Windows Embedded OSからWindows 10 IoT Enterpriseへ
シンクライアントの導入ではカスタマイズ性も重要だ。要件上、機能の大半を止める必要があり、一般に販売されているマシンでは対応できない。そのために5年前は工場を動かして専用に生産してもらう必要があった。さらにもうひとつの問題は追加導入だ。仮になんとか対応してもらえても、最初に導入したマシンと同じスペックで調達できないという悩みがある。ハードウェアのコストだけを考えれば、海外メーカーが有利だが、こうした融通に合わせてもらえる柔軟性が乏しいため、要求を通しにくい面があるという。
早川 「選定機種は複数メーカーありますが、上述したように約1200名いる社員に加え、800名のパートナーも利用されます。これをほぼ一気に刷新するかたちとなりましたが、その理由は環境を統一するためです。さらに今後の追加導入にも対応していただけるよう約束してもらっています。われわれは5年サイクルで機器を入れ替えていくため、その間も対応してもらえれば心強いですね」
JSOLとVAIOとのやりとりは、3ヵ月ほどと短期間だった。
今回はVAIOとしてもかなりの数の引き渡しになった。JSOLの要求をすべて満たしつつ、スケジュールを完遂するのは高いハードルがあったようだ。
大きな課題としては、Windows Embedded版を使っていたものを、Windows 10 IoT Enterprise版に切り替えるという点があった。実はEmbedded版とIoT版には違いも多く、従来のノウハウがそのまま適用できない面もあったという。
早川 「先のことを考えて、IoT版にしました。OSがWindows 10で大きく変わるので、対外的にも最新のIoT版でやったほうがいいと思い今回導入しています」
VDIシステムの刷新ではサーバー側の対応が主となるため、ハードウェアの導入に関してはあまり手間をかけられない。VAIOとしては、IoT版はWindows 10 Enterprise版と共通する部分が多く、扱いには慣れていた。ここを任せられる専門家がいるというのは導入する側としては心強い。検証版を作成してフィードバックをもらうというやり取りが続いたが、スケジュール通り作業を終えることができた。
こういった調整に対して柔軟な対応が得られる点も、国内ベンダーを選ぶ利点と言えそうだ。
社員の満足度はお金では買えない
JSOLでは今回同じポリシーを適用したマシンをVAIOともう1社導入している。事前に社員へ向け展示会を行ない、反応を調査したそうだ。
「VAIO S13はフルHD解像度、もう一方のマシンはHD解像度だったのですが、若い人はVAIOの人気が高かったですね。ただ、ベテラン世代でもこだわり派はVAIOを選んでいます。やはりスタイリッシュさやブランド力がVAIOには備わっているからだと思います」(早川氏)。
最後にシンクライアントのマシンを導入するにあたってのポイントを伺った。
早川 「シンクライアントだと、マシンの性能はサーバー側の話になります。クライアントのマシン選びのポイントとしては、やはりキーボードや堅牢性、インターフェースといった、モノとしての良さが重要です。スタイリッシュにしすぎたためにアダプターを介さなければインターフェースが使えないというのもダメ。オールインワンになった製品がビジネスのシーンでは大切です。
ただ、最終的には、ものに対する愛着に行きつくのではないでしょうか。私は、VAIOがソニー時代からものづくりがうまいと思っていて、『好き』と言えるような製品を作ってきたと思います。会社の情報システム部門が言うようなことではないかもしれませんが、マシンに対してそういう気持ちがないとダメだと思います。マシン選びの優先順位で『コストです』と言うのは、悲しいですよね。
正直コストは掛かっています。でも、それを解消するぐらいに生産性が上がればいいと思っています。社員のモチベーションや満足度は、お金を出しても買えません。マシンの選定は小さなことかも知れませんが、社員にいいなと思ってもらえるような環境を提供することは、会社に対する満足度を上げることにも繋がるのではないでしょうか」。
JSOLではいま、すべての社員にVAIOとiPhoneが支給される。それは、小さな満足かもしれないが、毎日使うものだから、愛着が生まれる製品を使えることは重要なこと。その製品のことを好きにならなかったら、使わされる道具になってしまう。それでは、仕事をしても満足度が低くなってしまうだろう。働き方改革を進める上でマシン選びも重要な要素なのだ。
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