クラウドファンディングでの支援総額が2000万円を突破した新しい“トランシーバー“がある。主にスポーツを目的に作られてはいるが、支持を集める背景にはそれ以上の可能性が見える。スタートアップの強みを生かし、大企業でも難しい部分を解決させたポイントは、「ほしいものをつくる」という1点。体験するのが楽しみな、新しいハードウェアの開発秘話をお届けする。
スタートアップ企業・チケイが手がけるのは、ウェアラブルトランシーバー”BONX”(ボンクス)。
野外での激しい運動中でも複数の仲間とスムーズにやり取りするのを目的に、ゼロから設計されたコミュニケーションツール。専用アプリでスマホとつながるBluetoothイヤフォンが本体となっている。スマホと連携するトランシーバーといっても、小型化しただけだったり、これまであったようなBluetoothヘッドセットとはまったく異なっている。
自動音声認識から「会話をしているときだけ通話」する機能があり、スマートフォンとBluetoothで同期すれば、ボタンをいちいち押す必要がない。専用アプリを介したシームレスな通話は、10人まで同時に可能だ。
会話をしていないときには通信が節約され、雑音もカットされる。ソフトウェアとハードウェア両面の処理によって、高速で移動する際の風切音も低減している。ハンズフリーでの開放型イヤフォンは、水や衝撃に強く設計されている。
トランシーバーのように本体が直接電波のやり取りをするわけではないため、送信・受信といった区別はない。あくまでアプリから接続したクラウド上で通話を行っているため、携帯電話キャリアの3G/4Gサービスエリア範囲内であれば距離などは関係なく利用できる。1分間2人で会話すると平均30~50キロバイト程度のデータ通信量が必要とのことだ。
音声通信の部分はクラシックBluetoothで、アプリとスマートフォンをつなぐやり取りにはBLE(Bluetooth Low Energy)を使用するデュアルモード。スマホ本体にも左右されるが、高密度バッテリーの使用により、連続通話は9時間まで可能だという。
アプリを起動すると、BLEを使って近くにあるBONXとつながり、グループ通話の準備ができる。発話を音声認識で自動検知して通話を行う「ハンズフリーモード」のほか、実際のトランシーバーと同様に、ボタンによって発信・通話を行う「ノーマルモード」も用意されている。
用途の面では、海でも使えるよう防水加工されており、シーカヤックなどは問題ない。ただし塩への対策はまだ難しく、サーフィンについては波の力は強いので外れてしまうこともあるようだ。
音声面では、デュアルマイクを搭載し、高速移動時の風の音も物理的に減衰させることで、クリアな音声を実現している。しかし、あえて完全に環境音をシャットアウトしてはいない。安全面を考慮して、外部の情報がわかるように、開放型のイヤピースを採用している。
BONXを開発したのは、創業1年足らずのスタートアップ企業・チケイ。気になる開発面についても同社の宮坂貴大代表取締役CEOに聞いてみた。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります