Radeon RX Vega M GraphicsはゲーミングノートPC業界に革新をもたらすのか?
Radeon入ってる第8世代Core&NUCを正式発表、Max-QのGTX 1060を超える
どもどもジサトライッペイです。
IntelがノートPC向けの第8世代Coreプロセッサーの新シリーズ「第8世代Coreプロセッサー with Radeon RX Vega M Graphics」(以下、第8世代Core with Radeon)を発表しました。このCPUは昨年11月にアナウンスしたゲーミングノートPC向け第8世代CoreのHプロセッサーに該当するもので、RadeonベースのセミカスタムGPUを搭載することで大きな話題を呼びました。今回、正式なシリーズ名や型番、動作クロックなどを含めた詳細が発表され、米国ラスベガスで開催する「CES 2018」(米国時間:1/9~12)でも採用PCが展示される予定です。
CPU内蔵GPUとディスクリートGPUを1パッケージに搭載
今回発表した第8世代Core with Radeonは全部で5モデル。上から順にCore i7-8809G、Core i7-8709G、Core i7-8706G、Core i7-8705G、Core i5-8305Gというラインアップになります。CPUのコア/スレッド数はいずれも先行投入している第8世代CoreのUプロセッサー(開発コードネーム:Kaby Lake Refresh)と同じ数で、Core i7もCore i5も4コア/8スレッド。いずれもCPUコア部のオーバークロック(OC)に対応しています。もちろん、OCは保証なしの自己責任になります。
もともと第8世代Core with Radeonは「Kaby Lake-G」という開発コードネームでウワサされていたことから考えても、第8世代Coreでもデスクトップ向けのCoffee Lake(14nm++)ではなく、ノートPC向けのKaby Lake Refresh(14nm+)がベースになっていると思われます。
また、いずれもVRAMとして超高速アクセスで3D描画のボトルネックになりづらい「HBM2」を4GBぶん搭載。これまでのGPU内蔵CPUを大きく超える性能が最大のウリです。
第8世代Core with Radeonの特徴は、内蔵GPUが「2つ」あることです。まずはCPUと一緒にダイに統合された「Intel HD Graphics 630」。Kaby Lake RefreshではIntel UHD Graphics 620、Coffee LakeでもIntel UHD Graphics 630でしたが、ここにきて「UHD」ではなく「HD」になっているところが興味深いですね。
単なる資料の表記ミスとも考えられますが、これが正しいGPUの型番となると、第7世代Coreプロセッサー(開発コードネーム:Kaby Lake)まで先祖返りしていることになります。しかし、そもそもUHDからHDへの進化は一部の4Kストリーミングサービスの追加対応やWindows Mixed Realityに対するサポートにとどまっているので、そこまで気にしなくていいかもしれません。もちろん、高速エンコード機能「Quick Sync Video」(以下、QSV)にも対応しています。
もうひとつは今回の主役と言っても過言ではない「Radeon RX Vega M Graphics」です。上位の2モデルにはCompute Unitsが24基でSP数1536基の「Radeon RX Vega M GH Graphics」(以下、Vega M GH)、下位の3モデルにはCompute Unitsが20基でSP数1280基の「Radeon RX Vega M GL Graphics」(以下、Vega M GL)を採用しています。その名の通り、Vegaアーキテクチャーをベースにした「Vega M」を採用していますが、その最大の特徴はやはりHBM2をVRAMとして使えるところです。
そもそもこれまでのGPU内蔵CPUはVRAMがボトルネックになって、なかなか性能を伸ばせてきませんでした。一般的にGPU内蔵CPUの場合、メインメモリーからVRAM用の容量を間借りするので、専用のGDDRメモリーよりも非常に遅かったのです。Irisブランドでは専用のeDRAMを設け、ボトルネックを解消しようとしましたが、これも抜本的な解決にはならず、マザーボードに別途スペースを設けて専用VRAMと共に実装するディスクリートGPU並みの性能には遠く及ぶものではありませんでした。
そこでそのVRAMのボトルネックを解消するために登場したのがHBM2なのですが、実装コストが高いのが玉に瑕で、早期からHBM2を推していたAMDも二の足を踏んでいる状態でした。そこを解決したのがIntelの「EMIB」(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)技術です。この技術で現実的な実装コストで量産できるようになったため、今回の第8世代Core with Radeonが登場したのです。
基板スペースを1900平方mmぶん削減、電力管理も効率的に
第8世代Core with Radeonの恩恵はその基板設計の自由度にあります。1チップパッケージにすることで、従来のGDDR5メモリーとディスクリートGPUを搭載するゲーミングノートPCの基板から実装面積が1900平方mmも削減。そのため、PCメーカーは薄型軽量なゲーミングノートPCが作りやすくなります。
また、CPUとディスクリートGPUは負荷や温度などさまざまなシステム情報から電力を細かく調節する「Intel Dynamic Tunig」で、従来の単純な電力割り振りではなく、より効率的にふるまえるようにしたと言います。
「Intel Dynamic Tuning」はオン/オフできるようで、オンにすると45W(TDPを含まず)のシステムでもワットパフォーマンスは62.5Wのシステムよりも効率が良くなるとIntelは主張しています。同じ性能ならソフトウェアとフレームワークのアプローチだけで最大18%も省電力化できるとのこと。
15.6インチ液晶搭載ゲーミングノートPCで比べると、3年前のPCでは厚さ33mm、6ポンド(=約2.74kg)、バッテリー駆動時間は4.7時間ぐらいだったものが、第8世代Core with Radeonを搭載したモデルでは厚さ17mm、4.6ポンド(約2.11kg)、バッテリー駆動時間は9.3時間まで長くなるといいます。
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