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勉強へのやる気に満ちた泥臭いEdtech・センセイプレイスが気になる理由

2016年01月15日 07時00分更新

成績が勝手に上がる魔法のような場所ではない

学びログ投稿フォーム

 センセイプレイスのサービス自体は、始まったばかりで、「ようやくプロダクトができたところ。これから幅を広げていく」(庄司代表)段階だ。

 2015年12月時点での生徒数は43名で、先生は14名。中には合格者も出てきているが、本当にうれしいのは「勉強を続けたい」や「次の目標ができた」という声だという。

 1000名をかかえたオンライン指導塾の運営経験があるとはいえ、生徒と先生のマッチングにはまだまだ課題も多い。「そもそもプラットホームとしてやろうとしていることを理解しない生徒もいる、彼らは(成績をよくするだけの)魔法を探している。正直なところ、学びログのような地味なプロセスが回らない子や、保護者も含めてセンセイプレイスを魔法の場所だと思い込んでしまうとなかなか難しい」

 たとえば、50問中のうち2問しか正解できていなかった生徒が50問中30問正解できるまで“成長”しても、あせりから本人はダメだと思っているケースもあるという。そのような変化を気づかせることも狙いの1つだ。「本人も保護者も”ほめるポイント”を客観視できておらず、お互い息苦しくなってしまうケースを数多く見てきた。そのようなときこそ、勉強で努力しているプロセスに喜びを実感してもらいたい」

 学びログや週間レポートを通じて”勉強のプロセスを可視化”することで、センセイプレイスではテスト結果だけではない学びそのものへの判断ができるようになっている。ブラックボックスだった学ぶ過程そのものの評価を明示することがポイントだ。実際、着目点を変えた指導を行うことで、変化を起こしている手応えが運営側にはあるようだ。

 「プロセスが明示されることで、『テストどうだったの?』という結果の確認ではなく、『この工夫はいいね!』とほめたり、『その気づきは次に活かせるね!』といった会話を始めることができる。計画の立て方、勉強の仕方、心構え、改善点とほめるポイントはいくらでもある。センセイプレイスは、テスト結果だけで測る教育から、プロセスに着目する教育への変化を起こしたいと思っている」(庄司代表)

“理想と現実のギャップ”を埋めるEdTechとなるのか

ベータ版のインターフェース。「勉強を面白くしよう」とかかげられたサイトのUI・UXはかなり粗削りだった。

 取材前の勝手なイメージでは、「スカイプのプラットホームに乗っかった、クラウドソーシングで学生講師をまとめたようなもの」と思っていたが、方向性は真逆だった。センセイプレイスのログに書き込まれた生徒、先生それぞれの長文のやり取りは、半クローズドなコミュニティならではの文章の熱量で、そのやり取りはいい意味で泥臭い。

 KPI(事業での指標)が何かを尋ねると、生徒の成績ではなく、学びログの数、文字数、そして継続率が重要な要素ということで、塾というより完全にコミュニティサービスそのものとなっている。現在の100人にも満たない状況が、将来的にどう変わるのか興味深い。

 教育事業サービスとして見ると、そもそも塾や教材などを“魔法”と扱う保護者・学生が世の中の大方を占めているはずだ(本人はそうだと思っていなくても)。生徒と先生がハイタッチできるわけでもなければ、一度も直接会わずに合格発表を迎えるようなこのサービス。今後規模を拡大させてスケールするにあたって、オンライン指導での熱がどこまで保たれるのか、またサービス自体を魔法として頼るような層をどのようにコミュニティに巻き込んでいくのか。

 つい”結果”や”魔法”を探してしまう教育関連でありがちな“理想と現実のギャップ”こそ、本当にEdTechで解決すべきポイントだ。コミュニケーションの密度を維持しながら、テクノロジーをさらに活用してセンセイプレイスを理解しない層も巻き込むようなサービスの成長ははたしてできるのか。同社の取り組みから第2のビリギャルが生まれるという結果があったとしたら、そこから先のストーリーこそが本当に気になるところだ。

●センセイプレイス株式会社
教育領域に特化した独立系ベンチャーキャピタルの『Viling Venture Partners』でのアクセラレータープログラムを経て2015年4月より創業と同時にベータ版サービスを開始。
2015年6月にスローガン、スローガンコアント、Viling Ventures Partnersからシード段階での資金調達を行っている。今後、2016年春から夏にかけて新たに調達を予定。
2016年1月現在の社員数は5名。

■関連サイト
センセイプレイス

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