7月31日予約開始! 鹿野司氏、西田宗千佳氏がQDレーザのRETISSA Displayを語る
気分はもうボトムズ! 2018年、網膜投影型がVRブームを革命する
これはまず「ヤバい奴ら」に響く!
西田 僕はVRをはじめ、さまざまなディスプレーを取材・体験しています。現在のVR界隈で起きていることって、ある意味、チープ革命なんですよね。1990年代は機材が1個1万ドルで100人の研究者しか触れなかった。ところがスマホのパーツをうまく使うことによって1個300ドルにまで価格が下がった結果、100万人の技術者が試せるようになったので、一気に色々なことができるようになったと。
ただ、ディスプレーとして今のVRやARで使っている「目の前にスクリーンを持ってくる方式」が理想的かというと、たぶん違うなという気がしていて。どうしても、スクリーンにピントを合わせるのか、それとも実景にピントを合わせるのかという問題が出てしまって、どこまでいっても不自然感がぬぐえません。
仮に、無限に必ずピントが合っている映像が目の中に自然に入ってくる状態になるとすれば、それはVRはともかく、ARにとっては極めて大きな変化になり得るでしょう。ただ、フォーカスが高くて見やすいディスプレーは、掛けるときのセンシティビティーが問題になります。つまり、ぴっちりかけなくちゃならない。
そこをカバーできるならば、自分の視野の中に映像を入れるという意味においてはかなり理想的なディスプレーの1つになると思います。そういった研究はいくつもありますし、僕もデモを見てはいるのですが、相当難しいらしく、デモで終わっているものが多いのです。
翻ってRETISSA Displayは、技術者が「何かやってみたい!」と思ったら1本買ってテストできることがポイントだと思います。理想に1歩でも2歩でも近づいたディスプレーが手に届くところにあるというのは、業界全体の流れからすると大きいなと。
しかも1万ドルではなく約60万円で手に入る。口が裂けてもチープ革命とは言えないけれど、その代わり「網膜投影」という言葉の響きに惹かれてポチる人たちは案外少なくないのでは。趣味で数十万円の暗視ゴーグルを輸入する愛好家も存在するほどで。
鹿野 暗視ゴーグルには「暗いところが見える」という、誰でもわかる素晴らしい性能がある。RETISSA Displayも「これを見ることができる!」と言える何かがあると良いよね。たとえば僕の場合、左下の視野が欠けているので、文字を右上のほうに出せたりすると都合が良い……そういう細かい調整ってできますか?
手嶋 技術的には可能です。そういったことも想定して我々は研究を進めています。
鹿野 網膜を損傷している人は全体が見えないわけではなく、まだらになっていることが多いので、そこをうまく避けて出せると、見えなかったものが見えるようになるはずです。解決策はやはりアプリケーションでしょうか?
手嶋 そうですね。映し出す映像をデジタル処理することになります。それが第2世代ぐらいのアプローチなのかなと。
西田 (RETISSA Displayを掛けながら)あっ! 文字の間が抜けているってあまりない体験ですね。文字だけが純粋に浮かび上がるって、CGやアニメではおなじみのシーンですが、じつはスマートグラスだとなかなか実装できないんですよ。
2018年にこれを買って何をするか。いま文字を見て驚きましたが、見たことがない「絵」が見えるぜっていうのは、じつは非常に大きなポイントだと思っているんです。
VRを買っても一瞬面白いだけなんです。たとえば『(これを買うと)Xウィングに乗れるのか。すごい!』と思って買って被るんだけど、だいたい15分で『わかった!』ってなる。エンタメって15分に5万払う世界もあって、そこには強い満足感もある。でも皆15分に5万払うかと言えばそうでもない。
一方で、エンジニアに近い人だと『SF作品でよく見るような空中に図像が浮かぶアレをやってみたい』と思ったときに、それを実現する機械が1000万だと断念せざるを得ませんが、RETISSA Displayはそうじゃない。
……まあ、それでも相当キマってるというか、ヤバいところに足を突っ込んでいるような人たちが購入対象者だとは思いますが、わりとそういう人はいなくはない。たとえばホロレンズだって40万円するわけですから。でも、見たことがないものに対する興味って、そういうヤバい人には響くと思うんです。
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