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FastSyncにSMP、新SLI、神スクショ機能“Ansel”など、性能だけではないGTX1080の真価

2016年05月21日 17時00分更新

「Ansel」でゲームの決定的な瞬間の“ジオラマ”を作る

 近年ゲーム画面のクオリティーが高まるにつれ、ゲームのスクリーンショットを“いかに美しく撮るか”に挑戦するゲーマーが増えてきた。画質設定を最高まで上げ、時には『NVIDIA Inspector』などの独自ツールで画質を盛りに盛って撮影する……いわば究極の美を切り取る“ゲーム内写真家”のようなもの。こうしたユーザーのためにNVIDIAが準備を進めている機能が「Ansel」だ。

 Anselはゲーム中に特定のショートカットキー(開発版では[Shift+F3]キー)を押すことで専用のUIがゲーム画面上に出現する。Anselではディスプレーの物理解像度以上(最大で縦横32倍、ドット数は1024倍)の解像度で撮影可能なほか、ゲーム側のカメラ位置をAnsel側で乗っ取り、好きな場所から撮影できるのだ。せっかくスクリーンショットを撮っても、手前に邪魔なキャラが入り込んでしまったり、角度がイマイチ……ということがあるが、Anselを使えば、決定的な瞬間を自分の好きな場所から撮影できるのというわけだ。

 さらにAnselは360度ショットや、360度ステレオショットも撮影可能。つまり、ある瞬間においてゲームの世界では何が起きていたかを自分の好きな視点を中心において見回すことができるのだ。360度ステレオ画像はHTC『Vive』などのVRヘッドマウントディスプレーはもちろん、Google『Cardboard』といったスマホVRに画像をコピーすることでも鑑賞できる。ゲーム世界のジオラマに入ったような体験ができる360度ステレオショットは圧巻の一言。ボス討伐の瞬間をぜひAnselで残しておきたくなるだろう。

Steamで販売されているパズルゲーム『Witness』の特別ビルドを使ったデモ。これがAnsel発動直前のゲーム画面(続く)。

(続き)Shift+F3キーを押すとAnselの操作パネルが出現。この時点でゲームは一時停止する。カメラはW/A/S/Dで前後左右、U/Jで上下、マウス操作で首振りなど、カメラを自在に動かせる。

高解像度で撮りたい場合は「Capture Type」を「High Resolution」にセットし、解像度を選択。フルHD液晶を使っている場合は最大61440×34560ドット(フルHDの32倍)、およそ21億画素のスクリーンショットとなる。

スペシャルイベント会場で見たAnselでは、ビネット効果をつけて高解像度を指定するとつなぎ目が見えてしまうというバグもあった。小さなスクリーンショット(この写真では縦横24倍)をたくさんつなぎ合わせていることがよくわかる。

Anselでサポートする(予定の)特殊効果一覧。セピアトーンやレンズフレア、フィルム撮影風の効果などが揃っており、まさにPCゲーム界のInstagramと言える。

NVIDIAによれば、アクションRPG『ウィッチャー3 ワイルドハント』はDLCでAnselに対応するようだ(具体的なDLC名は明かされなかったが、次の“血塗られた美酒”だろうか……?)。カメラは通常主人公のゲラルドの背後に固定されているが……(続く)

(続き)Anselはカメラ位置の制御を奪うので、ゲーム中だと簡単には回り込めないゲラルドの真正面アオリ気味のアングルからでも撮影OK。ああ、これが女性キャラったら……と想像していただきたい(下品)。

360度ショットを撮るとこんな感じ。ちなみに360度ショット時の解像度は8192×4096ドット、360度ステレオだと8192×8192ドット(フルHD環境時)に制限される。

GTX1080を発表したスペシャルイベント会場に展示されていた絵(10m前後はあったはず)は、Anselで『ウィッチャー3』を45億画素で撮影、トリミングした20億画素の画像をプリントしたもの。これがどう凄いかのと言うと……(続く)。

(続き)赤丸印の兵士の顔はスマホ(iPhone 6)よりやや大きい程度。襟の部分にテクスチャー由来のジャギーが見えるが、ヘルメットや肩の輪郭などには一切ジャギーが見えない。

さらに拡大しても、ほとんどドット感が感じられない。強烈なアンチエイリアスがかけられているためだ。むしろここまで拡大すると、普通は見えないポリゴン分割のアラが気になるが……。

 この機能を活用すれば「やっほー!ゲームキャラのパ○チラ撮り放題じゃん!」と考える人もいるだろう。だが、Anselではカメラワークはゲーム側で制限することもできる。性的表現云々のほかにも普通は見えない所が見えるとネタバレになる場合、“通常見えない部分にはポリゴンがない”場合はカメラを完全フリーにするとマズいゲームもあるだろう。Anselのカメラワークは、そうしたゲーム側の制約も尊重できるのだ。

 そして、ゲーム側の制御を奪う関係上、Anselはゲーム側での対応が欠かせない。Ansel対応は非常に楽(短ければプログラムに40行程度のコードを追加するだけ)という側面はあるが、ゲームを一度ポーズする必要がある以上、MMOや格闘ゲームのようなサーバーとのシンクロや他人とのインタラクトが必須のゲームでは実装できない場合も出てくる(もしくは、ソロプレイ時のみAnsel可能にするとか)。しかし、非常に面白い機能なのでぜひとも対応ゲームが増えてほしいものだ。

AnselはGPUドライバーとゲームの間に入って実行されるため、ゲーム側も必要とあらばAnselに制御を渡せるよう設計されていなければならない。DirectX12やUWPアプリといったAnsel用UIのオーバーレイ表示がやりにくいゲームでも動作できるよう開発中のようだ。

現在わかっているAnsel対応ゲームはそれほど多くない。『The Division』や『ウィッチャー3』は既存のタイトルだが、現時点でのゲームとβドライバーではAnselが機能しなかった。

 FastSyncがGTX1080専用である一方で、AnselはGTX680以降のGPUでも動作するという点も魅力的だ。しかし、Anselで物理解像度を超えるスクリーンショットを撮る場合は、“DSR”のように超高解像度画像を一気にレンダリングして出力するのではなく、画面を最大32×32枚の写真に分割して撮影し、それをつなぎ合わせて出力する。

 この時、色やライティングのトーンが均一になるように、CUDAコアを使って補正をかける。解像度を最大にすると、ファイルが生成されきるまで数分かかる(ストレージ性能にも依存する)うえに、CUDA処理の段階でも相当量のVRAMを使うことが予想される。VRAMの少ないGTX960などで最大解像度撮影を行なえば、かなり待たされてしまいそうだ。この点でも、VRAMが8GBと余裕があるGTX1080が断然有利、と言えるだろう。

超高解像度で撮影する場合は、分割したブロックごとにカメラを移動させて撮影する。そうするとライティングやカラーのトーンが変化してしまうが、CUDAコアを使って自然に見えるように処理を行なうのだ。

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