家事が趣味だったわたしだが、赤ちゃんが生まれてから家事なんてどんどん手抜きすればいいじゃんと考えるようになった。日立アプライアンスの最新高級炊飯器と最新高級オーブンレンジの性能を見せてもらったところ「これでいいじゃん」という顔になった。ごはんは甘く炊きあがり、おかずは手抜きでも本格的な仕上がりでおいしかった。わたしが勝負しても負ける自信があった。人類は人工知能どころか家電にさえ大敗を喫するのだ。さよなら人類。こんにちは赤ちゃん。
「圧力スチーム炊き ふっくら御膳 RZ-AW3000M」
実売価格10万円前後
7月20日発売
http://kadenfan.hitachi.co.jp/kitchen/
「ヘルシーシェフ MRO-TW1」
実売価格9万5000円前後
7月20日発売
http://kadenfan.hitachi.co.jp/range/
音速でごはんがうまい炊飯器
炊飯器ふっくら御膳は、ごはんの甘みとつやを出す圧力スチーム炊きが特徴だ。
60℃で浸し、加熱して、圧力をかける。圧力をかけると温度が上がるため、高温で炊飯できる。最高105℃まで上げた後、圧力をかけながらスチームを出すことで、ごはんをふっくらさせ、甘みとつやを出していけるという。炊飯器の蒸気は外に出すことが多いが、日立の炊飯器は蒸気をリサイクルする構造だ。蒸気が出ないのでスライド棚に入れても棚板が蒸れなくて便利だ。
新製品はごはんを炊いたときの「今日かたくない?」という硬さのムラを減らす工夫をした。
工夫とは、アルミ製内釜の底を、逆ドーナッツ状の凹凸をつけて鉄粒子でコーティングすること。炊飯器の底にある加熱部のIHコイルはドーナッツ状なので、ドーナッツの穴にあたる部分は温度が低い。コイルに当たるところは厚く、穴にあたるところは薄くすることで、温度上昇のムラを減らし、炊きムラをおさえる仕組みだ。内釜に鉄粒子を打ちこむ速度は約マッハ2。従来の製法だと凸凹をつけることができなかったため新開発したのだと、さらっと言っていた。怖い。
内釜は約720gで、鉄や銅など内釜の素材にこだわっている他社の高級炊飯器に比べると軽い。炊飯器の内側を断熱材でくるんで熱をとじこめられるようにしたことで軽くできたそうだ。どこをとっても理屈があって、すごい。
新機能には玄米の炊き分けを追加した。
従来の玄米コースはやわらかめに設定していたが、「おれの食べている玄米はこれじゃない」という意見を受け、硬さの炊き分けをできるようにした。わたしも硬めが好きなのでわかる気はする。開発時は玄米の硬さ許容値をニュートン値で数値化したそうだ。ニュートン値7.1~11.1の中、やわらかめ好き、かため好きの振れ幅を設定し、炊き分けられるようにした。怖い。
料理3品が一気にできるオーブンレンジ
つづいてオーブンレンジのヘルシーシェフは食品の表面温度と重さをはかり、食品の解凍・あたためムラを減らすWスキャンが特徴だ。
温度は、赤外線センサーが天井部分のまんなかにあり、8眼センサーが15段階にスイングして底面を120分割して食品の表面温度を計測する。またもやさらっというので怖い。赤外線センサーが側面についていると、牛乳やコーヒーのような飲みものをあたためるとき液面が認識されづらく、分量が少ないと熱すぎ、分量が多いとぬるく、飲みごろ温度にするのが難しいそうだ。
じゃあみんなまんなかにつければいいじゃないかと思うが、赤外線センサーは熱に弱く、天井部分のまんなかにつけると熱にやられてしまうため、センサー冷却専用のファンとダクトを後ろにつけている。そこまでやるメーカーがほかにないため、まんなかセンサーは日立だけ、ということらしい。重量は、前に2つ、後ろに1つのセンサーがあり、食品の位置と重さを測っている。
オーブンレンジ料理にもWスキャンが生きてくる。材料を並べてボタンを押すだけの手抜き料理だ。センサーで食品の表面温度と重量をはかることで、加熱時の出力と時間を自動決定する。
