大阪に開発拠点をもつアイリスオーヤマがおもろい家電をつくっている。
21日に発表したのは3合炊きIHジャー炊飯器「RC-1A30-B」。炊飯器部分を外してIHクッキングヒーターとしても使える炊飯器。はずした炊飯器は電気ポットのように食卓に持っていける。価格は2万9800円、9月30日発売。
おいしく炊くことへのこだわりもすごい。炊飯器が重量計になっていて内釜に入れた米を炊くのに必要な水の量を正確に計測・表示できて、少量炊きでもおいしく炊ける。マイコン制御で米の銘柄にふさわしい炊きわけもできる。
ごはんを炊くたびに水の量を1cc単位で調節するのは手間だが発想はおもしろい。安い炊飯器でも高級炊飯器に負けないおいしいごはんを炊きたい、おいしいごはんを値ごろな価格で楽しんでもらいたいと発想したものという。
内釜は厚み3.1mm、内側はフッ素加工で、外側は保温性能が高いとされる銅コーティング。炊飯時の定格電力は800W、炊くときは中から外に向け対流を起こすことで炊きムラを防ぐ仕組み。IH調理器としての定格電力は1000W。
炊飯器部分をIH調理部から取り外したときは加熱源がなくなるので、保温は側面やフタに入っている断熱材で熱が逃げるのを防ぐシンプルなしくみ。IH調理器には鍋をのせて煮込みをしたり、揚げものをしたりもできる。
本体サイズは幅225×奥行き280×高さ212mm、重量は約4.2kg。IH調理機としての火力調節は約80~1000Wの5段階。揚げもの調理は約160~200℃で温度調節ができる。電源ケーブルは約1.5m長。
とても変態的で素敵だと思う。
最初に書いたがアイリスオーヤマの開発拠点は大阪にある。2009年に家電に参入してから4年目の2013年、大阪R&Dセンターを設置して大手メーカー出身技術者のリクルートをはじめた。目的は開発速度を上げるため。アイリスオーヤマらしい企画を出してから発売までにかかる時間を短縮する。いまは宮城と大阪に拠点を置いているが今後は心斎橋ビルに一本化して開発速度をさらに上げたいという。
同社の開発コンセプトは「なるほど家電」。消費者のお悩みをアイデア一発で解決する家電を作りましょうというコンセプトで開発を進めている。
同コンセプトからたとえば2つの調理面で2種類の料理が同時に作れる「両面ホットプレート」、電子レンジで餃子やシャケなどが焼ける「グリルクックレンジ」などのヒット製品が生まれ、今年度の売上見込みは600億円。同社の主力事業に成長した。LED電球などの照明、掃除機などの生活家電、炊飯器などの調理家電、扇風機などの季節家電を開発している中でもいま注力しているのが米まわりだ。
アイリスオーヤマが米にこだわりはじめたのは東日本大地震がきっかけ。宮城に本社を構えるアイリスオーヤマは「農業の復興なくして東北復興はない」というかけ声のもといきなり精米事業をはじめ、世界最大規模の精米工場を設立。自社で精米した東北の米をパック米のような形で販売してきた。
精米事業を通じて得てきた米の研究成果を活かして「米屋の家電」を作れれば他社にはマネのできない製品ができるはずであるという考えのもと、米家電に力を入れるようになったという流れだ。ちなみにアイリスオーヤマでは「米蔵売り場」と呼ばれる販売用什器をつくって米や炊飯器や精米機を同時に売っている。
このごろよく思うが家電というのは基本的に庶民の生活をたすける道具であって金持ちを喜ばせる嗜好品であってはならない。もちろん最新鋭の機能を搭載すれば多少値が張るのは仕方ないところもあるのだが限度はある。印象が変態的であっても「なるほど」と納得できる製品が安く手に入るなら大歓迎だ。
まあアイデアがいいだけでなく納得のいく完成度にできているかどうかは実際に使ってたしかめてみたいところなのだが。ともあれおもろい製品である。
盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、記者自由型。戦う人が好き。一緒にいいことしましょう。Facebookでおたより募集中。
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