週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

スマホ✕電子カルテで医療者と患者の距離は、もっと近くなる

2017年05月08日 07時00分更新

クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。

第15回テーマ:電子カルテ x モバイル

 スマートフォンやタブレットなどのデバイスが、年齢層を問わず幅広く普及している昨今、電子カルテとの連携は、利便性を考える上で避けては通れぬ道だ。

 クラウド型電子カルテとの連動であれば、外出時にいつでも予約を取れるのはもちろんのこと、その流れで遠隔診療も行なえてしまう。

 また決済もモバイル機器で完了できるので、病院に足を運ぶといった、時間の制約をいとわない診療行為が可能になるのだ。

 以上が基本的な部分だが、ここからはクラウド型電子カルテに詳しいクリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。最新トレンドをぜひチェックしてほしい。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。


モバイル機器保有を前提とした
サービス構築が当たり前の時代に突入する

クリニカル・プラットフォーム代表取締役 鐘江康一郎氏

 2017年3月のForbs Japanに掲載された記事によると、アメリカでは「2018年までには、医療施設とのやり取りの65%がモバイル機器で行なわれるようになると推定されている。医師の約80%は既にスマホや医療アプリを利用しており、72%は日常的にスマホで薬の情報にアクセスしている」となっており、医療者自身のスマホ依存度が高まると同時に、それらのモバイル機器によって、医療者と患者の距離が大幅に縮むことが予想されています。

 そして、同様の流れは日本でも起こることが予想されます。2016年7月に行なわれた調査によると、日本のスマホ利用率は72%を超えており、60代でも47%の人がスマホを使用しているとのデータが出ています。今後この割合は増えることはあっても減ることは考えにくく、医療機関においても、患者さんあるいはその家族がスマホを中心としたモバイル機器を保有していることを前提としたサービスを構築することが当たり前の時代に突入するものと考えられます。

 では、具体的にどのような「医療機関とのやり取り」にモバイル機器が使用されるのでしょうか? 真っ先に思い付くのは医療機関の検索と予約です。かかりつけ医の予約を取るとき、あるいは外出先で医療機関を探す必要にせまられたときにスマホが役に立つでしょう。場合によっては、モバイル機器上でそのまま遠隔診療を受けることも可能になります。

 そして、タクシーや店舗などではすでに導入されていますが、スマートフォンで決済が行なえるようになるでしょう。電子マネーとして使用することもあれば、UBERのようにあらかじめクレジットカード情報を登録しておき、後日そこから引き落とされるようにすることも可能です。

 また、かかりつけ医からはスマホのアプリにお知らせ通知を受け取ることができるようになるでしょう。次回予約日時の通知や急な休診のお知らせ、小児科であれば次のワクチン接種のリマインダーなどが届くととても便利です。さらに時代が進めば、患者自身が測定した血圧値などの各種データを、モバイルデバイスを通じて医療者に伝えることができるようになります。

 このように、モバイルデバイスは医療機関と患者を結びつけるためのとても重要なツールとして今後も進化していくことが予想されます。


記事監修

裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長

著者近影 裵 英洙

1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事