世の中は、指数関数的速度で日々変化している。2045年に迎えるとされているシンギュラリティ(技術的特異点)に向けて、我々はどのように生きればいいのか。
米シリコンバレーに拠点を置く「シンギュラリティ大学」。そのエグゼクティブプログラムを修了した齋藤和紀氏が「エクスポネンシャル思考」を上梓した。AI時代における最前線の「知」、そして必須スキルとは一体なんなのか? 今回、本書の中から「第5章 「個」としてどう人生を満たしていくか」の一部分を抜粋してご紹介。テクノロジーが変える仕事のカタチと、それをうまく乗りこなしていく生き方を学びたい方はぜひチェックしてほしい。
●目次
『自己発展的につながる人脈の勝負になる』#1
『自己発展的につながる人脈の勝負になる』#2
エクスポネンシャル思考
著者 齋藤和紀
定価 1728円(本体1600円+税)
発売日:2018年5月23日
『自己発展的につながる人脈の勝負になる』#1
これからを生きる私たちのキャリアについてもエクスポネンシャルの波は容赦なく襲い掛かっています。
20世紀のキャリアは日本企業では終身雇用が前提でしたし、文字通りほぼ直線的な、ある程度想像できるキャリアの将来像というものがありました。自分が何歳くらいでどの役職になって、定年時にはこのくらい退職金がもらえるなど、大体予想がつきました。しかし、昨今はキャリアの先に何があるのかを見通すのが非常に難しくなっています。とくに第2次ベビーブーマーや団塊ジュニアといわれる私と同世代の人間は、その狭間にいてかなりの不安をもって日々過ごしているのです。
今後は、テクノロジーによる個のエンパワーメントがさらに加速すると思われます。副業をOKとするような働き方改革も進んでいますが、どちらが正でどちらが副という考え方じたいが時代遅れになるでしょう。
会社という組織に縛られるのではなく、自分自身の存在が筋の通った存在となり、会社のなかのタイトルやポジションにとらわれずに個人の力で勝負することが増えてくると思われます。そして、その変化はエクスポネンシャルに加速するでしょう。
私は日系、外資系、公務員を経て、早々にサラリーマンキャリアから逸脱してしまったのですが、会社組織を離れてみるといろいろ気づくことがあります。
まず、テクノロジーへの適応は大きな組織より外のほうがはるかに速いということです。大企業と比べてもベンチャーのほうがはるかに速い。ベンチャー企業やフリーランスでいると、大企業よりもはるかに多くの最先端のテクノロジーやツールに触れることができます。とくにコミュニケーションツールに関しては顕著です。
それは当然といえば当然でしょう。ベンチャー企業にとってはスピードが命です。そして、守るべきものも多くはありません。最先端のテクノロジーを利用してスピードを上げ、コストを下げていくことがベンチャーの強みの源泉だともいえます。
たとえば、大企業では就業時間中にFacebookやTwitterといったSNSを利用することははばかられるかもしれません。しかも、顧客にFacebook Messengerで連絡をとるなんてことはビジネスの常識からすればあり得ないことかもしれません。しかし、実際にビジネスで利用するとこれらはなかなか有効なツールです。
私も業務のかなりの部分をSNSでのコミュニケーションが占めていることが多くあります。社内外問わずすぐに連絡がとれるし、資料も共有できる。複数でグループも無限に作れる。どんなデバイスでも同期されているし、必要であればそのままビデオ会話をすることもできます。同様に現状ではSlackは必須のツールですし、Dropboxといったストレージサービスも必須のツールです。私のスマートフォンには、コミュニケーションツールだけでも、10種類くらい入っていて、ほぼ24時間、世界中とやり取りをしています。
「アラブの春」と総称された一連のアラブ諸国の民主化運動は、FacebookなどのSNSの力によるところが大きかったといわれています。国家の体制まで影響することを鑑みれば、ソーシャルテクノロジーの利用がビジネスに破壊的な影響力をもっているのがわかるでしょう。
また、大きな組織にいると、自分の能力がすごいのか、それとも組織がすごいのかわからなくなることでしょう。とくにサラリーマンにあっては、たいていはその組織の力がすごいのであって、そのなかの個人の能力は微々たるものです。
しかし、時代とともにパワーの所在が大きく変わっていっています。外に出てみると、大きな企業のなかで必要とされた能力、たとえば部署間の調整能力や効率的に処理する能力は外に出てみるとほとんど役に立たないことがわかります。
とくに大きな問題となるのは物事を決断していくための意思決定力です。エクスポネンシャルに進んでいる世界はスピードが非常に速い、ですが、失敗も許される世界です。失敗しないと次に進まない。高速で実験をして失敗を繰り返して修正を続けることがそこで生き残る生存戦略なのですが、大企業においては失敗をしないことが秩序を守るために必要であり、ポリティクスに長たけることがそのなかで生き残る生存戦略なのですから、根本的に思考回路が違うわけです。
これからの時代はキャリアにおいても高速で実験しつつ、なるべく早く失敗をして修正を繰り返していくことが必要です。
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