週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

来るべきシンギュラリティに向きあうための「エクスポネンシャル思考」

キャリア生存戦略に変化 猛スピードだが、失敗も許される世界がやってくる

2018年05月30日 07時00分更新

『自己発展的につながる人脈の勝負になる』#2

 私自身は経理財務を中心に業務を行なってきましたが、いくつかの企業を見ていて気づいたことがあります。それは財務経理の事務の8~9割はどこの会社に行っても同じだということ。それに業務という名の無駄な時間も多い。それはCFO(最高財務責任者)や財務経理部長クラスであっても同じです(だから即戦力として転職できるのですね)。つまり、CFOの能力の差別化は残りのせいぜい1~2割の仕事の結果で決まっているのです。

 であれば、その2割だけを集めてきてひとつのポジションを作ることができれば、それこそが才能を最大限活用することであると考えるべきでしょう。いろいろなところから2割ずつ集めれば最大5倍の仕事が掛け持ちできる。いや、テクノロジーの世界ではコミュニケーションも同時並行的に進むので、今の10倍の仕事ができるのです。それが優秀な能力という社会リソースを効率的に配分する「才能のシェアリング・エコノミー」です。どこに行っても同じである8割の業務には本来価値をつけるべきではありません。

 たとえば、人事異動で簡単に引き継ぎができる業務があるとすれば、それらはこれからの時代は仕事にはなりえません。外注され、オフショアされ、いずれは人工知能によって置き換えられていくことになるでしょう。

 キャリアにおいても、硬直化した組織の壁などの既成概念にとらわれず、リソースの効率化を図るシェアリング・エブリシングの考え方が必要です。働き方改革による副業の解禁などの本来の趣旨はこちらにあるべきだと私は考えます。

 さらに、すべてのビジネスパーソンのキャリアにおいても、本書の前段で説明しているエクスポネンシャル・テクノロジーの俯瞰力、これが必須の能力となります。

 ひとつの専門領域に特化すると、突然現れた隣のテクノロジーによって破壊されることもあります。VRによってモビリティが消滅するかもしれません。テクノロジーの壁も簡単に突破されるかもしれませんし、業界の壁も、国家の壁も同様です。

 身近なところでは、アマゾンがホールフーズ・マーケットを買収し、生鮮食料品分野にも殴り込みをかけてきました。半導体技術である人工光合成ですが、まったく異分野である農業の在り方や発電政策を大きく変える力をもっています。

 エクスポネンシャルに加速するこの時代は変化し続けることとさまざまなものを横断的に見て積み重ね、統合させて事業化していく力、いわばアグリゲーション力がキャリアの進展にはひとつのカギになるのではないでしょうか。アグリゲーションは突き詰めると、自分を中心としたプラットフォームを作り出すともいえるでしょう。

 実は、トップコンサルタントの柴沼俊一氏らが数年前からアグリゲーターという概念を提唱されています。柴沼氏らはその著書『アグリゲーター』(日経BP社)で、「短期間に社内外の多様な能力を集め、掛け合わせて、徹底的に差別化した商品・サービスを市場に負けないスピードでつくりあげるやり方」と定義しており、会社や組織の枠にとらわれない新しい働き方とされています。

 このようなアグリゲーターは2社以上に帰属することが普通なのです。むしろ、単独の組織に忠誠を尽くす従来の考え方ではなく、複数の組織に帰属することがより多くの恩恵を帰属する組織にもたらすのです。

 もし私から皆さんに伝えるとすると、これから先、この新しい働き方が広がるということ。もし10年前の社会通念を押し付けようとする先輩が会社にいれば、その人の言うことはもはや意味をなさないし、固定観念は通用しない。行動する人にはかつてないチャンスが訪れるということです。さあ、行動しよう!


■Amazon.co.jpで購入
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう