「日本の宇宙ベンチャーの挑戦」
国内で初めて民間による宇宙ビジネスを紹介するカンファレンス“SPACETIDE 2015(スペースタイド2015)”が、TOKYO DESIGN WEEK 2015内で2015年10月26日に開催された。日本、世界で活躍する宇宙ベンチャーの起業家、投資家などが一堂に会した。
今まで国家主導プロジェクトが中心だった宇宙ビジネスだが、世界ではアメリカを中心にグーグルやテスラなどの異業種の大企業が進出し、ベンチャー企業の参入も相次いでいる。日本でも小型衛星や小型ロケット開発の分野へ民間企業の進出があり、小型衛星ベンチャーのアクセルスペースが約18億円の資本を調達をするなど新しい潮流が生まれてきている。
まさに盛り上がりを見せつつある民間の宇宙ビジネス、国内のベンチャー企業3社が登壇しサービスを紹介、起業家としてのビジョンを語り合った。
高度100kmへ再利用可能な宇宙飛行機
完全再使用型サブオービタル宇宙飛行機を開発しているPDエアロスペースの緒川修治代表取締役が登壇。サブオービタルとは、地球から高度100kmまで上昇して、周回軌道に乗らずに戻ってくる宇宙飛行のこと。国際宇宙ステーションが周回する軌道が高度300km、そこまで到達しない気軽な宇宙旅行が可能となる。その間も数秒間の無重量状態がつくれて、さまざまな実験への応用が期待できるのと、地上2点間の高速輸送が可能になる。また再利用可能なことは低価格化にもつながっている。宇宙ビジネスへ宇宙以外の分野の人が入ってくる状況にするには、宇宙飛行を100万円を切る価格がトリガーにしないと、と語る。
通常、宇宙への飛行にはジェット燃料とロケット燃料が必要で、別々の機材が必要となってしまう。切り離して分離しているシーンはよく見かける光景だが、PDエアロスペースはこれをひとつの機材にして燃焼モードを切り替える実験をしている。筐体の再利用を可能にし、高速な2点間輸送を低価格のインフラで提供したいとしている。
時代に合った、低コストな打ち上げロケット
続いてインターステラテクノロジズの稲川貴大代表取締役が登場。インターステラテクノロジズは、堀江貴文氏が資金を投じるいわゆる“ホリエモン ロケット”の会社だ。前述のアクセルスペースのように小型衛星を開発、打ち上げるベンチャーは世界的に出てきているが、数億円でつくった衛星を数百億円のロケットで打ち上げているのが現状だという。その課題解決のために小型衛星のためのシンプルな構造の低コストロケットを開発している。
稲川氏によると、ロケットエンジンは1980年代を最後に高性能化は止まり、現在はコスト低下、部品の小型化にテクノロジーの課題はシフト。小型化により、小さなロケットの開発が可能になってきた。開発メインの会社なのでサイクルが早く、トライアンドエラーが行なえるひとサイクルが1ヵ月でまわるのが、ベンチャーとしての強みと語る。ゆくゆくは火星よりも先にある小惑星帯に到達し、資源探索を行ないたいという壮大なビジョンをもつ。
拡大する宇宙ビジネス、デブリが課題に
このように宇宙ビジネスが民間でも盛んになる中、より拡大する宇宙開発をチャンスと捉えているのが、アストロスケールの山崎泰教マーケティングマネージャー及び事業開発担当だ。自分たちを“Spacesweepers(スペーススイーパーズ)”、宇宙の掃除人と呼び、スペースデブリの除去を行ない、宇宙産業の発展に貢献しようとしている。
宇宙開発が始まり60年間。大きなゴミは軌道上に2万個以上あり、国際宇宙ステーションは今年ほぼ毎月のように避けるための軌道修正を行なっている状況だという。現在取り組んでいるミッションは、微小デブリのデータを集めてマップをつくること。また除去にはロケットを飛ばし、デブリの近くにきたら子機がくっついて、大気圏に落として燃やしてしまう構想を実現しようとしている。
三者三様のビジネスを語ってくれた宇宙ビジネス。人材的、資金的にはまだまだ苦しい面があるものの、流行はきていて市場環境は盛り上げりをみせているという。この日、司会をつとめた三井物産で超小型宇宙衛星を担当する藤原謙氏は、「宇宙ビジネスのベンチャーが宇宙開発を推進するドライバーになると感じている」と、ベンチャーの勃興に期待を抱いていた。
■関連サイト
SPACETIDE 2015
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります