いま単身者・小人数世帯向けの家電「おひとりさま家電」が面白い。
メジャーブランドが機能満載の巨大な高級家電を作っているのと対照的に、中小ブランドが機能をしぼったコンパクトで比較的手ごろな価格の家電を仕掛けているのだ。
たとえば炊飯器ならコイズミの「ライスクッカーミニ」(実売価格5980円)。炊飯容量は0.5~1.5合と少ないが、約20分で炊きあがるスピード調理が忙しい現役世代に人気だ。スティック掃除機ならマキタの「充電式クリーナ」(実売価格2万円)。重量1.1kgと軽量なのに吸引力が強く、ワンルームのように小さな住まいなら1本だけで掃除ができる。
高級トースター「BALMUDA The Toaster」をヒットさせたバルミューダが作っているのも、基本的に1~2人暮らし、子なし夫婦(DINKs)向けの製品だ。炊飯器「BALMUDA The Gohan」も3合炊きでサイズが小さく、子どものいる家庭には向いていない。
メジャーブランドではパナソニックが「Jコンセプト」という、コンパクトサイズで最新機能を搭載したシリーズを作っている。50~60代向けだが、少人数世帯向けという点は同じだ。
最近ではIT企業エスキュービズムが「おひとりさま家電」で家電業界に参入、じわじわと人気を集めている。46Lサイズの小型冷蔵庫、小型のワインセラーなどがよく売れているという。今月13日に発表したのは薄型で1万4800円のロボット掃除機(8月発売予定)。一般的なロボット掃除機に比べて背が低いため、狭い家のキッチンの下などにも入りこんだ掃除ができるそうだ。
では、実際に単身者は「おひとりさま家電」をどう思っているのか。20代独身男性であるところの編集部ちゅーやんくんに聞いてみたところ、
「おれ冷蔵庫も持ってないっすよ。近くにコンビニあるんで。あーでも寝る部屋で酒飲みたいから冷蔵庫は欲しいかな。それもクーラーボックスがあればいいかも。それよりいまホワイトボード欲しいんすよ。だって家に会社にあるようなホワイトボードあるって面白くないですか? 絶対モテると思うんですよ。あっ、でもドア通るかな?」
という答えが返ってきた。聞く相手を完全に間違えた。家電に興味がなさすぎた。記事のコンセプトが崩壊した。
たしかに都心の一人暮らしならちゅーやんくんの考えも合理的ではある。家に設備がなくても業務用設備を使えば生活ができる。ちゅーやんくんの生活を見ていると食事はほとんどチェーンの居酒屋か飲食店で済ませているみたいだし、問題なさそうだ。
都市部なら近くにスーパーやコンビニがあり、冷蔵庫・電子レンジが置いてあり、出来合いのお惣菜も売っている。加工食品の保存技術も昔に比べて進化しているし、調理家電や調理器具がなくても困ることは少ないかもしれない。クーラーボックスのようなアウトドアギアを駆使すれば電気がなくても快適な暮らしは送れるのだろう。
言うなれば、まったく意識が高くないミニマリストだ。ちゅーやんくんのような生き方を“逆にていねいな暮し”と呼びたい気がする。
ただ、そうはいっても地方だとなかなかむずかしい。都心に住んでいても、毎回店に寄るのはコストパフォーマンスが悪いし面倒くさいと思う人はいるはずだ。都心で逆にていねいな暮しを送るも良し、おひとりさま家電を買ってコンパクトな快適生活を送るもよしだ。個人的には妙にホワイトボードが欲しくなってしまった。何だったんだこの企画は。
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書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中。
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