昔はギターだったけど、僕らはコンピューターでコードを奏でよう
フジテック友岡CIO、スタジアムでLOVE&PEACEを叫ぶ
今の社会を形作るオープンソースの役割と思想
現在の社会は社会運動としてのオープンソースから大きな恩恵を受けている。「われわれは1円も払わず、検索なくしたり、SNSを使うことができる。限界費用ゼロのサービスがなぜ提供できるかの一端としてオープンソースが存在している」と友岡さんは語る。
ご存じの通り、1997年にはデビアンの社会契約では「自由であること、差別しないこと、すべてを公開すること」などの「オープンソースにおける憲法的な原理」が謳われている。また、リーナス・トーバルズ氏も、コミュニティ運営の極意について「決定を下すときには徹底的に説明し、文書化する」「間違いを素直に認める」「議論を公開する」などを披露している。
「JAWS-UGも、多くのコミュニティも、この原理を貫かないといけない。納得ができない反対意見だけど、少なくとも自分が議論に参加していれば、反対でも受け入れることができる」と友岡さんは語る。一方で、一番の的は無関心。「無関心こそがコミュニティの最大のリスクであり、コミュニティ側も無視だけはやってはいけない行動だと思う」(友岡さん)
一方で、トーバルス氏にとってのコミュニティ運営のモチベーションは、「何か面白いことをやる集団への帰属感」だという。みんなを踊らせるのではなく、踊っているみんなといっしょにいること自体が大きなモチベーション。「彼は自分がリーダーシップをとってみんなが参加していることが楽しいとは言ってない。集団に帰属することが喜びだと言ってる」と友岡さんは語る。
オープンソースの思想は、これまでの古いコミュニティにあった区別という概念を否定し、自由を保障する。また、ギブ&テイクの発想がなく、つねにギブしかない。「ギブ&テイクの概念にとらわれているコミュニティリーダーは、いったん滝に打たれて、その概念を捨て去ったほうがいい」(友岡さん)。そしてギブし続け、それを排除する概念と戦う。「会社を移った途端にコミュニティ活動に参加できなくなったとか、名刺を渡せなくなったということが起こるのであれば、その会社とは戦うべき。みんながオープンにノウハウを共有する社会に対して反逆する企業があれば、断固戦ったほうがいい」と友岡さんは語る。
こうしたオープンソースは、ハッカーカルチャーに端を発し、その源流は1960年台のヒッピーにある。「モノにこだわらず、みんなで共有するといった、今で言うシェアリングエコノミーはここらへんから生まれている」(友岡さん)とは、まさに目からウロコの視点だ。
こうしたヒッピーを体現するのが、ジョン・レノンがImagineで歌い上げた「LOVE&PEACE」の思想。そして多くの若者はギターをもって、コピーすることでムーブメントに身を投じた。友岡さんは「僕はFのコードが弾けなくて挫折したけど、ギターを持った若者が集まることで、社会運動になるフェスティバルが生まれた。みなさんからすると、ずいぶん昔のことに感じられるかもしれないけど、僕の中では、今日のJAWS FESTAは当時のフェスティバルと同じ地平線上にある」と語り、50年の時をつなぎ始める。
「コードを扱うのは昔はギターだったけど、今はコンピューター。しかも、コンピューターであれば、うまい人のコピーも完璧に行なえる。これが限界費用なしのインターネットの美しさ。美しいモノをどこまででも遠くに無料で届けることができる。インターネットを介して、SNS上で誰とでもつながれる。これが今のインターネット社会のすばらしさ」と友岡さんは語る。
世界をコードで記述しつくすためのコミュニティ
友岡さんはアルビン・トフラーが規定する3つの革命にコミュニティを割り当て、農業革命で生まれた村を「Community 1.0」、産業革命で生まれた企業・国家を「Community 2.0」、そして情報革命で生まれたインターネット上の集合知を「Community 3.0」とする。JAWS-UGもまさにこうしたインターネットで生まれた新世代のコミュニティと言えよう。「今までイノベーションのゆりかごは企業や国家だったが、インターネットが普及して以降はソーシャルネットワークやインターネット上の集合知が社会を動かす原動力になっている」と友岡さんが指摘する。
その上で「世界をコードで記述しつくすこと。これこそがわれわれのミッション」だと友岡さんは説く。今までIT化が遅れていた金融業界はFintechとしてコードで記述され、国家が担っていた貨幣価値がブロックチェーンというテクノロジーで担保されつつある。世界の隅々までをコードで記述するという運動自体が、友岡さんの中ではまさにジョン・レノンが目指したLOVE&PEACEの思想と重なるようだ。
最近はDNA自体がコードで、神経系もコードで動くことがわかってきた。アナログとデジタルの境界線がなくなっていく世界で、僕らと彼らという境界線をなくし、フリーでシェアする社会に、われわれはフルコミットしなければならないというのが友岡さんの論。「テクノロジーですべての人にやさしい社会に向けて、OSをアップグレードしなければならない」(友岡さん)。
最後、友岡さんはJAWS-UGの運営スタッフに賛辞を送り、次は参加者が登壇や運営にまわるべきと語る。「まさに今日のJAWS FESTAで踊りが始まる。僕もこんないい天気の中、サッカー場であほ踊りしたので、みなさんも踊ってもらって、懇親会でうぇーいってなるのを僕は見たいな」とあおり、基調講演を終えた。そして、祭りが始まった。
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