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Core i9-9900K、Core i7-9700K、Core i5-9600KをRyzen 7 2700Xにぶつける

物理8コアの9900K&9700Kは真のRyzenキラーになるか!?第9世代Core全3モデルを徹底ベンチマーク

2018年10月19日 22時00分更新

第8世代CoreやRyzen 7 2700Xとガチンコ比較

 それでは今回の検証環境を紹介しよう。今回は第9世代Core3製品(すべてQS版)が、第8世代Coreのi7-8700Kとi5-8600Kに対してどの程度性能が向上したかをメインにチェックする。もちろん、メインストリームでインテルからベルトを奪ったRyzen 7 2700Xも準備した。

 また、メモリー設定はXMP(Ryzen環境のマザーボードではD.O.C.P)を有効化し、各CPUの定格最大クロックで運用する。BIOSのブースト系機能に関しては、すべてマザーボードのデフォルト値で運用することにした。

【検証環境:インテル】
CPU:Intel「Core i9-9900K」(8C16T、3.6GHz~5GHz)、Intel「Core i7-9700K」(8C8T、3.6GHz~4.9GHz)、Intel「Core i7-8700K」(6C12T、3.7GHz~4.7GHz)、Intel「Core i5-9600K」(6C6T、3.7GHz~4.6GHz)、Intel「Core i5-8600K」(6C6T、3.6GHz~4.3GHz)
マザーボード:ASUS「ROG STRIX Z390-F GAMING」(Intel Z390、BIOS 0506)
メモリー:G.Skill「F4-3200C14D-16GFX」×2(8GB×4、DDR4-2666で運用)
グラフィックス:NVIDIA「GeForce RTX 2080 Ti Founders Edition」
ストレージ:Western Digital「WDS100T2X0C」(NVMe M.2 SSD、1TB)
電源ユニット:SilverStone「ST85F-PT」(850W、80PLUS Platinum)
CPUクーラー:CRYORIG「A40」(簡易水冷、240mmラジエーター)
OS:Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(April 2018 Update)

【検証環境:AMD】
CPU:AMD「Ryzen 7 2700X」(8C16T、3.7GHz~4.3GHz)
マザーボード:ASUS「ROG STRIX X470-F GAMING」(AMD X470、BIOS 4024)
メモリー:G.Skill「F4-3200C14D-16GFX」×2(8GB×4、DDR4-2933で運用)
※その他のパーツやOSはインテル環境と共通。

基本性能チェックから頭角を現わすCore i9-9900K

 では早速「CINEBENCH R15」での力比べから観察していこう。インテルのCore i9-9900K対AMDのRyzen 7 2700Xの頂上決戦のほか、6コア/12スレッドのCore i7-8700Kと8コア/8スレッドのCore i7-9700Kはどちらが上かが見どころとなる。

「CINEBENCH R15」のスコアー。

 8コア/16スレッド対決の結果は、グラフの通りCore i9-9900Kの圧倒的勝利。8コアすべてが4.7GHzで動くだけにスコアーも高い。Ryzen 7 2700XにはPrecision Boost Overdriveというブースト機能があるが、これを効かせてもせいぜい1800cb後半だ。インテルが見事メインストリームCPUのパフォーマンストップを奪還したと言えるだろう。シングルスレッドも215cbと、さらに速くなっている点も見逃せない。

 そして、新旧Core i7対決に目を向けると、マルチスレッドテストでCore i7-9700KがCore i7-8700Kを上回った。Core i7-8700Kのほうが論理コア数で4コア多いが、物理コアの数には勝てなかった。HTでコアが増えたとしても、増えたぶんのコアは物理コアよりも性能が劣るというセオリーどおりの結果となったのだ。

 一方で、Core i5はスペックに大きな変化はなく、クロックが上がっただけなのでスコアーも微増程度。第9世代Coreの中ではCore i5-9600Kが一番新鮮味に欠ける製品と言わざるを得ない。

 続いて総合ベンチマーク「PCMark 10」で様々なシチュエーションにおける性能の傾向を掴んでおこう。テストは全テストグループを実行する“Extended Test”を利用する。総合スコアーだけでは優劣の傾向がつかみにくいので、テストグループ別のスコアーも合わせて比較する。

「PCMark 10」Extended Testのスコアー。

 PCMark 10はマルチスレッド処理を使うシチュエーションも想定されているが、同格のCPUなら動作クロックの高いものが高スコアーになりやすい。総合スコアーでCore i5-9600KとCore i5-8600Kの差が大きいのは、クロック上昇ぶんの効果が大きいと考えられる。また、Core i5-9600KはRyzen 7 2700Xにも勝っているのが興味深い。

「PCMark 10」Extended Testのテストグループ別スコアー。

 テストグループ別のスコアーに目を向けると、負荷の軽い“Essentials”と“Productivity”では、ターボブーストの最大クロックが高いCore i9-9900K&Core i7-9700Kが上位を占めている。Ryzen 7 2700Xはクロックが低いため、この2テストでは第8世代Core i5並みのスコアーに甘んじている。だが、動画エンコードやCGレンダリングを扱う“Digital Contets Creation(DCC)”では、第9世代Coreの上位2モデルには及ばないものの、物理8コアの存在感を示せているようだ。

