週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

UEI・清水亮氏と角川アスキー総研・遠藤諭氏による対談

「プログラミングは小学生からするべき」清水亮氏・遠藤諭氏が語るその理由

2016年08月22日 19時30分更新

文● 清水亮遠藤諭 編集●ASCII.jp

人工知能には性別が必要?
有料のプログラミング教室の参加者は女子小学5年生だった

清水:最近いちばん驚いたのは、子どもを集めてプログラミング教えるというのをやっているわけですけど、応募してきた人たちの男女比を当てられる?

遠藤:いや、わからない。

清水:ちょっと当ててみて、想像してくださいよ。

遠藤:どうなの?

清水:女子しかいない。

遠藤:ほー。

清水:それですごい驚いてなんでだろうと考えたんですよ。コンピューター技術者の子どもは女の子が多いっていうじゃない。昔なんか電磁波の影響があるとかないとか……でそれなのかなって思ったら全然そうじゃない。

遠藤:プログラマーの子どもたちじゃないんだ。

清水:実は、わざとネットでは告知しなくてどんな手段が有効か試す意味で新聞の折り込み広告で集めたんですね。折り込み広告をみて、女の子が自分で両親にやりたいってやってきたということなんです。有料のセミナーです。

遠藤:何年生?

清水:それがなぜか、みんな小学校5年生。

遠藤:それでも、理由わかるなぁ。

清水:なぜ?

遠藤:角川アスキー総研は、アンケートとかヒヤリング調査とかで子どもも聞くことがあるわけですよ。たとえば、KADOKAWAの小学生向けの歴史マンガが売れてますけど、あれをつくる前に小学生のヒヤリングをうちでやったのですよ。

 その手のことをやると、男の子の成長が遅いというのを痛感させられます。女子が言い出して引っ張ることがよくある。「Hello Ruby」(日本題「ルビィのぼうけん」翔泳社刊)というプログラミングがテーマの話題の本が、女の子が主人公というのが物語っている。そういうところに、プログラミングがなってきている。

清水:なるほど。最近の子どもはマインクラフトにハマってるわけ。で、マインクラフトもよくよく見るよ女の子の方がハマってるように見える。ボクの周りだとね。ボクのやってるサーバーはボクの知り合いの娘さんと知り合いが一緒にログインしてきてる。もう1年以上やってんだけどね。

遠藤:うんうん。

清水:ところが、プラモデルをつくる趣味って女の子にはないんだよね。

遠藤:たしかに、聞かないね。

清水:で、男って実は……これ人工知能のプログラミングを最近やって思うんだけど、人工知能って性別が必要なんですよ。

 男っぽい人工知能と女っぽい人工知能が必要だと思ってる。で、男ってルールの中で戦うことが好きなんです。長いものに巻かれる。組織で出世するとか社会で出世するっていうルールがある枠組みっていうか、その中で一番を目指す。みたいな生存本能が男にはある。

 そうすると、プラモデルってルールじゃないですか。この通りつくりなさいよと。女の子ってそうじゃなく、コツコツと自分だけの素敵な世界をつくったらそれが満足だから割と手芸とかするじゃないですか。

 で、この間、「カレーがまずい」奥さんの話というのを聞いたのですよ。その奥さんは普段の料理は美味しいんだけど、カレーだけはまずくなっちゃう。

遠藤:カレーは男の料理だからね。

清水:それは話が違うんだけど、カレーごときが、なぜまずくなるのかというと、その奥さんはアレンジしちゃうらしいんですね。

遠藤:ああ、それはもう少しわかりやすい例があって、いまや世界中から見物客が来る地獄谷の温泉に入る猿。何号か前の「ニュートン」を読むといいんだけど、猿がみんな入るのかというと子どもとメスしか入らないんですね。オスは入らない。

清水:なんでですか?

遠藤:メスのほうが新しいことができる。オスはサル山の頂上にいて、それを守るとか戦うとかのほうに熱心なわけですよ。サル山を、プログラミングにたとえても、料理にたとえてもあてはまる。

清水:なるほど。話を戻すと、女の子たちに教えていてある程度できてきて「次に何をつくりたい?」ってアンケートを取ると、「シューティングゲーム」とか返ってくる。

 シューティングゲームって男の子が遊ぶものばっかりだと思っていたら、実は、女の子のほうがシューティングゲームをつくりたいんだみたいな。成蹊大で授業をしていても女の子の方楽しんでやってる。ところが、男は、そこで勝ち負けにこだわるんですね。

遠藤:どうなる?

清水:男は、ゲームをつくるとするとやっぱりプロのつくった本物に勝てないじゃん。だから、自分が最強になれそうな領域を探しちゃうんですね無意識に。女の子は、自分の素敵な世界をつくれればいいんだけど、男は画期的なものをつくりたがるというのかな。

遠藤:勝ち負けにこだわって、画期的なものにいって失敗を重ねるもいいじゃないですか(笑)。

 そういう冒険にあふれた地平が、いまやプログラミングの世界の中にあるわけでしょう。だから、ちょうどそこで新しいビジネスを考えた人たちが世界を動かしはじめているように、そこで遊んだり、学んだりしない手はないんだね。プログラミング教育というのは、たったそれだけのことだというのが大事だと思うんだけどねぇ。


 「第1回全国小中学生プログラミング大会」は、子供たちが自分でつくったプログラムを応募して、そのアイデアやプログラミング技術、完成度を競うものだ。特定のプログラミング言語などに限定せず、応募規定ではオリジナルのプログラムとしているが、改良してあれば夏休みの課題でつくった作品をもとにしてもよい。

 なお、第1回の募集テーマは「ロボットとわたしたち」だが、かならずしも物理的なロボットをつくるコンテストではない。

 ロボットをテーマに、ゲームやムービーを中心としたコンテンツ的な作品など、ScratchやViscuitなどで純粋にソフトウェアとして作られた作品も想定している。もちろん、Rasberry PiやLEGO Mindstormsなどのハードウェアを使った作品も対象となる。

実施概要

■主催:全国小中学生プログラミング大会実行委員会

■後援:総務省(予定)、朝日新聞社、秋葉原タウンマネジメント株式会社

■大会実行委員長:稲見昌彦(東京大学 先端科学技術研究センター教授 )

■審査員委員長:河口洋一郎(CGアーティスト、東京大学大学院情報学環 教授)

■審査委員:
 金本茂(株式会社スイッチサイエンス代表取締役)
 増井雄一郎(株式会社トレタCTO)
 松林弘治(エンジニア/著述家、Project Vine 副代表)
 林千晶(ロフトワーク代表取締役)
※50音順・敬称略

■テーマスーパーアドバイザー:高橋智隆(株式会社ロボ・ガレージ 代表取締役社長、東大先端科学技術研究所特任准教授)

■募集テーマ:「ロボットとわたしたち」

■募集内容:PC、スマートフォン、タブレットで動作するオリジナルのプログラム。開発言語、ツールは問わない。

■応募資格:日本在住の6歳以上15歳以下の小学生・中学生(グループで応募する場合は3人以下)

■応募費:無料(応募までにかかる費用は自己負担)

■応募期間:2016年8月20日(土)~2016年9月15日(木)

■応募方法:以下の公式サイトより応募規約を読んだ上ご応募ください。
http://www.lab-kadokawa.com/jjpc/

清水 亮 (しみず りょう) 株式会社UEI代表取締役社長CEO

1976年長岡市生まれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。'03年より独立し、現職。'05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。VR、人工知能など最新のテクノロジーに取り組む一方、独自のビジュアルプログラミング言語“MOONBlock”の提供などプログラミング教育でも熱心な活動をしている。

遠藤諭(えんどう さとし) 株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員

1956年長岡市生まれ。プログラマーを経験後、1985年アスキー入社。1990年より『月刊アスキー』編集長。その間、プログラミングの入門記事やプログラミング言語に関する企画を担当。株式会社アスキー取締役などを経て2013年より現職。2003年より“全国高等学校パソコンコンクール”(パソコン甲子園)の審査員を務めるほか、TechCrunchジャパンやNTTドコモなどのハッカソンの審査員、IT関連の委員会等の委員をつとめる。著書に『新装版 計算機屋かく戦えり』(KADOKAWA刊)、『NHK ITホワイトボックス 世界一やさしいネット力養成講座』(共著、講談社)など。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この特集の記事