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Windows情報局ななふぉ出張所

デルの全部入りWin8.1タブ“Venue Pro”徹底レポート

2013年11月20日 17時00分更新

 デルが11月14日に発表したWindows8.1タブレット『Venue 8 Pro』と『Venue 11 Pro』が大いに注目を集めています。

 特にVenue 8 Proは、8インチクラスのWindows8.1タブレットとして価格もお手頃。最新のAtomプロセッサー“Bay Trail”の性能向上により、“艦これ”タブレットとしても本命機種のひとつとなっています。

 そこで今回は両モデルの詳細について、製品発表会をもとにレポートしたいと思います。

■「Windowsタブレットでできることは全部できる」

 発表会では、デルのクライアント製品&ソリューションマーケティング本部部長の秋島健一氏がVenue Proシリーズを披露。両モデルに共通の“キーボード”や“スタイラスペン”、“SIMフリーの3G通信”などのオプションを挙げ、「Windowsタブレットでできることは全部できる」と製品コンセプトを説明しました。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Dell Venue 8 Proを披露するデルの秋島健一氏。

 8インチのVenue 8 Proについて、米国では32GBと64GBの2種類が販売されていますが、日本では上位モデルとなる64GB版のみ。その代わり日本では本体カラーとしてレッドとブラックの2色を展開するとのこと。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Venue 8 Proのレッド色。タブレットとしては珍しいカラーだ。
デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑無難なブラック色もラインアップする。

 日本のユーザーにとって、SIMフリーの3G通信も珍しいオプションです。これまで3G/LTE通信対応のWindowsタブレットは、法人向けにリリースされてきたものの、個人ユーザーが手に入れることは困難でした。

 今回のVenue Proシリーズは8インチ、11インチの両方が3G通信に対応しています。残念ながらLTEへの対応は今後の課題とのことですが、MVNOによるSIMカードの普及も含め、国内におけるSIMフリー市場の拡大が期待されるところです。

■Windowsボタンの位置は端末上部に

 Venue 8 Proの特徴のひとつは、画面の周囲にWindowsボタンがないという点です。これまでのWindowsタブレットでは、ディスプレー周囲のベゼル内にWindowsロゴのボタンが配置されていました。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Venue 8 Pro。正面から見るとWindowsボタンが見当たらない。

 その代わり、Venue 8 Proでは端末上部、縦位置に持ったときちょうど右上に位置する場所にWindowsボタンが配置されています。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Windowsボタンは端末上面に。

 一見すると電源ボタンと錯覚しそうになる配置ですが、これはマイクロソフトと共同でデザインを進めたもので、特にレギュレーション的な問題もないとのこと。たしかにWindowsタブレットを縦位置で使う上では、この配置のほうが便利な場面もありそうです。

■Office搭載モデルが安い

 小型Windowsタブレットの見どころのひとつは、価格です。すでにAndroidの小型タブレットでは、2万円台も珍しくありません。

 この点についてVenue 8 Proは、Officeなしモデルは3万9980円と、4万円を切っています。さらに注目なのは、Office搭載モデルが4万1980円であること。通常のノートPCであれば2万円程度の差額となる『Office Home and Business 2013』を、わずか2000円の差額でプリインストールすることができます。

 日本と同じ64GB版のモデルは、米国で約400ドルで販売されています。しかし米国版は“Home and Student”版であることを考えると、日本版のお買い得さがわかります。

 デルはこれをマイクロソフトとの協力の結果と説明しています。また、「Office搭載モデルだからといって、デルの利益率が高いわけではない」とのこと。日本マイクロソフトはOEMメーカーの小型タブレット向けに低価格でOfficeをライセンスする施策を展開していると見られていますが、デルはこれを最大限に活用したものと考えられます。

■ストレージはeMMCとSSDの違いに注意

 “艦これ”が高速化しているように、最新のAtomプロセッサー“Bay Trail”はCPUとGPUの性能が大きく向上しています。しかしVenue 8 Proと、Venue 11 Pro(Atomモデル)のストレージはeMMC実装のフラッシュメモリーで、Venue 11 Pro(Coreモデル)が搭載するSSDとは大きく性能が異なります。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Venue 11 ProのCoreプロセッサーモデルのSSD。展示機はM.2規格のSanDisk SD6SP1M-128Gを搭載していた。

 Bay Trail世代のタブレットでも、eMMCのストレージ自体は以前と大きく変わっていません。大きなファイルのコピーなど、ストレージ性能が物を言う場面での体感速度に大きな変化はなさそうです。

■Venue 11 ProのAtomモデルとCoreモデルは構造が異なる

 Venue 11 Proは、背面カバーを取り外すことでバッテリーを交換することができます。特に法人ユーザーによる一括導入時には計画的な端末運用が求められますが、このときバッテリーの経年劣化による寿命が問題となるケースが多いとのこと。以前にデルは『Latitude 10』においてもバッテリー交換可能な構造を採用しています。

 タブレット背面の構造は、AtomモデルとCoreモデルで異なるものとなっています。バッテリーの大きさやコネクターにも互換性はなく、別のタブレットかと思うほどです。

 これはBay TrailとHaswellのTDPの差によるものと思われます。Coreモデルでは端末の上面にエアフロー用の通気口が設けられており、冷却性能を高めています。これに対してAtomモデルに通気口はありません。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Venue 11 ProのCoreプロセッサー搭載モデルは、エアフロー用の通気口がある。
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↑Venue 11 ProのCoreプロセッサーモデル。ワイヤレスWANカード(EM8805)、SSD用スロット、冷却用の通気口などが確認できる。
デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑Venue 11 ProのAtomプロセッサーモデル。こちらはシンプルな構造。
デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑バッテリーの容量、サイズ、コネクターの大きさも異なる。

■ところでVenue Proといえば

 Windows Phoneファンなら、Venue Proという名前からかつて存在したWindows Phoneを連想するはず。『Dell Venue Pro』は、Windows Phone 7端末として最初に発表された製品のひとつで、Windows Phone 7以降では唯一となる縦型スライド式の物理キーボードを搭載していました。

デルの全部入りWindows 8.1タブレット“Venue Pro”シリーズの詳細
↑かつてデルが販売していたWindows Phone 7端末、『Dell Venue pro』。

 なお、米国のデルは10月29日をもって株式を非公開化し、NASDAQでの株取引を終了したことが話題となりました。この株式の非公開化によって具体的に何が変わるのか、秋島氏は「短期的な視点での事業展開を行なう必要がなくなった」と説明しています。目先の株価の変化にとらわれることなく、長期的な視点で価値を提供していくことが可能になったというわけです。

 デルはスマートフォン事業から撤退しており、今後のWindows Phoneの展開について特に計画はないとのことですが、なんとか復活に期待したいところです。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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