、みんなが使えるものを作りたいと考えています。世界中のあらゆる人に一歩先の働き方を提案したいと考えています。二歩先三歩先に行ける人はごく限られた人で、誰もが足を踏み出せる一歩先を提示するのが大事だと考えています」(山本氏)
来年以降はAPI連携の充実、代理店販売、アジア展開を推進する
来年以降の成長戦略は「チャットを起点に、チャットを超えて、事業を拡大させる」と打ち出した。まず、API連携により、Chatworkにいろいろな通知が届くことで、予定調整や翻訳、ファイル共有、プロジェクト管理、情報ダッシュボードのような連携が実現できるという。
「それだけでなく、われわれはサービス的な付加価値もつけていきたいなと思っています。今提案しているのが、Chatwork電話代行、Chatworkアシスタント、Chatwork助成金診断の3つになります」(山本氏)
ビジネスチャットをただ社内コミュニケーションに使うだけでなく、チャットでできる領域を広げていきたいという。
第2の成長戦略としては、代理店販売と業種展開の拡大を掲げた。同社は直販がメインではあるが、リーチできない層がある。そこに、代理店を通じてアプローチする予定。今は関東がメインだが、代理店と組めれば、全国の企業や官公庁に参入できるようになる。遠くないうちに、直販よりも規模を大きくするつもりだという。
「現在は、士業、介護、建築業界に注力して、そこで広まっています。ここから拡大していく業界としては、製造、小売り、医療業界もやっていこうと思っています。業界ごとに深掘りしていきます」(山本氏)
最後が、アジアを中心としたグローバル展開。
「すでにベトナムと台湾で展開しており、地理が近くて時差が小さいということで、アジア各国でのローカルNo1を目指します」(山本氏)
アジアのビジネスチャットでChatworkという名前があげられるようになり、そして最大級と言われるようになりたいと山本氏は語った。
さらに、大阪本社の移転も決定したという。現在は、山本氏の実家のある吹田市に本社があるが、おそらくは梅田周辺に移転するそう。コーポレートミッション実現に向け、採用強化するという趣旨。2019年中の移転を予定しているという。
質疑応答でChatworkの強みについて聞かれた山本氏は、「Chatworkのポジションとしてはビジネス職、つまり営業やマーケティングといった技術職ではない人たちをコアターゲットにしています」と答えた。
Chatworkはビジネス職向けコミュニケーションプラットフォームという位置づけで、エンジニア向けだったり全方位向けのサービスとはターゲット層が異なるという。さらに、社外とのやりとりがしやすいという特徴もある。士業などで、顧問先にもChatworkを入れるというケースが増えているそうだ。
以前はフリープランでは最大14個のグループチャットで参加できた。もし足りなくなったら、どこかのチャットを退席すれば、新たなチャットに参加できたのだ。しかし、2018年6月に制限がかかり、累計14個までとなった。
「基本的にフリープランのほとんどのユーザーは数個のグループチャットしか使っていません。われわれとしては、顧問先や提供先にフリーで提供して全然ウェルカムです。しかし、たくさん使っているユーザーが14個をぎりぎりやりくりしているなら、対価はいただきたいですし、そもそも本来の使い方ではありません」(山本氏)
14個どころではなく、もっとたくさんのグループチャットで活発にコミュニケーションすべきと山本氏。自身が参加しているグループチャットの数は5000個を超えているそう。部署やチームごとに使うだけでなく、できればプロジェクトごと、お客様ごと、トピックごとに作ることを勧めている。例えば、同社では「雑談」チャットとか「今夜飲みませんか」チャットとか、細かく作っているそうだ。
今後チャレンジする技術的な課題はという質問には、「誰と誰がどういうコミュニケーションしているのかがデータ化されているビジネスチャットのデータにはすごい価値があります。プライバシーへの配慮は必要ですが、機械学習をかければ発言の回数などでメンタルヘルスなどもある程度相関で出せると考えています。会社組織でいえば、マネジメントの革命が起こせるという気もしています」と答えてくれた。
ビジネスチャットの市場はとても大きいので、1社独占というのは難しい。そこで、同社はビジネス職向けではChatworkがいいよ、というところの確立を目指したいという。
ビジネスチャットの未来としては、これからマジョリティを超えてくると、サービスが乱立してくると予想される。それにより、かえってコミュニケーションの断絶が問題になると考えているそう。山本氏の予測によると、例えば、ビジネスチャットプロトコルのようなものが制定されて標準化され、ビジネスチャット間でのコミュニケーションができるようになるという。「まぁ、10年後くらいかな」と山本氏は笑って締めた。
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