iPhone7/7Plus現地実機レビュー 海外SIMフリー版に注意、Suicaが使えるのは国内版だけ!
9月7日(現地時間)、アップルはサンフランシスコ市内で開催したスペシャルイベントにて、日本のファン待望の電子決済FeliCaに対応し防水になった『iPhone7』、『iPhone7Plus』、そして新『AppleWatch シリーズ2』などを一挙に披露した。
iPhone7は、デザインがまったく新しいとか、素材が特殊であるといったようなことはない。デザインはあくまで6sシリーズをキープコンセプトだ。しかし、その中身のソフトウェアやセンサーをごっそり最新世代に変え、ユーザー体験を別物に進化させたというのがiPhone7の特徴だ。
待望のFeliCa/Suica対応、海外のSIMフリー版iPhoneを購入する際は注意
例年にも増して、まさにいろいろな事前リークが飛び交った今回のiPhone7発表。
発表会冒頭、任天堂の宮本茂氏がサプライズ登壇してスーパーマリオの完全新作『SUPER MARIO RUN』のお披露目。これで"事前リークの間違い探し"的な予定調和のムードは一撃で吹き飛ばされた。
今回、FeliCa/Suica対応はかなり確度の高い情報として新聞系メディアがかき立てたりもしたが、その壇上での発表のされ方は想像とは全く違った。
壇上であそこまで大きく、おそらく日本人以外の大半は聞いたことがないだろう「Suica」の名前と、ペンギンのマークが会場の巨大スクリーンいっぱいに表示されるとは誰も想像しなかったんじゃないだろうか。
ハンズオン会場でも、日本メディアの話題の中心はFeliCaとSuicaがどのように使えるのか?という点だった。
まず、前提として注意が必要なのは、Apple PayのFeliCa対応は日本向け端末固有の機能だということ。たとえばアメリカで購入したSIMフリーiPhone7を日本に持ちこんでも、FeliCa対応にはならないのだ。
日本国内で購入する分には、キャリア版、SIMフリー版ともにFeliCa/Suica対応仕様だから、「iPhoneでSuica機能が使いたいなら、必ず日本版を買う」ということは覚えておきたい。
これらの電子決済対応について、アップルは現地で"おサイフケータイではない"と説明していた。
日本のApple Pay公式ページに「iPhone 7にはSuicaが使えるApple Payが組み込まれています」とあるように、アップルとしてはあくまでApple Payの1機能としてSuica(とFelica)を取り込んだのであって、"おサイフケータイとは違うもの"という立場をとっているし、事実違うものだという。
Apple PayとSuicaや対応クレジットカードの関係性は、「手元にある電子決済の物理カードの機能を、iPhoneに取り込んでしまうもの」という理解が一番わかりやすい。
たとえば、物理的なSuicaのカードを純正の"Walletアプリ"でスキャンすると、Walletのなかに物理的なSuicaカードの残高や、通勤通学定期の情報も転送される。すると、文字どおりiPhoneがSuicaカードそのものになってしまう。
Suicaの場合、情報が転送されると古い物理カードは瞬時に無効になる。
お財布に入れた物理的なクレジットカードをすべてスキャンしてしまえば、あとに残るのは小銭だけ。「外に出かけるときの買い物体験が全く変わる」というのがアップルのメッセージだ。
実際には現金決済しかできない飲食店はまだまだあるから現金不要とまではいかないものの、都市圏なら財布を出す機会は大きく減ることになる。
Suica機能の使い方は、Apple Payと組み合わせるクレジットカードの有無によって変わってくる。
・対応クレジットカードを持っている場合
→Walletアプリからその場で操作して、Suicaにいつでもチャージ
→ビュー・スイカカードを取り込んだ場合はオートチャージの設定も引き継がれる
・クレジットカードを持っていない場合
→コンビニなどのかざすタイプのチャージ端末で現金からチャージ
どちらの場合でもSuicaを使うときはスリープ状態のまま、ただかざすだけで決済を完了できる。通常、Apple Payでは指紋認証(Touch ID)をしてから決済をする仕組みだが、アップルによれば、Suicaの実装のために、スリープ状態でもSuicaが使える日本だけの特殊な仕組みを用意したという。
