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農業革命3.0は成功するか

世界初クモの糸で作る服登場、農業と産業に大きなインパクト

2016年04月06日 09時00分更新

タンパク質を素材として使うと、産業が変わる

 Spiberの設立は2007年のこと。冨田教授の元で学び、慶應義塾大学を卒業した関山 和秀さんが起業した。

 2013年には人工クモの糸繊維の量産化に成功し、2015年10月にはTHE NORTH FACEで知られるゴールドウインと業務提携、THE NORTH FACEブランドのプロトタイプジャケット「MOON PARKA」を発表する。

 MOON PARKAは世界で初めて人工タンパク質素材が使われた衣服であり、実際のアパレル工業の生産ラインに乗って作られた。世界で初、というのは大きなインパクトだが、もっと大きいのは石油化学由来の繊維に変わる素材の可能性が見えたことだ。

展示されていたMOON PARKA

 カンファレンスの場で関山さんはなぜクモの糸を繊維として使おうとしているのか話した。

 「1900年から繊維の消費量は徐々に増え続けている。1960年代になると石油化学由来の繊維が増え、その後たった20年でそれまでの倍になった、これが2050年になるとどうなるのか。私たちは限られたリソースをみんなでシェアしなければならない。なにをすることが問題解決になるのか、研究開発を進めている」

Spiberの取り組みについて話す関山さん

繊維消費量の増加傾向は顕著だ

 そこで目を付けたのがタンパク質(クモの糸)なのだという。タンパク質は動物において、水の次に挙がる、主成分ともいえる存在。動物由来の成分を素材として使いこなすことができれば、環境に寄与できるはず。枯渇資源に頼ることもなくなる。

 クモの糸というのは機能性にも優れていると話す。

 「クモの糸は地球上で最もタフなタンパク質。防弾チョッキに使われる繊維、カーボンファイバー、スチールと比重あたりのタフネスを比べたが圧倒的に強い」

素材として見たときのクモの糸の強さ

 環境に優れ、強靭。多くのメリットを持つタンパク質だが素材として使われなかったのはコストの問題があった。

 「調べたところ、繊維は1kg20~30ドルにならないと普及しないことがわかった。もっというとkgあたり10ドルを下回らないといけない。対して既存技術ではタンパク質製造においてkgあたり200~300ドルを下回るのは難しいとされている。普及には100ドルを切らないといけない。私たちはこれを100ドルの壁と呼び、研究開発によってこの壁を突破できた。普及できるベースに入ってきている」

 低コストの実現が見えてきたから、MOON PARKAを発表することができたのだろう。関山さんは「2016年中に市場に出したい」と語る。

最初はアパレルからだが、車の製造開発も進めているという

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