「HADO」は体を動かして技を発動、限られたフィールド内で味方と連携して競う「テクノスポーツ」だ。プレイヤーはスマホを入れたヘッドセットを被り、利き腕に位置検知などの役割をする端末を装着する。ヘッドセット内には、スマホのアウトカメラで捉えた映像が表示され、そこにエフェクトを加え、ゲームを演出する。
HADO最新プロモーション映像
技はアームセンサーを取り付けた腕の動作によって溜まるゲージ分、放つことができる。今回、そのHADOの開発経緯や開発環境などについてお聞きするため、株式会社meleapさんにお伺いした。同社はHADOの開発、配信用にマウスコンピューターさんのPCを採用しており、オフィスではゲーミングブランドG-Tuneの「NEXTGEAR-NOTE i4400シリーズ」や、クリエイティブ向けブランドDAIVの「DAIV-NG4500シリーズ」が使われていた。
「DAIV-NG4500M1-SH2」の主なスペック | |
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液晶ディスプレー | 14インチ(1920×1080ドット、ノングレア) |
CPU | インテル Core i7-7700HQ (4コア/8スレッド、2.8~3.8GHz) |
グラフィックス | GeForce GTX 1050(2GB) |
メモリー | 16GB(PC4-19200) |
ストレージ | 256GB SSD(M.2 SATA3)、1TB HDD |
通信機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac(最大433Mbps)、Bluetooth V4.2+LE準拠 |
インターフェース | HDMI出力、ミニDisplayPort出力、USB3.1 Type-C、USB3.0×3、マルチカードリーダー、ギガビットLANほか |
サイズ/重量 | 349(W)×247(D)×28.8(H)mm/約2.2kg |
OS | Windows 10 Home (64ビット) |
シンプルな操作で白熱バトルが楽しめる!
以前、AR/VR関連のイベントで体験したことはあったが、HADOは日々進化しているとのことなので、まずお話を聞く前に最新版を体験させてもらった。
まず、始めに体験したのは、基本となるプレイヤー同士の対戦。本来は最大3対3で対戦するそうだが、今回は人数が足りないので1対1で対戦した。対戦相手は、開発環境としてマウスコンピューターさんのPCが採用されているということで、取材に同行されていたマウスコンピューターの方々にお願いした。
対人戦 1戦目
対人戦 2戦目
HADOは、エナジーボールとバリアを駆使し、先に相手プレイヤーのライフを削り切った方が勝利となる。エナジーボールは、端末を付けた方の腕を上げ、溜めたゲージ分だけ攻撃が可能。バリアーは、腕を下げてゲージを溜め、溜まりきったら腕を振り上げると発動する。
試合前には腕に付けた端末で、エナジーボールの速度、サイズ、チャージスピード、バリアの強度を、初期ポイントから割り振ることができる。このスキル設定も戦術によって、大きく変わるため、高いゲーム性を実現している。今回は1対1だったが、これが3対3の場合は、飛び交うエナジーボールの数も増える。チャージスピードを速めて、全員でゲーム序盤からエナジーボールを撃ちまくったり、持久力に自信があるなら、バリアの強度を高めて長期戦に持ち込むといったプレイもありだろう。
エナジーボールは、バリアで防ぐほか、体を動かしてかわす必要がある。体に物理的な衝撃がないため、当たったかどうかがわかり⾟いのがやや難点だが、将来的には、身体への衝撃フィードバックをプレイ体験として組み込みたいとのことだ。エナジーボールはよけ続ける必要があるのだが、とても体力がいる。今回のように1対1ではなく、3対3の場合はもっと激しくエナジーボールを避け続ける必要があるので、相手の体力を削る、自分の体力配分なども考える必要もありそうだ。
とにかく、とても体力を必要とするし、良い運動にもなる。また、現状とても戦う方法がシンプルで、1度操作方法を覚えれば、誰でも簡単に技を出せるので、まともにプレイするのに技術を有するスポーツよりも、プレイし始め易い印象だ。まずは「おもしろそうだ」と思ったらプレイしてみるのもいいだろう。
リアルマリオカートっぽくておもしろい
「Microsoft HoloLens」を被り、簡易的なゴーカートに乗って楽し「HADOカート」も体験。Microsoft HoloLensは、シースルー型のMR(複合現実)ヘッドマウントディスプレー(HMD)で、現実世界をスキャンして3Dデーター化することで、ARマーカーなしにCGなどを、現実の映像に合成することができる。
ディスプレー部分は透けているため、一般的な眼鏡と同じように、現実の映像を見ることができ、そこにコインや爆弾が見えている。コインは銅、銀、金と3種類あり、ポイントが異なる。そのコインをカートを動かしてマリオカートのように取りに行くのだが、ときどき爆弾も一緒に落ちていて、その爆弾に当たってしまうと、今まで入手したコインのいくつかが飛び出て、なくなってしまう。
つまりは、爆弾に注意しながら、コインをより多く取る必要があるのだが、HoloLensは結構視野角が狭く、合成されたCGが見える範囲はあまり広くない。感覚的には7インチくらいのタブレットくらいしか表示範囲がなく、ちょっと首を動かしたら今まで見えていなかった爆弾が目の前に……といったことも多かった。この辺りは、ハードウェアの制限といったところなので、第2世代のHololensなどに期待したいといったところのようだ。
HADOカート対戦
HADOは、ほかにも他社IPとのコラボによるモンスター討伐ゲームなど、ARを使った基本システムを基に、いろんな展開を行なっている。現実の映像の上にCGなどを重ねることで、広がるアイディアはとても遊び心があり、おもしろい。では、実際にこのようなコンテンツをどういったきっかけで、どういった機材で開発しているのか、体験後にお話しを伺った。
HADOは「やりたい」から始まった!
