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「売上を1.6倍にした人工知能」リアル店舗をウェブ化するABEJA

2016年01月29日 07時00分更新

インストアにおさまらない事業展開も想定

東急アクセラレートプログラム

 インストアの事業展開は今後、店舗から街にも広がって、センサー系のデータも適用できる未来も見えている。

 2015年11月、ABEJAは東急電鉄が進めるアクセラレータープログラムで最優秀賞にあたる東急賞にも選ばれた。「ABEJA Platform」を街に活用し、人工知能で街を最適化するプラットホームを提供し、スマートシティーの実現を目指す試みも一方で始まる予定だ。「あとはIoTの軸、コモディティー化されたデバイスからネットにどうデータを送るかという課題もある。超効率的なハードウェアに応用できれば、圧倒的に通信料を減らすこともできる。テクノロジーのイノベーションが起きて、ほかが真似できないところで勝負したい」

 渋谷の街を舞台にしたスマートシティー構想として、培ったテクノロジーを東急とともに動かす予定だ。たとえば店舗への導線として、街での実際の人の動きやデジタルサイネージも含めて連動させて従来以上の広告価値を持たせることや、来店状況に合わせたリアルタイムでのマッチング広告なども想定される。最終的にはデジタルサイネージを人工知能で一元管理するようなビジョンもあるという。

 このようなABEJAが取り組む事業の背景には、最先端テクノロジーシーズの発掘から事業性検証、事業立ち上げに関する全てを行うというコンセプトある。現在取り組んでいるインストアアナリティクス事業も、海外で注目されていたディープラーニングを市場に適用させるビジネスを模索した結果生まれたものだ。

 最先端テクノロジーの研究開発を早いスピードでビジネスにできる背景には、表に出てこない多くのイノベーションのタネを開花させる国内・海外大学、研究機関との連携がある。

 「リサーチに関しては各大学と連携している。アカデミアの皆さんの知見をお借りしながら、最先端研究をCTO筆頭にプロダクト・サービスに落とし込んでいる。各大学の研究室とは、理念に共感してもらっているケースが多い。おかげさまでデータの精度はリアルタイムで向上しており、よりよいアルゴリズムへのチューニングなど、順次サービスはアップデートしてきている」

 現状の共通課題は、精度アップ、学習の効率化をどのようにするかだ。GPUの並列化処理の研究やカメラ間を連携するテクノロジー、基礎的なDB設計の見直しなど、かなり多岐にわたっている。またサービスにおいて何ができるかについても、大学側との共同でのブレストを通じてアイデアを生み出し続けている。

 テクノロジーの次の種として、直近では東京大学・会津大学名誉教授の國井利泰氏と進めているディープラーニングの次の技術である『トポロジカル・データ・アナリシス(TDA)』という理論がある。解析でボトルネックになっているのは巨大データの可視化処理分野で、GPUのパワーが圧倒的に足らず、並列化処理の限界がきているという。このデータ処理を1000分の1にできる箇所が複数あり、それを解決できるのがTDAだと岡田代表は見ている。

 「TDAを使うと、ほぼすべてのデータが超高速に処理できかつわかりやすく表現できる。既存のデータベースに対して1000倍×1000倍での100万倍くらい早く分析ができる。圧倒的なコスト削減ができ、他社が追従できない価値が生み出せる」

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