El CapitanとWindows 10をハイパーバイザー型でデュアルブート
さらに興味深いのがMacのシステム。東大がそもそもMacを導入したのはUNIXベースのOSだったからなのですが、そうはいってもWindowsでしか動かないアプリもあります。というわけで、今回の導入(次期教育用計算機システム、ECCS2016)ではOS X(UNIX)もWindowsも動くMacをチョイスしたとのことです。っと、ここまでの話だと「Boot Camp環境を利用してWindowsを使うんだろうなぁ、なんか、ふつーだなぁ」と思いました。
この点について、東京大学 情報基盤センター 情報メディア教育研究部門の柴山悦哉教授が解説してくれました。Boot Camp環境上のWindowsはシステムを終了すると本来記録されるべきはずのタイムスタンプを消してしまうなどの問題があるそうです。多数のMacを多数の学生が使う環境においては、タイムスタンプの情報がなくなると管理に支障をきたすとのことでした。
Boot Campを使わないということは、つまり仮想化しかありませんよね。そこで柴山教授に「VMwareやParallelsなどの仮想化アプリでWindowsを動かしているのですか?」と聞いたところ、「違います。ブイスリーを使っています」とのことでした。
「えっ、ブイスリー?V3って何?」と頭の中が疑問符だらけになりましたが、柴山教授から出た「ビットバイザー」というキーワードでバッチリつながりました。BitVisorというのは、株式会社イーゲルと東京大学情報基盤センターが共同開発している純国産の仮想化システム。Intel VT(Intel Virtualization Technology)や AMD-V(AMD Virtualization)に対応したプロセッサー上で稼働します。
このBitVisorを製品化したものが「vThrii」(vThrii Seamless Provisioning)だそうです。V3ではなくvThriiだったわけです。
2004年当時に東大に導入されたMacはPowerPC時代のiMac G4だったので、仮に当時BitVisor/vThriiがあったとしてもx86プロセッサーでないMacでは動きませんでしたね。また、iMacがIntel-VTの機能を備えるNehalem(Lynnfield)プロセッサーを搭載したのは、2009年に登場したモデルでした。ちなみにBitVisorの開発が始まったのも2009年です。
一方、アップルのソフトウェア使用許諾契約が変更され、クライアント版OS XをMacハードウェア上の仮想マシンで稼働させられるようになったのは、2011年7月にリリースされたOS X Lion(10.7)が最初でした。
東大へのMac導入の3期目にあたる2012年度には一応は条件は揃っていたことになりますが、マシンのリプレース計画は導入の半年前ぐらいに決まるため、実際には間に合わず、4期目を迎える今回のリプレースで満を持しての搭載になったと思われます。
vThriiはハイパーバイザー型の仮想化システムで、OS XやWindowsはサーバーからイメージファイルとしてクライアントマシンに配信され、クライアントマシンはローカルに配信されたイメージファイルからマシンを起動するという仕組みを採っています。
このシステムによって、往年のNetBootのようにOSのアップデートなどを深夜に自動実行できるなど管理効率が優れている点が特徴です。深夜だけでなく、学生が使っている日中でもバックグラウンドでバージョンアップされたイメージファイルを送り込み、次回起動時にバージョンアップしたOSに切り替えるという芸当も可能とのこと。
ただしバージョンアップについては、「セキュリティーアップデートやマイナーバージョンアップは、このシステムを使って配信するが、基本的にはメジャーアップデートはすぐにはやらない」と柴山教授。理由は一般企業とほぼ同じで、学内で利用しているアプリやシステムなどが動かなくなる可能性があり、検証に時間がかかるからだそうです。そのため、2年程度は同じバージョンのOSを使うとのこと。ここで問題になるのがXcodeだそうで、iOSアプリの開発には最新のOS Xと最新のXcodeがセットで必要になってくるため、学内のマシンを開発環境にするのは難しいとのことでした。
ちなみに数年前までは、OS XでParallels Desktopを稼働させてその上でWindowsを動かしていた時期もあったそうです。
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