自動調理のオーブンレンジ料理メニューは93種類。レンジ、オーブン、グリル、スチーム、過熱水蒸気を組み合わせて調理するのが特徴だ。たとえばローストビーフをつくる場合、レンジで肉の内部に熱を入れたあと、過熱水蒸気とオーブンで表面に焼き色をつけ、オーブンのみに切り替えて内部温度を60℃までゆっくり上げる。オーブンだけだと中まで熱が入らず生煮えになりやすいという。
加熱方法を組み合わせることで、焼きもの、揚げもの、煮物、蒸しものといった幅広い調理ができる。煮物については、香川調理製菓専門学校 原口英男教授の火加減を、加熱制御で再現しているそうだ。具体的にはレンジで加熱して一気に沸騰させてオーブンとレンジでゆっくりとあたため煮汁を食材にしみこませ、弱めのレンジ加熱で煮汁をしばらく沸騰させて生ぐささを飛ばす、といった制御をしているらしい。どう考えてもわたしより火加減がしっかりしている。
自動調理メニューには大量にお惣菜をつくる「つくりおき」メニューが10種類あり、毎日食べても飽きないようアレンジメニューがそれぞれ2種類ずつ入っている。たとえばラタトゥイユをパスタにリメイクする感じだ。新機能は主菜と副菜を一気につくれる「おかずセット」。主菜7メニューから1品、副菜7メニューから2品、合計3品を一気に調理する。上下2段で別の料理ができるので、たとえば上段で鶏の照り焼き、下段でかぼちゃのごまあえ、ほうれん草のソテーの3品を作れて便利だ。
おまけで技術的なところでいえば200℃までの予熱が4分50秒で業界最速だ。DCファンをまんなかに搭載。予熱時はファンを右回転させることで庫内中央に熱風を集めて熱を逃がさず、調理時はファンを左回転させることで庫内に均一に熱風を回し、温度効率を高めている。
普通にうまいぞ……
試食していく。まずは豚汁とごはん。
白米はふっくらむちむち。口に入れたときにほのかな甘みと香りがあって、おいしい。玄米は硬めに炊きあがっていた。玄米の味と香りがしっかり味わえる。寝かせ玄米のようにやわらかい玄米も好きだが、玄米といえばやっぱりしゃっきり硬めが良い。
豚汁は完璧。にんじん、ごぼう、里芋などかための根菜も、豚肉もやわらかい。里芋だけレンジで下ゆでしたあと材料を耐熱ガラスに入れてボタンを押すだけで完璧な豚汁が完成するのだ。すごい。
つづいて、茶わん蒸し。
だしが利いていて、しっかり内側まで火が通っていた。うまい。“す”を入れずに仕上げるのはむずかしい。泡をていねいにつぶすのがコツだという。そこはふつうに茶わん蒸しを作るのとおなじなのかと思った。
ぶり大根。
ぶりは火が通っているが身もくずれずさっぱりした仕上がり。大根もやわらかく、味もちゃんとしみていた。ちょっと煮くずれるくらいが好きなのだが、調整はできるのだろうか。魚のぬめりをとるため鍋で湯引きはするそうだ。わたしだったら省略してしまいそうだ。
ノンフライとんかつ。
サクサクでおいしい。普通に揚げたとんかつと言われて出されても気づかない。衣がややオイリーなのはフライパンで炒りパン粉を作っているかららしい。小麦粉、たまご液、炒りパン粉をつけてオーブンレンジに並べたら、あとはおまかせ。揚げ油を使わないのがラクで最高だ。
チンジャオロース。
肉野菜の炒め煮という感じ。油っけがないぶん、胃もたれしなそうだった。
ローストビーフ。
お肉がちょっとかためだが、味はよかった。自分でも作ってみたい気がした。
* * *
オーブンレンジ料理はすばらしかった。おいしいのはもちろんだけれど、何がいいって鍋やフライパンを洗わなくてもいいことだ。鍋敷きをテーブルに置いてドン! とそのまま耐熱皿ごと料理を出してしまうというダイナミック手抜きもできる。オートめしバンザイだ。オート調理メニューを応用してわたしの好きなレシピも作れるようにならないだろうか? 研究してみたい気持ちもある。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中。
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