週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

川崎のチネチッタで7.1chの重低音再生に文字通り震える

体で感じる重低音、BLAME!の音が生まれる場所に潜入

2017年05月17日 13時00分更新

話題の新作アニメ『BLAME!』の音響調整現場に潜入

 それではLIVE ZOUND、そして優れた劇場アニメの音響はどのようにして生まれるのか? 「その一端を垣間見たい」という気持ちは常に持っていた。そして幸運にもその機会が得られた。5月20日(土)から上映が始まる話題の新作長編アニメ『BLAME!』(ブラム)の音響調整に立ち会えたのだ。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 BLAME!は、漫画家・弐瓶勉(にへいつとむ)のデビュー作で、『シドニアの騎士』に続き、ポリゴン・ピクチュアズが長編アニメ化している。ハードなSFアクションを売りにしており、迫力満点の映像・音響が用意されている。

 舞台はテクノロジーが暴走した未来。都市コントロールへのアクセス権を失った人類は、都市を管理する防衛システム「セーフガード」によって違法居住者とみなされ、駆除・抹殺される存在に成り下がった。都市の片隅でかろうじて生き残っていた「電基漁師」の村人も、慢性的な食糧不足やセーフガードの脅威の前に絶滅寸前の状態。そんな中、食糧を求め、無断で遠征の旅に出た少女づるたち。しかしその途中で「監視塔」に検知され、駆除系に仲間を殺され、自身も退路を断たれる。そこに現れるのが、世界を正常化するためのカギ「ネット端末遺伝子」を求める探索者の霧亥(キリイ)だった。

 ストーリーの面白さに加えて、イベント上映・パッケージ販売・ネット配信を同時に行う手法にも注目だ。これ自体は決して新しくはないが、それぞれの方法で最上の体験が得られるよう、NetflixではHDR対応の映像が全世界に向けて配信されるといった取り組みがある点は知っておきたい。

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 もちろん劇場での体験、特に音は素晴らしい。担当するのは音響監督の岩浪美和氏。ガールズ&パンツァーやソードアート・オンラインの音響監督も担当し、冒頭で紹介したアニメを劇場で観る楽しさを再認識する機会を提供してくれている人物だ。

 BLAME!は劇場ならではの迫力ある体験にもこだわりをみせる。ドルビーアトモス対応は日本のアニメとしては初。さらに50館以上を数える上映劇場のうち8館以上で「東亜重音」と称する、独自の音響調整を加えた上映を実施する予定だ。

 「東亜重音7.1ch LIVE ZOUND」を提供するチネチッタも、もちろんその中に含まれている。首都圏ではほかにイオンシネマ幕張新都心(ドルビーアトモス対応)と立川シネマシティ(7.1ch極上爆音)が「東亜重音」を冠した上映を実施するが、チネチッタは劇場自体の素性の良さに加えて、ライブで培った音響スタッフの地力の高さが魅力である。それぞれの持ち味を知るために、3館をハシゴして聴き比べてみるのも面白いかもしれない。

500人規模のスクリーンにコンサートホールの音響機器を常設

 チネチッタでBLAME!および『劇場版 シドニアの騎士』の再上映(BLAME!本編冒頭付き)に向けた音響調整が実施されたのは、GWが明けてすぐの平日深夜のこと。

キネット社の赤いシートが雰囲気を演出

 扉を開くと、この劇場ならではのフランス・キネット社の真っ赤なシートが目に入る。スタジアム方式で緩やかに傾斜し、整然と並んだ500席以上のシートを前にすると自然に気分が高揚してくる。劇場公開時には、多くの観客でにぎわうはずの場所だが、当然のように人はいない。現場にいるのは岩浪監督とスタッフ、そして数名の取材関係者のみで、広い空間を独り占めしたような気分になる。

スクリーンの横に設置されたd&bのラインアレイ

 CINE8ではd&bのV-Series(V8を4台、V12を2台)を組み合わせたラインアレイをフロント(L+R+C)に配置。LとRはスクリーンの横に、センターの6個はスクリーン裏に設置されている。サラウンドスピーカーも同じd&b社のxS-series 10S。合計22台(左右に8台ずつ、後方に6台)が据え付けられている。

 前方に2台セット×2組置かれたサブウーファーはJ-SUB WOOFERという機種だ。3台の18インチ高偏位ドライバーのうち2基を前方、1基を位相調整のため後方に向けて取り付けている。これにより、後方から回り込むエネルギーを打ち消し、正確な低域再生と重低音を両立できるという。これらはラインプロセッサーのLake LM Seriesでコントロールし、パワーアンプのD80で駆動する。オペレーションにはノウハウが必要だが、冒頭で述べたように、チネチッタの系列にはライブホールのクラブチッタがあり、LIVE ZOUNDの音響もそこで活躍したスタッフが手掛けている。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう