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ワンボードオーディオ・コンソーシアム

ラズパイを使ったハイレゾ再生機、その規格化に向け国内8社が連携

2017年02月28日 13時00分更新

 オトトイ、共立電子産業、サエクコマース、ティアック、トップウィングサイバーサウンドグループ、バリュートレード、ブライトーン、ラックスマンなど国内オーディオメーカー8社は2月28日、“ワンボードオーディオ・コンソーシアム”の設立に合意した。年央をめどに、一般社団法人化する計画だ。

最初に参画を表明した企業8社

ラズパイを使った新しいPCオーディオを提案

 ワンボードオーディオとは、Raspberry Piに代表される“ワンボードコンピューター”を利用し、PCオーディオに匹敵する機能を実現していくもの。

 Raspberry Piは、小型のサイズで価格も5000円程度と安価だが、Linux OSが動作する。このため各種コーデックの利用や、Roonのようなハイレゾ音源/定額ストリーミングサービス対応の音楽再生ソフトも利用できる。ハード面では、USBやmicroSDカードスロットを持つほか、I2Sバスから最大384kHz/24bitのオーディオ信号を出力することも可能。ここに市販(HAT準拠)のDACカードやアンプカードを追加することで、小型でも高音質・高機能の音楽再生が可能になるわけだ。

Raspberry Pi 3 Model B、Raspberry Pi 2 Model B v1.2

 USBなどでPCからオーディオ用の信号をデジタル出力し、Hi-Fi機器と接続するのがこれまでのPCオーディオだとしたら、Hi-Fi機器の筐体の中にPCそのものを内蔵し、スマホやネットワーク上の別のPCから操作する、新しいタイプのPCオーディオがワンボードオーディオによって可能になる。

SO-DIMMサイズのものもある。

 しかし、これまでのDACカードは搭載する端子の位置やサイズなどが統一されていなかった。そのため、収納するためのケースを作ったり、オーディオ機器の中に内蔵しようと考えると面倒な部分があった。この問題を解決するために設立されたのが、ワンボードオーディオ・コンソーシアムだ。Raspberry PiにDACカードを追加してポータブルタイプのプレーヤーを作ったり、単品コンポーネントに収納する際に必要となるケースの寸法や仕様、コネクター配置などを規格化し、異なるメーカーが作った製品でも相互に利用できるようにしていく。

ポータブル向けから開始し、内蔵コンポも

 まずはポータブル規格「π-A1」(仮称)とA4サイズ程度のフットプリントを想定したコンポーネント規格「π-L1」(仮称)を提案する。π-A1準拠のケースやDACカードは早ければ4月~5月に披露される見込みだ。

 π-A1では、Raspberry Pi 2 Model B/3 Model B(85×56×17mm)に、寸法がHAT規格互換(仕様は非準拠)の拡張ボードを装着したシステムを格納できるケースの形状を定義。ボードごとに異なる端子に適合するよう、前面・側面の一部を交換可能なパネルとする。

 π-L1では、SO-DIMMサイズ(67.6×31mm)のCompute Module 3を搭載するベース基板を用意し、オーディオ領域(DACやアンプ、ディスクドライブなど)とは内部配線で接続する。オーディオ領域の一部は寸法・仕様を規格化し、交換可能とするほか、フロントパネルとの接続や制御方法についても定義する。

 さらにソフト面でも「アナログ盤やCDのようにわかりやすいデジタルオーディオの実現」を目指すとのこと。基本ソフトにLinuxを採用し、ポータブル/コンポーネント規格の両方の機器で共用できるようにする。動作対象システム(Linuxディストリビューション)は複数から決定し、ソフトのサポートや配布は原則ディスクイメージ(microSDに書き込み起動ディスクとする)として提供する。当面は既存Linuxディストリビューションを活用するが、楽曲配信(自動ダウンロード)機能など独自にオープンソースソフトウェアの開発も進めるそうだ。

 なお、このコンソーシアムの設立はASCII.jpでも執筆中のIT/A&Vコラムニスト・海上忍氏が国内メーカーに働きかける形で実現したもの。同氏は設立合意に伴い、コメントを寄せている。

海上忍氏のコメント

 半導体・デジタルデバイスの微細化と高集積化は、オーディオ機器に革新と機能的進化をもたらしましたが、次第にコモディティ化の弊害が囁かれるようになりました。デジタルオーディオの将来を見据えたとき、そしてオーディオファンのエンスージアズムを考えとき、オーディオメーカーが取りうる手段はなにか。意外に感じられるかもしれませんが、ひとつの回答が「ワンボード(シングルボード)コンピュータ」です。

春のヘッドフォン祭 2016で海上氏が自作して展示していたラズパイオーディオの試作機

 ワンボードコンピュータをオーディオ機器のコアに据えることは、決して突飛な発想ではありません。半導体へのソフトウェアの組み込みが進む現在、コンピュータ的要素との棲み分け・役割分担を定めて「官能性が求められる音質設計の領分」が明確になれば、ーディオメーカーが追求してきた音に関する知見の継承・発展も見えてくるはずです。急速進化するソフトウェア/音楽配信にもキャッチアップしやすくなります。

 コアに採用するRaspberry Piは、USBやmicroSDなど豊富なI/Oを備え、ネットワーク機能やハイレゾ再生にもじゅうぶん対応しうる処理能力を持ちます。そのうえ外部配線では利用が難しい「I2S(Inter-IC Sound)」で内部コンポーネント間を接続できるなど、他のプラットフォームにはない音質上のメリットも期待できます。実際、Raspberry Piを利した再生環境を楽しむオーディオファンが急増しており、欧米ではRaspberry Piを内蔵しコンポーネント型オーディオも続々発表されています。

 当コンソーシアムは、ワンボードコンピュータという最新のIT/IoT技術を活用しますが、狙いはあくまで音質と快適な再生環境の追求であり、音という感性に訴える要素を「日本発の”育てる”オーディオプラットフォーム」という形でデジタル時代に残すことにあります。加盟社一同手を携え普及に向けた活動を推進して参りますので、どうかご期待ください。

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