週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

TITAN Xとの戦いは、エンスージアストに何をもたらすのか?

新GPU「GeForce GTX 1080Ti」の性能を最新ゲームでベンチマーク

2017年03月09日 23時00分更新

強化クーラー版が待たれる熱設計

 では消費電力と発熱をチェックしよう。GTX 1080Ti FEの設計において、デュアルFETを倍増させることで電力効率を改善したこと、DVIコネクターの部分を丸ごと排気孔とすることで発熱に対処したと解説したが、これは本当なのかチェックしたい。

 まずはシステム全体の消費電力を比較する。システム起動10分後の安定値を“アイドル時”、3DMarkの“Time Spy”デモ実行中のピーク値を“高負荷時”としている。

↑システム全体の消費電力

 電源回路の変換効率を上げたとはいえ、GPUコアもメモリーもクロックが上がっているのだから消費電力が増えるのは道理。結果的にTITAN Xよりも消費電力は増大している。描画性能はほぼTITAN XとGTX 1080Tiは同格だから、ワットパフォーマンス的にはGTX 1080Tiはやや後退したと言わざるを得ない。OC版にするとさらに消費電力が増えるのは確実だが、それを性能向上でどれだけ帳消しにできるか、各メーカーの手腕が問われるところだ。

 では今回用意した3枚のビデオカードで「Watch Dogs 2(4K最大画質設定)」を約30分放置プレーし、ゲーム終了後10分間放置した時のGPU温度とクロックの推移を「HWiNFO64」で追跡した。

↑GTX 1080 FEとGTX 1080Ti FEに同じような負荷をかけた場合、GPU温度は5℃、ファンノイズは2.5dB小さくなるとNVIDIAは主張している。果たして実ゲームではどうか……

↑GPU温度の推移。手動で実施しているため、時間軸は微妙にズレているため、縦軸に注目して頂きたい。

↑上のグラフのピーク部分だけに注目して縦軸を調整したもの。TITAN XよりもGTX 1080Tiの方が2~3℃低い温度を示している。

 さすがにゲームだと発熱的に同じ負荷にするのは難しいため、それぞれのカードの冷却力の限界まで回ってしまうようだが、それでもGTX 1080Tiの方がTITAN Xよりも2~3℃前後低い値を示している。消費電力はGTX 1080Tiの方が上なのだから、DVI端子を排気孔にしたぶんの冷却力アップは確実になされている、と言うべきだろう。

 だがFEのクーラーで冷却力は十分か、というとそうでもないようだ。次のグラフはGPUクロックを追跡したものだ。

↑GPUコアクロックの推移

 3つのGPUはどれもゲーム再開直後に最高クロックを示し、それ以降小刻みに上下しながらクロックを下げていく。一番高クロックを維持できたのはクーラーに対しTDPが余裕のあるGTX 1080無印であることはまあ当然として、GTX 1080Tiはガッツリとクロックを下げている点に注目したい。

 ゲーム終了間近(時間軸では27分~31分あたり)でのGTX 1080Tiの実測クロックの最低値は1506MHz。これは前述のブーストクロック1582MHzより低い。GTX 1080Ti FEのクーラーは確かにTITAN Xよりも効率はよくなったが、それでもキッチリ冷やしきれている感が乏しい。GTX 1080Tiの性能をフルに引き出したいなら、FEを水冷化してガッツリ冷やすか、サードパーティー製の強化クーラーモデルを選択するのが良いのではなかろうか。

FEよりも独自設計モデルが狙い目

 699ドルのカードがなぜ日本で税込12万程度になるのか……という日本国内限定の議論は脇に置いておくと、今回のGTX 1080Tiのパフォーマンスは素晴らしい。明らかにAMDのVEGAを意識したスペックや値段設定であるといえるが、既存のTITAN Xユーザーを打ちのめす製品でもあることは間違いない。

 あえてTITAN XユーザーがGTX 1080Ti FEに買い換えるメリットはないが、後発の高付加価値なOCモデルが出てきたらどうなるか……。いずれにせよ、グラフィックリッチなゲームを最高の画質で攻めたい人には、ぜひともゲットして欲しいカードになったことは間違いない。

 しかし分からないのは今回のNVIDIAの戦略だ。TITAN Xよりも安くて性能が同等なGTX 1080Tiを出した、というこの状況を別の角度から眺めると、NVIDIAはTITANブランドの優位性を放棄してでもエンスージアストにアピールしたかった、という点は理解できる。だがこれはTITANブランドに傷をつけたことにほかならない。

 NVIDIAがTITANブランドに対する救済……つまり“金で買える最高のビデオカード”というバリューを復活させるには、GTX 1080Tiの上をいく何かが必要になる。フルスペックGP102(つまりQuadro P6000のコンシューマー版)か、まだ見ぬVoltaベースで新TITANを作ることが予想できる。次の一手は果たして何か? 今年はますますNVIDIAとAMDから目が離せなくなった。

↑SMがひとつも欠けていない完全体のGP102ベースの新GPUを投入するというのが、今のところ一番現実的なTITANブランド救済策といえる。

関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事