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ヘッドセットとスマホアプリで脳波から56種もの微細な感情を読み取り

脳波ビジネスに驚き 感性で革命を起こすリトルソフトウェア

夢は感性の「ワトソン」のような存在

 リトルソフトウェアでは「アルゴリズム自体も大切だが、それを使ったビジネスの普及が重要」(藤井氏)という考えで、リトルソフトウェアのアプリはAPIの形でオープンソースにして、どんな企業でも自由に使えるようにすることも考えている。

 脳波ビジネスの市場を開拓するため、まず業界の先駆者としておもしろいサービスやコンテンツの創出が求められる。一度サービスを立ち上げれば、その凡例をみて追従する新しい事業が生まれてくると想像してのことだ。川原氏のアルゴリズムが脳波業界のスタンダードとなりうる。

 「感性の『ワトソン』のようになるのが夢」(川原氏)

 ワトソンとは、米IBMが開発した人間の使う自然言葉を理解する人工知能。APIが公開されて以来、ワトソンを搭載したアプリが急ピッチで開発され、続々と公開されている。ワトソンと同じように、感性測定の基礎として使われるのを願うウラには、「ウェアブルの脳波測定は、もう遅い」という考えがある。

 「リーディングカンパニーといえるのかわからないが、注目を集めているのは確か。いまは各社製品の開発段階での用途として使われているが、次のフェーズではBtoCのビジネスを想定している。そのときには、デバイスは進化してさらに簡易的なものに代替されているだろうし、脳波計が存在しない非接触型になる可能性も十分にある。脳波だけでなく、いろいろなデータを相関させて、人の感性をとらえていくようになるはず。だが市場に認められる感性ビジネスが産まれなければ、そもそもデバイスは進化しない」と藤井氏は語る。

 リトルソフトウェアが端末やアルゴリズムを独占せずにオープンソース化することで、企業はハードウェアさえ準備すればすぐにもサービスを開始できるようにすれば、先行投資と研究期間が減り、市場が活性化するというもくろみだ。

 感性と音楽を組みあわせたエンターテインメントビジネスや、マッチング分野でのサービスも想定しているが普及戦略は藤井氏が担っていく。「マッチング分野では婚活や就職活動の際の第一印象など、本人も気付かない本音を定量的に出せるのがおもしろいところ。脳波はとても汎用性が高いため、2016年内はどの分野に注力するのかしっかり検討をして、来年以降の収益の柱となるビジネスの準備をしたい」(藤井氏)

 一方で、川原氏の脳波研究はこれからも続く。

 最近では測定したデータの解析依頼の需要もあるという。脳波計を導入して測定したはいいが、膨大なデータが集まりすぎて使い切れないという企業も多いようだ。

 また、研究では使えないと判断され捨てられていたデータであっても、川原氏はあえて捨てずに残しておいたところ、後にそこから発見もあった。

 この川原氏の、どこまでもとことんデータを読み解こうとする意欲を、藤井氏は「フロンティア精神」「研究者魂」「解析者の意地」とたたえている。

脳波による感性ビジネスの真価はここから始まる

 脳波の始まりは1875年、イギリスの科学者リチャード・カートンがウサギと猿の脳から電気活動を発見したところから。日本でも長く研究されており、医学や心理的なデータとして使われているが、日常生活にはまだ遠く及んでいない。そもそも、脳波を計る体験自体をした人がまれなはずだ。

 だが計測デバイス自体の発達に加えて、スマートフォンとアプリの存在がすでに大きな影響を及ぼしている。感性アルゴリズムの存在はもちろん大きいが、計測が気軽になったことで、リトルソフトウェアのビジネスは厚みを増した。

 実際に同社のアプリを体験してみると、気楽な計測の一方で想像以上に反応があり、脳波について持っていたイメージが変わった。ちょっとした「サトラレ」体験の一方で、眠気がわかるといったぼんやりとしたものではない、感情に関わるものなら何でも応用できそうなところに可能性が感じられる。あとは現状のリソースの中から、リトルソフトウェアが何を選んでいくのかが気になるところだ。

 なお、このような脳波ビジネスが日本のスタートアップから生まれたところにもじつは理由がある。

 「データはまだまだ取り続けたいと思っている。数十万件のデータの中でも、まだ1人しか見つけていないレアなものは意味付けができていない。おもしろいことに、感情は56個あっても、日本人の脳は9パターンの分類に収束してしまう。あるパターンの人はさまざまな感情を持っていて56個全部を出せるけれど、あるパターンの人は感情表現が難しいのか20個位しか出せないことも。今は測定器を体に付けた状態でしかデータを取れないが、もし非接触のデバイスがあれば、もっとたくさんのデータを取得できるはず」(川原氏)

 このアルゴリズム上で分類した56個の感情は日本人特有のもので、外国人が持っていない感情も多い。海外の感性研究者は、感性を英語で表現するときに「Kansei」という言葉を使用することも増えているという。強くはっきりした感情が出てくる海外の一方で、日本ではあいまいな感情が多い。そのため、例えば日米ハーフの場合、両方の感情を持っているため、日本人とは違った感情のパターンになる。データ数を増やしていけば、脳のパターンも9以上になるそうだ。

 言葉や文化が異なる国際交流や国際的なビジネスは、感情さえ読み取れればもっとスムーズになるかもしれない。リトルソフトウェアの技術がこれからどんなサービスに展開するのか、こうご期待だ。

●株式会社リトルソフトウェア
2014年1月14日設立。脳波等のバイタルデータを解析して「感性」に翻訳する技術を用いて、製品利用評価や各種サービスを提供するスタートアップ。
自己資本が主で、調達などは未実施だが、連携している企業とのジョイントベンチャー設立や上場を狙う。
社員数は2016年6月現在で6名。直近では、東京都とトーマツが展開するASAC(青山アクセラレーションプログラム)の第2期生に採択されている。

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