編集部 HADOの開発のきっかけについて教えて頂けますか?
新木 我々の会社は特殊で、会社設立時に何をするかが具体的に決まっていなかったんです。そこで、やりたいことをリスト化しました。「空を飛びたい」、「水中で息をしたい」、「瞬間移動がしたい」など、いろいろある意見の中に、誰もが子供のころにやりたかった「かめはめ波」を撃ちたいというのがあり、昨今のIT技術の発達で一番現実的だなと思ったのが、「かめはめ波」を撃ちたいというものだったので、そこから半年から9ヵ月くらい集中して開発を続け「HADO」が生まれました。
編集部 今後HADOをどのように発展していきたいと考えていらっしゃいますか?
新木 将来的には世界中どこでも誰でもHADOをプレイできるようにしたいと思っています。現在は、VR/ARコンテンツのハードウェアが導入されているロケーションに置いてもらっている形となっていますが、近い将来GooglePlayだとかAppStoreからダウンロードして楽しめるような形を目指しています。そこに至るために、デバイスの価格をなるべく抑えようと考えています。
編集部 現状の御社コンテンツの導入コストは、どれぐらいになるのでしょうか。
新木 一般的にはあまり知られていませんが、アミューズメント施設やテーマパーク施設の場合、ひとつのアトラクションを導入するのに、数千万円スタートが当たり前なんです。しかし、僕らの場合は150万円くらいに抑えています。使用させて頂いているマウスコンピューターさんのPCのコスパの良さも、その要因のひとつです。
具体的な競合他社というのは現状いないのですが、たとえば「ZERO LATENCY VR」のようなVRアトラクションをつくられている会社とは、ターゲット市場、特に導入対象施設が異なります。彼らは現在、世界2ヵ所で稼働されてますが、僕らは年末までに42ヵ所、国内40%、国外60%の割合で導入を進めさせて貰っています。本当に心苦しいのですが、現状導入のタイミングを待ってもらっている状態です。
編集部 開発する際に最も苦労したところは、どういったところでしょうか。
新木 プレイヤーの位置を正しく認識し、弾が当たったか当たっていないかという衝突判定を複数の人間が自由に動き回れるスペースで実現させるのに苦労しました。最終的な解としては、AR技術のちょっと変わった使い方に落ち着きました。両サイドにある模様の入った布がARマーカーになっていて、プレイヤーが被っているヘッドセット内のスマホで、そのマーカーを捉えるとプレイヤーの位置が分かるという形になっています。
また、現状は技術的に様々な制約があります。例えば、わかりやすさを最優先にするため、現在はシンプルに腕を突き出すと弾がまっすぐ飛んでいきます。そのため、顔を前に向いていたら、腕を右に突き出しても弾はまっすぐ飛んで行きます。しかし、理想で言ったら、腕の動きに合わせていろんな角度に弾が飛んで欲しいですし、腕を思いっきり振りかぶって投げれば剛速球になって欲しいんです。将来的にハードウェアが進化すれば、そういった多彩な動きに対応したいですね。
編集部 その他、こう進化させたいといった希望は何かありますか?
新木 脳波を計測するデバイスを使って、想いの強さを力に変えたりしたいですね。たとえば、集中すると高スキルの魔法のゲージが溜まっていくとか、集中力が上がっていくほど、連続でスキルが決まりやすくなり、攻撃力がどんど上がっていくとか。そういうことができるようになれば、集中して大呪文のような極大スキルの準備をしているメンバーの壁になろうぜとか、チームの連携がより深みを増すと思うんですよね。
編集部 そういうのって、海外のユーザーさんとか好きそうですよね。
新木 実は以前、私がまだHADOをゴリゴリ開発していた際に、いろいろとスキルを試行錯誤していたのですが、そのときつくったのが味方のエネルギーを集めるといった元気玉のようなスキルで、誰かがつくった弾に向かって、他の2人がエネルギーを送りこんでいくと、どんどん弾が大きくなっていき、とんでもなく大きなエナジーボールが撃てるんです。しかし、その間2人のメンバーがほぼ無防備になる弱点もあったり(笑)。それ以外に、霧状の混乱スキルを当てると、やられたプレイヤーは視界が上下左右反転する混乱スキルをつくってみたり。
編集部 滅茶苦茶酔いそうですね。
新木 実際にやってみると、そうしたARならではの特性を活かしたスキルは、滅茶苦茶強いんですよね。あと、凄まじい音がデバイスから鳴り響くとか、プレイヤーが男性か女性かに合わせて変化するお色気の術とか、やれることはいっぱいあります。ただ、スキルが多数あると初めてプレイされるユーザーの方が混乱されるので、今は泣く泣く2つのスキルのみでやっています。
編集部 とても楽しそうですね。ではHADOカートを開発するきっかけもお聞かせ願えますか。
新木 きっかけは、「マリオカートをリアルに楽しんでみたいよね」と言う想いから開発しました。ただ、いざ開発をしようとしたところ、適度な出力で、かつバッテリーの持つカートが見つからなくて苦労しました。先ほど体験して頂いたカートは、アクセルを踏み込むと、驚くほど速く走ることもあったかと思うのですが、現在導入させて貰っている横浜にある「THE 3RD PLANET」さんでは、あえてアクセルにストッパーをかけて安全面に配慮しています。
編集部 そのほか、苦労したことは何かりますか。
新木 カートだと人間が動く範囲よりも、広く動きたくなるのですが、その時にプレイヤーがどこにいるのかを、どうトラッキングするのかというのが悩みとなっています。位置を正確に計測する外部カメラ(モーションキャプチャーを可能とする)は1台100~200万円くらいし、コストが高くなってしまうため、結果として深度センサーを搭載した「HoloLens」で位置を検知することにしました。
織田 カートの値段も結構するので、そこに外部カメラを複数台設置するとなると、かなりコストが上がってしまうんですよね。
編集部 HADOカートは、今後どう進化させたいといったビジョンはありますか。
織田 現状はコインを取ってスコアを増やすだけといった形になっているので、もう少し競技性のあるルールにしたいですね。あとはやっぱりハードウェアの問題で、HoloLensの描画範囲が狭いので、もう少し見える範囲が広くなれば、プレイのし易さも変わると思います。
編集部 HADOカートの開発で、苦労したことは何かありますか。
織田 HoloLensの映像を通して他のユーザーがどう動いているかは、もう1台HoloLensが必要でした。そのため、自分ひとりで完結せず、2人で行なわないといけなかったのが苦労したところですね。あと、HoloLensは自動で常に地形データを生成するのですが、人が目の前を通ったりすると、どんどんその情報がデータに上書きされ、地形データが崩れていってしまうんですよね。
編集部 それは、更新しないようにはできないのですか?
織田 きっとこういった使い方を想定していないんでしょうね。その動作は、開発して初めて分かったことですね。更新しないなどの方法が見当たらなかったので、今は試験的に導入している「THE 3RD PLANET」の現地スタッフさんに、一週間に1回地形データをリセットして貰っています。
編集部 では、開発にマウスコンピューターさんのPCを使ったきっかけを教えて頂けますか。
新木 高品質なBTO PCを提供して頂いているのが、とてもありがたいですよね。また、底面を開けてストレージの交換や、メモリーの増設などが簡単に行なえるのもいいですね。一般的なPCメーカーさんの製品の場合、完成されたひとつの製品になっていて「勝手に開けたら修理を受け付けないよ」みたいな雰囲気を感じるのですが、そういったこともなく、購入前も後も自分好みにカスタマイズできるのがありがたいです。あと実店舗に行くと、たまに驚くような低価格で販売されているのもスゴイと思いますね。
編集部 使用されているのは、ノートPCばかりのようですが、それは何か理由があるのですか。
新木 HADOは現在施設ビジネスとなっているため、場合によっては僕らが導入施設に伺って、その場でアプリの差し替えやパラメーターの調整を行なうことがあります。そのため、取り回しがしやすいように、基本ノートPCを使用しています。
編集部 現状、マウスコンピューターさんのPCは、どれぐらい使われてるのですか?
