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パートナー企業と連携でかゆいところに手が届くサービスを提供

もはや地図を超えた「Googleマップ」はパートナーと共に進化する

 現在のGoogleマップには多彩な情報が表示されるようになっている。前回の記事「進化するGoogle マップ、新機能の開発の裏側」で説明したように、そのひとつの軸は、グーグルによる解析とユーザーからの情報提供である。

グーグル・シニア エンジニアリング マネージャーの後藤正徳さん

 一方で、Googleマップの中には、グーグル以外の企業との連携によって生まれる部分もどんどん増えている。後半では、そうした側面について解説していこう。お話しいただいたのは、前回と同じく、グーグル・シニア エンジニアリング マネージャーの後藤正徳さんと、ソフトウエアエンジニアの平澤恭治さんだ。

タクシー配車も旅行予約もサービス連携で実現

 Googleマップで位置検索をすると、現在の位置から目的地までの移動方法や移動にかかる時間を表示してくれる。これはもうお馴染み、というか定着した機能だろう。そこにこの1年くらいで「タクシーを呼ぶ」機能が追加されていることにお気づきだろうか。

Googleマップで経路を検索すると、電車やバスなどを利用したルートが表示されるが、さらに画面をスクロールすると、「その他」としてUberと全国タクシーの料金や時間などが目安として表示される

ルート検索で、手を上げている人物のアイコンを選択すると、Uberや全国タクシーのクルマが出発地の付近にいるかどうかが、リアルタイムで表示される

全国タクシーの様子

 海外では2017年1月から、ライドシェアである「Uber」「Lyft」を使った時のルートや料金を出した上で、配車を直接依頼する機能が搭載された。そして日本では、3月からUberと「JapanTaxi」が使えるようになっている。JapanTaxiは「全国タクシー」のアプリ名でサービスを展開しているタクシー配車サービス。タクシー大手の日本交通が母体となった会社で運営されているが、日本交通のタクシーのみならず、全国47都道府県でタクシーを呼べるようになっており、キャッシュレス決済にも対応している。海外でUber・Lyftに対応したことと、日本でJapanTaxiに対応したことは、基本的には同じフレームワークに基づく。

後藤さん(以下敬称略) こうした機能は、もちろんそれらの企業との協力関係がないとできません。Googleマップに接続するためのAPIを用意してもらい、接続することで実現します。個々の会社の事情はけっこう違うのですが、JapanTaxiの場合には、もともと社内システムに Google Map APIを使ってくれていたのでやりやすかった、という部分はあります。

ロンドンではリアルタイムでバスの時刻が更新されるほか、水上バスの情報も表示される

 同様にパートナー戦略によって、バスや連絡フェリーの情報も入るようになり、バスについては100路線以上がカバーされるようになった。また、旅行予約サイトとの連動も始まっている。現状では4〜5社が連動し、好きなサービスから予約できるようになった。

後藤 現在は様々なことを「アプリを使い分ける」ことによって実現していると思います。しかし、それは使いづらい。できればひとつのサービスですべてが完結するのが望ましいです。しかし、1つのサービスですべてが「閉じてしまって」はいけないし、そうなってはいません。どちらかというと、どうサービスを統合するのか、という観点が、業界全体の課題となっています。グーグルとしては、少なくともグーグルで完結するつもりはなく、いかに他のサービスと連携するかを重視しています。

Googleマップの便利な新機能〜駐車位置の記録
 初めて訪問する場所でクルマを停めた時、どこに駐車したかうっかり忘れてしまう場合がある。Googleマップを数回タップすれば、場所を記録することができ友だちと共有することも簡単にできる。

Googleマップで現在地を示す「青い丸」をタップし、「駐車の場所を保存」をタップする

駐車した場所として記録できる

画面下の「駐車場の場所」をタップすると、場所の変更やメモ、残り時間、写真を追加して記録することができる

 タクシー配車や旅行サービスとの連携は、まさにこの好例だ。Googleマップというサービスを切り口にして、そこからアプリやサービスを切り替えることなく目的に到達できるようにしている。

 前回説明した、目的地周辺の情報をリッチにする方法論も同じ考え方に基づく。そこでは、個人が書き込んだ情報だけでなく、店舗の持ち主などの「ビジネスオーナー」がより正確でアピールしたい情報を書き込み、価値を高めるやり方が採用されている。そこには、アドセンスによる広告との連動などもあり、グーグルの本業である「広告ビジネス」との連動があることも指摘しておきたい。パートナーとの連携は、機能をリッチにするために必須であるだけでなく、グーグルのビジネスとしても必要なものなのだ。

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