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Pascal世代のGeForceの新用語を解説

GeForce GTX 1080の“GDDR5X”や“Founders Edition”って何?

2016年05月07日 19時37分更新

NVIDIAが発表したGeForce GTX 1080

 NVIDIAは米国で開催した記者会見で同社の新しいGPUとなるGeForce GTX 1080/1070を発表した。この中でNVIDIAはこれまでユーザーにはあまり耳慣れない技術を採用していることを明らかにした。具体的にはメモリーのGDDR5Xがそれで、従来のGDDR5に比べてより広帯域を実現することが可能になる。

  また、NVIDIAはGeForce GTX 1080/1070の製品には、“Founders Edition”と呼ばれるバージョンと、無印の2つがあることを明らかにした。実はFounders Editionは従来NVIDIAがリファレンス版と呼んでいたNVIDIAが開発したデザインそのままのボードであり、無印はボードパートナーと呼ばれるOEMメーカーが自社開発したボードデザインの製品となる。

GP100ではNVLink+HBM2だが、
GP104ベースのGF GTX 1080/1070はNVLinkなし+GDDR5X

 今回発表されたGeForce GTX 1080/1070は、同じPascalアーキテクチャーであっても4月に発表されたHPCサーバー向けのTesla P100とは、若干異なる製品となっている。チップ自体も異なっており、前者がGP104という開発コードネームで知られるチップに基づいているのに対して、後者はGP100という開発コードネームのチップに基づいている。GeForce GTX 1080/1070に関しては、現時点ではCUDAコアの数などが発表されていないためそうした違いは不明なのだが、現時点でわかっている大きな違いは2つある。

 ひとつは“NVLink”と呼ばれるインターコネクトには対応していないことだ。NVLinkはGPUとGPUないしはCPU(IBMのPower8)とGPUを接続するために用意されているインターコネクトで、Tesla P100には4つのNVLinkが標準でサポートされている。こうしたNVLinkは、複数のGPUを並列に並べて処理するHPCなどでは必要なソリューションだが、PCゲーミングの世界ではHPCほどは必要とされていない。NVLinkに必要なマザーボードの開発にかかるコストなどを考えると、GeForceではPCI Expressで十分だというのは納得がいく判断だ。このため、NVIDIAはNVLinkはHPCサーバー向けのみ搭載するとGTCの段階で明らかにしていた。

 もうひとつの大きな違いがメモリーだ。Tesla P100(GP100)では“HBM2”と呼ばれる広帯域メモリーがサポートされていた。HBM(High Bandwidth Memory)とは、複数の積層されたメモリーダイを利用し、メモリーとGPUを接続するバス幅を広げるという技術で、広帯域で大容量のメモリーを実装できる技術として注目を集めている。HBM2はそのHBMの第2世代なのだが、現時点では製造が難しいのが難点とされており、十分な供給が間に合っていないのが現状となっている。

 PC向けとしてそれなりの数の製品を供給する必要があるGeForce向けにはそうしたHBM2ではなく、既存のGPU用DRAMであるGDDR5を拡張したGPU用DRAMとなるGDDR5Xを採用している。GDDR5Xの特徴は内部構造の改良により、同じクロック周波数であってもデータレートと呼ばれるピンあたりの帯域が向上することだ。具体的にはGDDR5で1.25GHzの場合は5Gbpsとなるが、GDDR5Xであれば同じ1.25GHzの場合は10Gbpsとなるのだ。

 今回のGeForce GTX 1080にはMicronのGDDR5Xの10Gbps品が採用されていることが明らかになっている。ただし、バス幅は256ビットになるので、計算上の帯域幅は320GB/秒となる。384ビット幅で7GbpsのGDDR5が採用されていたGeForce TITAN Xの336.5GB/秒に比べると若干落ちる計算になるが、バス幅が狭くなっている分メモリー周りの消費電力は減っているはずで、電力効率の改善には貢献することになる。

メモリーとしてGDDR5Xを採用しており、10Gbpsを実現している

NVLinkはサポートされず、SLIにはPCI Expressを利用する

Founders Editionとは従来のリファレンスデザインのことで、
高品質なファンなどを採用したゲーマー向け

 今回NVIDIAは、GeForce GTX 1080及びGeForce GTX 1070のSKUとしてFounders Editionと無印の2つがあることを明らかにした。例えば、GeForce GTX 1080であれば、Founders Editionは699ドルという市場想定価格、無印は599ドルという市場想定価格になっている。

 そもそも、このFounders Editionとはなにかというと、従来はNVIDIAのリファレンスボードと呼ばれていた、NVIDIAがファンなどのサーマルソリューションも含めて設計しているボードのことを意味している。PCゲーマーならよく知っている通り、現在市場で販売されているNVIDIA GPUを搭載したグラフィックスボードには、NVIDIA純正のファンなどが搭載されたリファレンスボードと、OEMメーカーが自社でデザインしたボードの2種類がある。

 昔は、リファレンスボードというとあまり高機能ではないイメージだったと思うが、現在はむしろリファレンスデザインの方がコストがかかったファンやヒートシンクを採用しており、むしろそちらの方が高性能という状況になっているのだ。このため、最近はPCゲーマーも選んでリファレンスボードを買うということがあたり前になりつつある。

 そうした状況を反映して、従来はリファレンスボードとか様々な呼ばれ方をしていたNVIDIAデザインのボードを“Founders Edition”と呼ぶことになったのだ。前述の通り、今ではリファレンスデザインの方が良いファンやヒートシンクを採用しているので、そちらの方の市場想定価格が高く、無印の方がやや安いという価格設定になっているのだ。

 今回NVIDIAが発表会の会場に展示したGeForce GTX 1080はいずれもFounders Editionになる。5月27日にグローバルで販売開始が予定されているGeForce GTX 1080も、まずはFounders Editionが販売開始される予定でNVIDIA、ASUS、Colorful、EVGA、Gainward、Galaxy、Gigabyte、Innovision 3D、MSI、Palit、PNY、Zotacのブランドで販売されることになる。

 なお、この“グローバル”には日本も含まれているが、時差の関係で日本では5月27日の深夜になる予定だ。秋葉原のPCショップのように、深夜に特別販売をするショップでない場合には、実質的には5月28日からの販売となる可能性が高い。日本でどれくらいの数が販売されるかは現時点では不明だが、毎回争奪戦になることを考えると、今回もそうである可能性は高いと思われる。いち早く手に入れたいと考えているユーザーは、ショップに予約するなどして確保した方がいいだろう。

NVIDIAが発表したGeForce GTX 1080 Founders Edition。Founders Editionは従来のリファレンスボードのことで、高品質なファンやヒートシンクが特徴となっている

■関連サイト
NVIDIA GeForce GTX 10 SERIES

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