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ホンダの国民車「N-BOX」は最新のハイテク安全装備がてんこ盛り!

2017年09月12日 09時00分更新

世界にも類をみない
超ロングストロークエンジンを実現したVTEC

 そして、テクノロジー面から新型N-BOXのキーワードになるのは「VTEC」と「Honda SENSING」の2つだ。

 まずは「VTEC」から説明しよう。ホンダファン、クルマ好きであれば一度は目にしたことがあるであろう、この四文字のアルファベットは1989年に登場したホンダを代表するエンジン技術で、日本語では「可変バルブリフト・タイミング機構」という。エンジン内に空気を吸い込むバルブや、燃焼したガスを排出するバルブのリフト量を段階的に変えることで、そのエンジンに2つの特性を持たせることができるというものだ。当初、日常的な扱いやすさとレーシングエンジンのようなパワーを両立する技術として使われたこともあり、歴代タイプRやNSXなどに搭載されたホンダの高性能エンジンには欠かせないデバイスとなっていった。

新開発エンジンは3気筒DOHC、NAにはVTECが備わる。ターボには電動アクチュエーターによるウエストゲート制御が与えられ、高レスポンスを実現する

 今回、新型N-BOXでは軽乗用車の660ccに制限されたエンジンにおいて、実用燃費と扱いやすさを両立するためにVTECが吸気側カムに与えられた。そもそも、エンジンも生まれ変わっている。少々、専門的になるが新型エンジンの1気筒あたりのボア(内径)×ストローク(行程)は60.0mm×77.6mmで、ボアとストロークの比率を示すS/N比は1.29。最近の環境指向の流れにおいてロングストロークのエンジンは増えているが、それでも乗用車用として1.29という数値は他を大きく引き離している(他は1.1台であることが多い)。

すべてが一新された超ロングストロークの「S07B」型エンジン。VTECが付くのは吸気側で、抵抗の少ないアルミ製ローラーロッカーアームが備わっていることがカットモデルで確認できた

 しかし、新型エンジンは単にロングストロークにしたかったわけではない。エンジン設計を担当した瀬田昌也氏に、その狙いを伺った。瀬田氏はホンダF1の全盛期といえるV6ターボエンジンを開発したスタッフの一人で、ここ数年は軽乗用車用エンジンの開発をリードしているエンジニアだ。

「新エンジン開発において重視したのは燃焼効率を高めることです。そのためには燃焼室の表面積を小さくして冷却損失を減らすことが重要でした。その燃焼室はバルブを区切る形状とした独自のものです。また、ロングストロークにしたことでエンジン内に吸い込んだ混合気に強いスワール(渦)を作ることができます。そうして、急速燃焼が実現できたのです」

 しかし、バルブが小さくなってしまい吸気の通り道が狭くなってしまう。そのままでは日常的に使う領域では問題なくても、高速道路の合流など急加速が必要なシーンではパワー不足を感じてしまう。そこで登場する解決策が、バルブリフト量を切り替えるVTEC機構。ホンダ独自の技術を利用することでオールマイティーに満足できるエンジンへと仕上げることができたというわけだ。

 実際、街乗りではVTECのハイカムゾーンに入ることはほとんどないが、とにかくアクセル操作にリニアに加速する力強い特性に仕上がっているのが確認できた。一方、4500rpm付近でVTECが切り替わったからは伸びるような加速が味わえる。新型N-BOXにはターボエンジンも用意されているが、VTECを備えたNA(自然吸気)エンジンで不足を感じることはない。

部分的な自動運転を体験できる
「Honda SENSING」

 新型N-BOXに与えられた、もう一つのハイテクが予防安全・運転支援システムからなる「Honda SENSING」だ。軽自動車としては初めて採用されたもので、他メーカーのライバルモデルにもない機能、たとえば先行車に追従して速度を調節するACC(アダプティブ・クルーズコントロール)や、道路上の白線(区画線)を認識して車線の中央を走るようにハンドル操作を愛すとするLKAS(車線維持支援システム)を搭載している。

全グレードに標準装備となる「Honda SENSING」。コントロールスイッチ類はハンドルに置かれている。そのデザインもN-BOXから新世代となっている

 実際、高速道路でACCとLKASを試してみたが、2つとも機能する速度域(65~100km/hと限られた領域)においては、ハンドルを握っている必要はあるものの、アクセルやブレーキ操作は不要で、自動運転の世界を垣間見ることができる。次世代自動車において自動運転は欠かせないキーワードとなっているが、最新の軽自動車は部分的ではあるが自動運転的な機能を持っているのだ。

Honda SENSINGの運転支援機能を立ち上げたことはメーター内に緑の文字で示される。高速走行中に時計の下の表示が実線になると、白線を認識した証だ

 そうした機能を実現するためには周囲の状況を把握するセンサーが必要。N-BOXには上級モデルと同様に、フロントウインドウ上部内側に置かれた単眼カメラとフロントバンパーのロアグリル付近に内蔵されたミリ波レーダーが与えられている。さらに、後方を感知する超音波ソナーまで備わる。

当初はボタン式のシフトパターンも考えられたという運転席周り。メーターを遠くに置くことで視線移動を減らすと同時に、多くの情報を見やすく配置している

 予防安全系としては、脇見運転などでの追突事故の発生や被害を減らす「衝突軽減ブレーキ」やペダル踏み間違えによる事故を減らす「誤発進抑制機能」と、同様の機能を後退時にも可能にした「後方誤発進抑制機能」、低速で歩行者と事故を起こしそうなときにハンドル操作を補助する「歩行者事故低減ステアリング」、車線を外れないように注意や操作アシストを行なう「路外逸脱抑制機能」、夜間の視界を確保する「オートハイビーム」といった先進安全機能を装備。

 さらに信号待ちなどで先行車が動き出したのを音と表示で知らせる「先行車発進お知らせ機能」、一時停止や制限速度などの標識情報をメーター内に表示する「標識認識機能」も備えている。ちなみに、後方誤発進抑制機能はホンダとして初採用。軽自動車だからといって機能制限版が載っているのではない。日本一売れているクルマにふさわしい最新の多機能版が採用されているのだ。

 このHonda SENSINGは基本的に全グレードに標準装備となっているというから驚く。冒頭、N-BOXが日本車のレベルを引き上げると記したが、今回のフルモデルチェンジをきっかけに、ACCやLKASといった運転支援システム、歩行者を検知できる衝突軽減ブレーキといった先進安全装備は当たり前の存在になっていくことだろう。

 そのほか、57cmも前後スライドする助手席(一部グレード)やワンタッチで畳んで広大な荷室を生み出すリアシートなど、使い勝手の向上につながる機能も与えられているが、いまや軽自動車だからこそ最新のテクノロジーを投入する時代になっているのだ。その結果として、メーカー希望小売価格が138万5640円~208万80円と軽自動車としてはかなり高価になっているのだが……。

57cmも前後に動く助手席スーパースライドシートは、新しい使い方、座り方を提案。一番前までスライドさせれば後席から運転席へ移動することも可能だ

ほのぼのとしたルックスだが、その中身は最新も最新。軽自動車ながら半分近くの材料が高張力鋼板で、軽さと強さを両立したボディーあることが伝わってくる

リモコンキーでも開閉できる助手席側の電動パワースライドドアは、ほぼ全グレードに標準装備。足を差し入れるだけで開閉する機能をディーラーオプションで用意する

N-BOX専用に開発された純正ナビゲーションを装着すると、現在地と目的地の天気予報を表示することも可能。時計の時刻調整もGPSを利用して自動的に行なってくれる

ドアの開口の溶接は、一部にシーム溶接(黄色で示した部分)を軽乗用車として初採用。ローラー状の電極で連続的に溶接することで、ボディー剛性アップに寄与する

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