逆にいえば、通常のApple Payの仕組みを、なかば無理やり変えてでもSuicaに対応させてきたわけで、アップルの肝入りぶりがよくわかる。
この機能は、iPhone7発売から1ヶ月後の10月後半に利用が開始できる予定だ。
タップティックエンジンで駆動する新しいホームボタン
さて、実機をまじまじと触ってみると、本体のサイズや画面の大きさは6s/6sPlusとまったく変わっていないだけに、目を閉じて手に持つと違いはほとんどわからない。スペック上は7は5g、7Plusは4g、それぞれ軽量になっているものの、この違いが感じられる人は少ないだろう。
表側の見た目は、従来とほぼ変わらないが、初めてIP67の防水防塵対応になった上に、ステレオスピーカー仕様にもなっている。
さらによく見ると、ホームボタン周辺の造形が微妙に変わっている。ホームボタンは今回から、MacBookシリーズと同じような、タップティックエンジンによる"擬似的なクリック感"になった。触った際の第一印象は、MacBookのソレと同じで、なんとも不思議な感覚。物理的には一切動かない"板"なのに、ちゃんとクリック感がある。とはいえ、違和感がないかと言えば、やっぱり物理的なボタンの感触とは別物。少し慣れるのには時間がいるかもしれない、そんな印象だった。
カメラ性能にこだわるなら、iPhone7は迷わずPlusを買うべきだ
本体に触れて6sシリーズとの違いを見ていくと、まず気づくのはカメラのレンズ周辺のデザインだった。カメラは、レンズがより明るく(6s:F2.2→7:F1.8)、そして光学式手ぶれ補正が全モデルで標準搭載になった。
iPhone7シリーズでは、6s時代のレンズ部分が飛び出た形状を本体デザインとして取り込んでしまい、レンズ周辺を強調した立体的な形状としている。望遠/近接のデュアルレンズ仕様となったiPhone7Plusのみならず、無印のiPhone7でも、パッと見でぐっとレンズが大きくなったように感じる。
従来のiPhone6シリーズでも、"Plusは無印に比べて高画質"なことを強く打ち出していたが、iPhone6s/6sPlusの差に比べて、7/7Plusのカメラ性能の差はずっと大きい。そして、よりユニークだ。
7Plusのカメラには、望遠側のデュアルレンズを使った"ズーム機能"と、一眼カメラのような背景ボケを擬似的に実現する"ポートレートモード"の2つが大きな特色になっている。
ズームはカメラアプリを起動して、シャッターボタンのすぐ上をタップすると、"2x"に表示が変わって、光学の2倍ズームに切り替わる。そのまま画面上のズームダイヤルを回転させると最大10倍までのデジタルズームへとシームレスに変化する。
このズーム操作は動画の録画時にもそのまま維持される。会場内では画質を語れるレベルのレビューはできなかったが、使い勝手はなかなか良さそうだった。
個人的に注目しているのは、一眼カメラなみの美しい背景ボケをつくるポートレートモードの機能だ。この機能は発表会の場で"スニークピーク(=チラ見せ)"として紹介させた開発中の機能だけあって、ハンズオンでも操作はできず、実機の画面で複数の作例を見られるにとどまった。
ただ、作例を見る限り、写り具合は非常に好印象だ。明らかにこれまでの"一眼カメラ風の背景ボケフィルター"とは一線を画す自然な表現なのだ。
発表会の中では、マシンラーニング(おそらくは深層学習=ディープラーニング技術)で被写体を認識して、後ろの背景をボカすという処理をしているという趣旨の説明をしていた。この処理が具体的に何をやっているのかは、作例の近接画像を見るとおぼろげながら見えて来る。
たとえば右の女性の髪と、煉瓦造の壁の背景を見てみてほしい。髪と背景の境目の処理は人間の手作業でもかなり難しい処理だが、相当自然に背景ボケ処理ができている。ただしごく一部、女性の髪の隙間から見える"ベランダの柵"を見比べると、周囲を髪で囲まれているためか、柵がほとんどボケていない部分がある。とはいえ、全般的な完成度はかなり高い。
個人的には、Androidも含めて背景ボケフィルターは、見た目の不自然さがどうしても気になってあまり使ったことはなかった。けれども、この作例のような美しさが実際のポートレートモードでも使えるなら、ちょっとした写真なら一眼カメラなしで済みそうな完成度はありそうだし、積極的に使ってみたい。
ちなみに7/7Plusの液晶ディスプレイは、色域が従来より広くなっているため、表現できる色そのものもよりビビッドで幅広くなっている。これはハンズオン会場の目視でもわかるレベルだったから、iPhone7では写真を撮るのも見るのも、数段心地のいい体験ができるようになるはずだ。
賛否両論あるイヤホン端子の廃止、そして『AirPods』
iPhone7では、かねてからの噂どおり、イヤホン端子が廃止された。アップルはこれまでもこういう思い切った判断をすることがたびたびある。MacBookのコネクターを小型のUSB Type-C1基だけにしたことは記憶に新しい。
イヤホンジャックの廃止は賛否両論あるが、実際のところ、評価はその人の使い方による部分が大きい。僕の使い方では、音楽再生はほぼすべてBluetoothイヤホンだから、あまり不便さは感じないが、社外品の高音質有線イヤホンを使っている人には、変換コネクタを持ち歩くという一手間が増える。
そのときに気になるのは標準で同梱されるLightning to イヤホンジャック変換コネクタだ。実物は思ったより随分と華奢だった。当然、アップルも配慮はしているはずだが、簡単に断線しなければいいんだけど……という心配はさすがによぎってしまった。
アップル純正として久々の新作の音楽アクセサリである『AirPods』は、これまでの純正イヤホン『EarPods』を再構築してBluetoothで無線化したものだ。外観はちょうどEarPodsからケーブル部分を取り去ったようなデザインだ。
AirPodsのペアリングは非常に簡単で、端末の近くに置いてケースの蓋をあけると、iOS10がAirPodsを感知して、自動的にペアリングが完了する。
ハンズオンで実物を試聴していみると、音質まではよくわからないものの、耳から外すと音楽再生が瞬時に自動停止したり、指先でPodsをダブルタップするとSiriが起動する、といったことが体験できた。
気に入ったのは保護ケースで、そのままモバイル充電器になっている(最大で累積24時間ぶんの充電が可能)。AirPodsをある程度差し込むと、磁石で吸着するようにカチッとハマるのは、さすがのアップルらしい心地良さの演出。1万6800円という価格も、このタイプの両耳独立型のワイヤレスイヤホンとしては、まずまず手頃なんじゃないだろうか。
円高の恩恵を受けて、32GBモデルが8万5800円から
iPhone7に触れて不思議に感じるのは、iPhone7Plusのデュアルレンズが珍しい(といってもiPhoneが初ではない)というのはあるけれど、外観はあくまでいつものアップルクオリティを維持しながらも、まるで昔から自分のモノだったかのように当たり前に手元に収まっている。初めて触ったのに、どこにも違和感がない、そんな印象だ。
そんな端末だからこそ、iPhone7はヒット作になる気がする。
この2016年9月は、名機だった5sユーザーと6sに買い換えなかったiPhone6ユーザーが次の端末を検討する絶好の時期だ。そのタイミングで"Suica対応"に加えて、円高を追い風にしての価格設定というお買い得感はやはり強いカードだ。
iPhone7の国内SIMフリー版が32GB番で7万2800円から。iPhone7Plusは32GB番で8万5800円からだ。6s世代が16GBで8万6800円(6s)/9万8800円(6sPlus)からのスタートだったことを思うと、容量も性能も大きく上がって、それでいて価格は1万円以上手頃になっているということになる。
さらにキャリア版は当然、ある程度意欲的な価格設定になるはずだ。最上位モデルの256GBは確かに気になるが、実はエントリー機種の32GBモデルが、ユーザーに鋭く刺さるんじゃないか、そんな気がしている。
■関連サイト
iPhone7公式サイト
Apple Pay
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります