シャープは2月4日、2015年度第3四半期決算を発表した。売上高は前年同期比13%減の6633億円。営業利益は同0.6%減のマイナス38億円、経常利益は同2.1%減のマイナス141億円。産業革新機構と台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の2社に絞って協議を進める協業交渉に関しては、1ヵ月以内の契約締結を目指す構えだ。
第1~第3四半期の売上高は1兆9430億円で、第4四半期予想は7569億円。なお、通期予想は2兆7000億円で据え置き、経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益の業績予想に関しては、現在推進および検討中の構造改革の成果で合理的な算定が可能となった時点で公表する予定。
セグメント別の利益に関しては、 コンシューマーエレクトロニクス部門の売上高は前年同期比24.8%減の2042億円。営業利益は14億円の減益だが営業利益の通期予想は40億上方修正している。エネルギーソリューション部門の売上高は前年同期比35.6%減の345億円。営業利益は34億円の減益で通期予想は売上高、営業利益とも100億下方修正した。
ビジネスソリューション部門の売上高は前年同期比3.3%増の888億円。営業利益は5億円の増益で通期予想は売上高を100億上方修正、営業利益は20億上方修正。電子デバイス部門の売上高は前年同期比10.4%減の1464億円。営業利益は6億円の減益で通期予想に変更はなし。
第2四半期決算発表で「業績の足を引っ張っている」(高橋興三社長)としていたディスプレイデバイス部門の売上高は、前年同期比5%減の2262億円。営業利益は222億円の減益で通期予想は売上高、営業利益とも変更はない。
決算発表後の質疑応答では、官民ファンドの産業革新機構と台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業との交渉関係の質問が集中した。高橋社長は「現在、先方の提案に関して検討や分析にかかる社内のリソースを多く割いているのは鴻海」と回答。ただし鴻海が協議で産業革新機構に先行といったウワサや、優先交渉権の決議などに関しては重ねて否定、「公平性、透明性をもって同時に進めている」(同)としている。
協業に関しては、シャープから2社にリクエストした条件として、高橋社長は「会社が分野ごとに分割されないこと、従業員雇用の最大化、技術流出への対策」を挙げ、交渉中の2社ともこの条件で理解を得られたと回答した。
高橋社長はシャープのリクエストどおり、2社ともディスプレイデバイスなど特定部門の切り離しはせず、会社としてのシャープの一体性を維持して協業という方向性で協議が進んでいると語る。なお、シャープは2社のいずれかと1ヵ月以内の契約締結を目指す構えだが、その間に提示条件の下方修正などがあった場合に関しては「極端に条件が変わったら、当然ながら交渉はブレーク(決裂)する」。ディスプレイデバイス分野に関しては、決算発表日にタブレットなど中小液晶パネルの生産能力拡大のため、約112億円の設備投資を行なう旨も発表している。
シャープが提示条件にある技術流出対策に関しては「すでに3年共同運営しているSDP(堺ディスプレイプロダクト)で技術流出はない。これは両社の信頼関係があってのこと」(同)。
高橋社長は「シャープには巨額のコストを投入するディスプレイ分野と、それ以外の分野という大きな2つの塊がある」として、「交渉中の両社には液晶と液晶以外で運営が違うということを理解して頂き、“液晶も含めてシャープ一体で”というのが条件」と回答。「各分野を切り売りしてより高い投資額を、という話だったら交渉は受けられなかったと思う」と報道陣に回答している。
厳しい経営業況により2社との協業を模索することになった経緯に関して「我々はまず構造改革を全力でやり切ることが経営責任だと考えている。両社いずれかと契約したらその時点で身を引くということは考えていない」と退任を否定した。
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