2018年4月19日、AMDは開発コードネーム“Pinnacle Ridge”の名で知られていた新CPU「Ryzen 2000」シリーズの販売を開始した。2017年に自作PC業界に大激震をもたらしたRyzen 1000シリーズの後継というべき製品で、14nmプロセスのZenを改良し、12nmLP(LP:Leading Performanceの略)プロセスにシュリンクした「Zen+」を採用している。先ごろ発売されたVega(GPU)入りのAPU「Ryzen G」シリーズも2000番台の番号が振られているが、こちらのCPU部は14nm+プロセスである。そこで本稿では、新しいZen+ベースのCPUを“第2世代Ryzen”と呼ぶことにしたい。
今回発売された第2世代Ryzenは8コア16スレッドの「Ryzen 7 2700X」「同2700」と6コア12スレッドの「Ryzen 5 2600X」「同2600」の4モデル。価格は下表の通り、ライバルであるCoffee Lake-Sベースのインテル製CPUを強く意識した設定となっている。特に最上位のRyzen 7 2700XはCore i7-8700Kの北米価格より1ドル安く設定されており、第1世代Ryzenで成功を確信したAMDが、第2世代でライバルを追い落としにきたという強い意志を感じさせるものになっている。諸般の事情で国内価格はCore i7-8700Kよりわずかに高い値段設定となったが、とはいえ今回はRyzen 7 2700Xも含め、全モデルにCPUクーラーが付属する。K付きCore i5/i7はCPUクーラー別売であることを考えると、特別割高であるとは言えない価格設定だ。むしろThreadripperやRyzen 1000シリーズの状態を考えると、かなり頑張った結果といえるだろう。
今回編集部では、第2世代Ryzen評価キットに含まれていたRyzen 7 2700XおよびRyzen 5 2600Xに加え、独自ルートで2700および2600の無印モデルも入手。第2世代Ryzenがどの程度のポテンシャルを持っているのか、さまざまなベンチマークを通じて検証していきたい。
価格以上のインパクトがある第2世代Ryzen
最初に第2世代Ryzenのスペックをチェックしてみよう。12nmLPプロセスに移行したことで、前世代の弱点のひとつであった動作クロックは引き上げられたが、ブースト時最大クロックの刻みが500MHzになっている。
今回はプロセスシュリンクとクロック向上がメインなのか、CPUの基本設計は変わっていない。ソケット形状もAM4を継承しており、AGESA 1000a以降のBIOSを搭載した300シリーズマザー、あるいは新しいZ470マザーで運用できる。全モデル倍率ロックフリーである点も継承済みだ
ちょっと気になるのは、前世代のナンバリングでは「Ryzen 7 1800X」が最上位だったにも関わらず、今回の最上位が「Ryzen 7 2700X」となった理由だ。AMDの担当者に訊ねたところ「インテルの最上位で使用される“700”のナンバーに合わせた」という見解が得られたが、個人的な予想としては、インテルから今年登場することがほぼ確定路線の8コア版Coffee Lake-Sが実際にリリースされた場合、対抗馬として高性能な800ナンバーのモデルが登場する可能性はあると考えている。
さて、第2世代Ryzenの技術的な部分については、ひとまずポイントとなるところだけをまとめて解説しよう。
ポイント1:メモリーまわりの改善
第2世代Ryzenではメモリーまわりに大きな改善が加えられた。先代Ryzenでは最高DDR4-2666まで対応であったものが、Ryzen Gと同じDDR4-2933に引き上げられている。
ただし、無条件で最大クロックで動かないのはこれまで通りで、DDR4-2933動作には「シングルランクのモジュール2枚」かつ「マザーボードの基板が6層(以上)」が条件となる。とはいえ検証してみたところ、良質なOC版メモリーモジュールとマザーボードを使えば、4枚挿しでもDDR4-2933動作は問題なく達成できた。
価格優先のマザーボードでは4層基板の製品が主流なので、フルスペックでの動作を希望するならしっかり選ぶ必要がある。ハイエンド志向の人には別に気にするようなことでもない要件だが、低予算で組みたい場合は、メモリーの動作クロックに制約がかかる可能性があることは頭に入れておきたい。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう