クラウド型モデルも登場し、拡大を見せる電子カルテ領域。いま、医療はどこまでIT化が進んでいるのか。ASCIIによる最新情報を毎週連載でお届けします。
第7回テーマ:電子カルテ x 遠隔診療
現在、「事実上の解禁」となりつつある日本の遠隔診療。離島や僻地の患者だけにとどまらず、通院が困難な高齢者や、通院する時間を持てない多忙な人にも診療の機会がますます増えることになるだろう。
従来の遠隔診療といえば、高価な専用モニターやシステムが必要だった。しかし昨今では、スマートフォンやタブレットなどのデバイスが広く普及している。
当然電子カルテについても連携の可能性があり、さらに利便性の高い診療が実現する見込みだ。
果たしてクラウド電子カルテが遠隔診療に与える影響はどのようなものなのか、クリニカル・プラットフォーム鐘江康一郎代表取締役による解説をお届けする。なお、本連載では、第三者による医療関連情報の確認として、病院経営の経営アドバイザーとしても著名なハイズ株式会社の裵(はい)代表による監修も受けている。
遠隔診療サービスと電子カルテの一体化が進む
2015年8月に厚生労働省が発表した通知により、ビデオチャットなどによる「遠隔診療」が事実上『解禁』となりました。これ以降、多くの企業が遠隔診療に参入し、医療×ICTの業界では遠隔診療が1つの大きなムーブメントになっています。
各社サービスごとに多少の違いはあるものの、多くの遠隔診療サービスに共通している機能は、「予約」「問診」「ビデオ通話(診察)」「処方」「決済」です。まず、患者さんがオンラインで予約を取り、アプリ内に提示される問診票を記入し、その内容を踏まえてビデオチャットで医師の診察を受けます。その結果、薬剤が必要な場合は処方箋が出され、最後に診療費と薬剤費を含めた費用がクレジットカードにより決済されるという流れが一般的です。(2017年本稿執筆時点では、初診の遠隔診療は認められていません)
ただし、この遠隔診療サービスだけですべての診療が完結するわけではありません。現在リリースされている遠隔診療サービスは、診療所システム全体の中では、あくまで「周辺サービス」の位置付けとなります。
つまり、遠隔診療で行なった診察の内容を別途カルテにも記載する必要がありますし、処方の内容もカルテに記載しなければなりません。診療報酬点数の計算が必要な場合はレセプトコンピューターに入力をする必要もあります。
今後さらに遠隔診療が普及するにつれて、遠隔診療サービスと電子カルテの一体化がより進むものと考えられます。具体的には、遠隔診療サービスで記入した問診や処方の内容が電子カルテに取り込まれたり、診察内容を反映した結果がレセプトコンピューターで計算され、会計情報が遠隔診療サービスに転送され、決済までが一気通貫で行なわれたりするようになるでしょう。また、ビデオチャットの様子(動画)がそのまま電子カルテに記録されるなんてこともあるかもしれません。
遠隔診療サービスがクラウド上で構築されている以上、対応する電子カルテもクラウド型の相性が良いのは言うまでもありません。予約、問診、診察・処方(カルテ記載)、決済のすべてがクラウドサービスで完結する時代がもうすぐそこまできています。
記事監修
裵 英洙(はいえいしゅ)MD, Ph.D, MBA
ハイズ株式会社 代表取締役社長
1998年医師免許取得後、金沢大学第一外科(現:心肺総合外科)に入局、金沢大学をはじめ北陸3県の病院にて外科医として勤務。その後、金沢大学大学院に入学し外科病理学を専攻。病理専門医を取得し、大阪の市中病院にて臨床病理医として勤務。勤務医時代に病院におけるマネジメントの必要性を痛感し、10年ほどの勤務医経験を経て、慶應義塾大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)にてMBA(経営学修士)を取得。2009年に医療経営コンサルティング会社を立ち上げ、現在はハイズ株式会社代表として、各地の病院経営の経営アドバイザー、ヘルスケアビジネスのコンサルティングを行っている。
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