よりワイドレンジ化を実現し、ハイレゾ音源を豊かに響かせる「EPH-200」
―― さて、最後は有線タイプのEPH-200です。EPH-100の上級モデルということで、デザイン的にも共通したものとなっています。特徴的な2段構造のイヤーピースも踏襲していますね。
小林 シリーズとしてのつながりを意識し、2つのモデルを並べても違和感のないものにしています。音質的にも、EPH-100の良いところを継承しつつ、ハイレゾ対応ということでワイドレンジ化を実現しました。
―― 小型のドライバーをハウジングの先端に装着する構造はEPH-100同様ですね。
小林 基本構造は踏襲していますが、ワイドレンジ化のために、ハウジングの後ろ側の構造はいくつかの試作を経ました。材質はアルミニウムとニッケルメッキを施した真鍮を組み合わせたものとし、より剛性を高めています。
―― 試聴したところ、EPH-100と比べて、よりワイドレンジ化されたと感じますが、最近の流行である解像感の高い、やや硬い感触の音ではなく、聴きやすい自然な音ですね。
小林 長く使える、飽きのこない音を意識しました。長時間聴いていても耳が痛くなったり、聴き疲れしないことが重要です。ですから、ニュートラルな音質で中高域のみずみずしさや低音のしっかりとしたエネルギー感がよく伝わることを目指しています。
―― そして、ケーブル部分はMMCX端子を採用して着脱が可能になりました。これは、愛好家にとっては楽しみが増えた部分だと思います。
大町 万一の断線などでも交換して使い続けることができます。接続端子部分は斜めにカットしたような形状で、ケーブルが自然に流れるようになっています。この斜めカットの向きは装着時に90度ごとに変更できるようになっているので、一般的な装着方法や耳にケーブルを沿わせる方法など、代表的な装着方法いずれにおいても、ケーブルが邪魔にならない流れ方を実現できるというわけです。
―― 試してみると、確かにケーブルが邪魔になる感じが少ないですね。このあたりの工夫は他ではあまりなく、非常に使いやすいと感じました。また、タッチノイズ低減や絡みにくさに貢献するケーブルのセレーション加工など、イヤホン本来の使い勝手向上が顕著です。
小林 ケーブルのタッチノイズは案外耳障りになるので、ここはしっかり対策したいと思っていました。セレーション加工にしたことでタッチノイズも低減できましたし、ケーブルも絡みにくくなりました。
また、ケーブルを束ねるときに便利なケーブルホルダーもEPH-100から踏襲しています。接続端子部分とイヤホンのハウジングを固定できるので、束ねたときに絡まりにくいのです。これはユーザーの方々からも好評な部分です。
―― 音質はもちろんですが、使いやすさへのこだわりもじつに充実しています。案外、軽視されがちなリモコンマイクの形状もボタンの押しやすさを考慮して、複数の試作をしていることにも驚きました。長く使うほどに良さが感じられるものに仕上がっていると思います。ここは大きな魅力だと思います。本日はありがとうございました。
まとめ:派手さはないが質の高い音の良さ
あなたの「お気に入りの1台」に加わるかも
インタビュー中、小林氏の印象的な言葉に、「イヤホンやヘッドホンは複数のモデルを使い分けできることが魅力。最高のものを1つだけ使うスタイルもあるが、好みや聴く音楽に合わせて選ぶのも楽しい。その1つとしてヤマハのイヤホンやヘッドホンが選ばれるとうれしい」というものがあった。
オーディオ機器に限らないが、自分の持っているものが最高だと思いたいし、ついつい順位を決めてしまいがちだが、スピーカーと違って複数を気軽に使い分けできるのはヘッドホンやイヤホンならではの特徴だ。
最近の人気である高解像度な音や重低音を効かせたパワフルな音と比べると、ヤマハの音は上質だがインパクトに欠ける面もある。だが、しばらく使っていると、装着感の良さも含めて耳になじみ、いつの間にか定番になっている。豪華なディナーではなく、毎日食べても飽きない家庭料理というイメージだ。こんなモデルが自分のイヤホン/ヘッドホンのラインナップに加わると、音楽の楽しみ方の幅が広がると思う。
店頭などで試聴すると、インパクトの強いモデルばかりが印象に残りがちだが、ヤマハの新モデルを聞くときは、心地よさや優しい音の良さに注意を傾けて、少しだけ時間をかけて聴いてみてほしい。きっと、作り手の細やかな心遣いや開発時の入念な検討がもたらした目立たない部分の素晴らしさに気付くはずだ。
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