週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Xアイコン
  • RSSフィード

「バイク便」的なロケットで狙う宇宙への輸送サービス

ホリエモンの作ったロケットベンチャー インターステラテクノロジズの勝算とは

2016年03月11日 07時00分更新

 この夏に日本の民間会社が北海道の大地でロケットを打ち上げる。

画像提供:IST

 そもそもの始まりは、ロケットを愛する人たちが有志で手作りするMaker的な活動だった。

 有志のロケット作りは「なつのロケット団」と呼ばれるメンバーで、スタッフとして漫画家のあさりよしとお氏やSF作家の笹本祐一氏、ジャーナリストの松浦晋也氏などが名を連ねる。かの堀江貴文氏がスポンサーになり「なつのロケット団」を取り込んで2003年にSNS株式会社という会社を設立、エンジニアたちだけを集めてインターステラテクノロジズという子会社が2013年に設立された。

 「ホリエモンの作ったロケットの会社」といえば話が早い。

 会社設立から3年経った現在、エンジニアの数は総勢10名ほどになった。その中で着実にロケット打ち上げ実験を行い、ロケットエンジンの燃焼実験の回数も1ヵ月間に何度も行うほどにスピードアップしている。趣味的な活動からスタートしているものの、現在もロケットに対する熱い思いは変わらない。

 「昔も今も変わらずDIY感たっぷり」だと笑うのは、その民間ロケット開発会社インターステラテクノロジズIST(以下、IST)の代表取締役社長、稲川貴大氏。

インターステラテクノロジズの稲川貴大代表取締役社長

 3月1日には、SNSがISTを吸収合併し新たなISTになったと発表があったばかり(旧SNS社のメディア事業などは別会社のSNS media & consultingに移管となっている)。現在、北海道大樹町に本拠を構える同社は、最初の観測ロケット打ち上げに向けて、準備が整いつつある。

 今回は稲川氏にロケット開発とそのビジネスについて話をうかがった。

5秒→15秒→50秒→
宇宙空間の高度100kmに向けて目標達成中

 ISTが今夏に打ち上げるのは、推力1t級・全備重量700kgの超小型の観測ロケット。現在、そのエンジンの実験を繰り返し行っている。

 宇宙空間とは高度100km以上のことを指し、そこに達するには約1分間エンジンが燃焼し続ける必要がある。2016年1月には5秒と15秒の燃焼実験をそれぞれ行い、当取材翌週の3月4日には50秒間の燃焼実験に成功した。

 3月末には定格の時間以上となる100秒間の燃焼実験を行い、いよいよ今年の夏には自社開発したエンジンを積んで100kmを超えた宇宙空間への弾道飛行を行う「観測ロケット」打ち上げを予定している。さらにその先には、高度100km以上の軌道に投入する超小型人工衛星を積んだロケットも計画されている。

画像提供:IST

 ISTが開発予定の軌道投入用ロケットは、全備重量約35tの予定だ。一方でJAXA(宇宙航空研究開発機構)の保有する「H-IIAロケット」は全備重量で約290t、「イプシロンロケット」は約91tというサイズの違いがある。

 この差を稲川氏は「運搬量で比べるとH-IIAロケットとウチの軌道投入ロケットは、4tトラックとバイク便のようなもの」だとたとえる。

 大型ロケットは、運搬量が大きいため荷物1つあたりの運搬コストは安いが便数が少なく、荷物が貯まるまで輸送ができない。それに対してISTのロケットは、運搬量も少なくコストは多少値上がるが、大型ロケットに比べればバイク便のような気軽さで打ち上げができる。

 ISTでは、この「バイク便のような」ロケットを使って宇宙への輸送サービスを狙っている。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事