 そして、“Gaming”はCPUの計算力(物理演算テスト)が加味されるため、CINEBENCH R15の傾向がそのままスコアーに反映された。どのテストグループでもCore i9-9900Kが突出していることがわかったはずだ。また、Ryzen 7 2700Xは依然ゲーミングではCore i5より下の存在ということがわかる。

クリエイティブ系処理でも強い第9世代Core

 では、実アプリ中心のベンチマークに入ろう。マルチスレッドを生かす作業なら映像制作系のアプリが好適だ。

 まずはCGレンダリング系ベンチマークを2本チェックする。1本目はCGレンダラー“V-Ray”のコアを使った「V-Ray Benchmark」、2本目はフリーのCG作成アプリ「Blender」だ。V-RayもBlenderもCPUのみを使うレンダリング時間を比較する。Blenderは公式ブログで公開されている「Cycles Benchmark」のうち“bmw27”、“pavilion_barcelona”、“barbershop_interior”の3本を使用した。

「V-Ray Benchmark」のCPUレンダリング時間。

「Blender」+「Cycles Benchmark」のCPUレンダリング時間。

 どちらのテストも最速はCore i9-9900K、2番手はRyzen 7 2700Xの8コア/16スレッドCPUが独占した。しかし、3番手はテストによって異なった。V-Rayは物理コア数の多いCore i7-9700Kが僅差でCore i7-8700Kを制したが、Blenderは逆に論理コア数の多いCore i7-8700Kのほうが速い。このあたりは処理の仕組みの差と考えられるが、実はもうひとつ重要なファクターが隠されている。これに付いては後ほど解説したい。

 V-RayもBlenderも概ねCINEBENCH R15と同傾向ということがわかったので、次は動画エンコード系の処理を試してみる。

 まずは「Premiere Pro CC」で作成した8K動画(4K動画4枚を並べただけのもの)を「Media Encoder CC」を用いて8KのMP4形式に書き出す時間を比較する。ビットレートは50Mbpsとし、H.264は2パスVBR、H.265は1パスVBR(Media Encoder CC側の仕様)とした。また、CUDAを利用した「Mercury Playback Engine」を利用している。これを使わないと処理時間がとんでもなく長くなるためだ。

「Media Encoder CC」の動画エンコード時間。

 H.264に関してはV-Rayなどと同傾向。ここでは物理コア数の多いCore i7-9700KがわずかにCore i7-8700Kをかわしている。一方で、H.265になるとやや傾向が変わる。

 首位はCore i9-9900Kで同じだが、H.264では2位だったRyzen 7 2700Xがスローダウンし、Core i7-8700Kとほぼ同着となった。また、Media Encoder CCはThreadripperのようなメニーコアCPUで運用するとコア1個あたりの負荷が上がりきらなくなるので、Core i9-9900K程度のCPUのほうがコスパがいいだろう。

 もうひとつ動画エンコード系として「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を試す。再生時間約6分半の4K動画(NVIDIA ShadowPlayでゲームプレイを撮影したもの)をTMPGEncでフルHDに縮小しながら、2パスVBRでMP4形式に書き出していく。エンコーダーはx264及びx265を利用したが、インテル製CPUのみグラフィックスボードを取り外し、CPU内蔵GPUのIntel QSV(Intel Media SDK Hardware)を利用した処理時間も比較した。ビットレートはTMPGEncの推奨値をそのまま利用している。

「TMPGEnc Video Mastering Works 6」による動画エンコード時間。

 こちらのテストではCore i7以上のCPUが上位を独占。ただし、Core i9-9900KとCore i7-9700Kで大きな差は出ていない。また、Ryzen 7 2700XはTMPGEncのエンジンとはあまり相性が良くないこと、H.265の処理がMedia Encoder CCと同様に遅いことなどがわかる。

 今度はもう少しライトなクリエイティブ系作業の例として「Lightroom Classic CC」を利用したRAW現像の変換処理を試す。200枚のNEF形式の画像(6000×4000ドット)を読み込ませ、DNG形式に変換する時間と、そのDNGを最高画質のJPEGに書き出す時間をそれぞれ計測した。JPEG書き出し時にはシャープネス処理(スクリーン用、適用量は“標準”)を付与している。

「Lightroom Classic CC」による200枚のRAW画像処理時間。

 まずNEF→DNG変換はCPUへの負荷が軽微であるため、コア数よりもクロックのほうがテスト結果に響くようだが、各CPUでそれほど差がない。Ryzen 7 2700Xが最も遅いのはシングルスレッド性能の遅さに起因すると言ってよいだろう。

 そして、DNG→JPEG変換は、変換処理よりもシャープネス処理のほうが重い。全コアほぼ均等に負荷をかけるためコア数の多いCPUが有利だが、Core i9-9900KとCore i7-9700Kはほぼ同着。その下に物理6コアモデルが団子になって続いている。AMDの物理8コアCPUであるRyzen 7 2700XはLightroomの処理に関しては物理6コアの第9世代Core i5並みの性能しか出せていない点に注目。コア数とクロック、コアのIPCの3つが高くないと上位へ食い込むことは難しいだろう。

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