新津 開発で使わせて頂いているのが約10台くらいで、購入させて頂いていて導入施設で稼働しているPCも合わせれば50~60台くらいと言ったところです。すべて、ノートPCですね。
新木 HADOを動かすローカルサーバーとしても使わせて貰っているのですが、サーバーとして運用する場合、バッテリーを内蔵しているPCでないと困るんです。イベントを行なっている際、ちょっとしたミスでPCのコードが抜けるなどのトラブルが起こることがあるのですが、ノートPCだとバッテリーを内蔵しているため、そうしたトラブルで突然コンテンツが落ちるようなリスクを減らすことができます。このような理由もあって、ノートPCを採用しています。
編集部 なるほど、確かに外出先での運用ではバッテリー内蔵のノートPCの方が汎用性はありますね。開発もノートPCとのことでしたが、HADOを開発するためには、どれぐらいスペックが必要となるのでしょうか。
織田 PCスペックというよりは、動作デバイスの方が重要だったりするんですよね。HADOの場合は現状iPhone 6s、HADOカートの場合はHoloLensですが、そのデバイス用のアプリ開発(Unityを使用)に必要十分なスペックが望ましいといったところです。具体的には、CPUがCore i7-7700HQ、メモリーが16GB、ストレージが256GB SSD、1TB HDD、グラフィックスがGeForce GTX 1050 Tiとなっています。理想ではシステムドライブは、512GBくらいは欲しいですが、完全VR対応ゲームと異なり3Dモデルなど重いデータを必要としないので、あまりストレージ容量は必要ないので、今の構成でも十分対応可能な性能です。
編集部 配信用のPCもマウスコンピューターさんのクリエイター向けPC DAIVのDAIV-NG4500M1-SH2を使われていらっしゃいますが、それも何か理由があるのでしょうか。
新津 理由は3つあって、ひとつはテレビの生放送の現場でも使ったことがあるという社内実績。あとは長時間の稼働でもちゃんと安定して動くということ。9月3日に行なわれたサマーカップで6時間ずっと録画し続けるという、CPU負荷が高い状況が長く続く使用にも耐えられるモノとして、国内生産のPCにしたかった。加えて、CPUやメモリーもさることながら、システムドライブがSSDであり、かつ長時間録画データの保存が行なわる大容量HDDを備えるノートPCというと選択肢が少なく、マウスコンピューターさんのDAIVが条件に合致したためを採用しました。
編集部 今後実店舗でも配信用に使用していくといったプランなどはありますか。
新木 試験的に配信用の機材を使って、ひとつ前のプレイを見れるようにしようとは考えています。
編集部 プレイしたユーザーさんが、録画データをUSBメモリーなどで持ち帰れるサービスを行なうなどの検討はありますか。
新木 本当はすぐにでもやりたいのですが、現地のオペレーターさんの仕事が増えるので、なかなか難しいんですよね。海外で意識の高い店舗さんが、そうしたサービスを自発的に行なって下さっているところもあります。
新津 プレイされたユーザーさんから、プレイを振り返りたいという要望は結構多くて、今までは自分のスマホで配信用の液晶の映像を撮影されている方がいました。先ほど体験して貰った際のプレイ動画は、東芝さんの無線転送が可能なSDカード「FlashAir」に録画しているのですが、今後はそこからプレイしたユーザーさんのスマホに転送する、またはSDカードをスマホ用のSDカードリーダーに接続して、直接ユーザーさんのスマホにコピーするといったサービスを行ない、HADOをプレイし終わった後でも振り返って楽しんで貰えるようにしたいなとは考えています。
編集部 動画データが重いと転送時間が遅くなるかと思いますが、どういった運用を検討されているのですか。
新津 1試合が80秒、長くなっても120秒くらいで、容量的には300~500MBくらいになるのですが、それを30秒くらいで転送できるようにしたいです。
編集部 HADOは近く「HADO WORLD CUP 2017」を行なわれますが、どういった大会になるのか、今言える範囲で教えて貰えますか。
新木 今年の12月3日に東京タワー横のスターライズタワーで行ないます。賞金総額は300万円で、1、2、3位と去年と同様にベストパフォーマンス賞と、ベストコスチューム賞、ベストアタッカー賞、ベストディフェンダー賞、モストランニング賞等として贈られます。すでに国内に5チーム出場枠を獲得したチームがいらっしゃって、あとは本戦に向けてベトナム、マレーシア、シンガポールなどで大会が行なわれ、現地の優勝チームを日本に招聘し、今年は国際色のある大会にします。あとはハワイにも導入されているのですが、ハワイで大会を進められているかどうかは、ご期待ください。
編集部 大会に関して、今後規模を大きくしたいなどの野望は何かありますか。
新木 RAGEさんと組んで、武道館や東京ドームを貸し切ってやるレベルの規模にしたいですね。もっと未来の希望としては、それこそF1のように年間を通じて様々な大陸で国際大会を開くような規模にしたいですね。
編集部 ハードウェアの進化により、さらにいろんなクオリティーアップも図れるので、まだまだ可能性は広がりそうですね。今後のご活躍にも期待したいます。本日はありがとうございました。
(提供:マウスコンピューター)
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